表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
シェイプシフトデバイス
361/365

5.2.19


 翌日。

 ストームカレンダー、290日目。


 昼過ぎにアッシュバレルに到着した。

 予定通りだ。


 リュウタは、街には近寄らず、近くの雑木林に消えた。

 餌も水も、自分でどうにかするだろう。



 アッシュバレルに入り、まずは司令部へ。

 エルハムの身柄は、ウィリアムに預けた。

 衰弱しているが、まだ生きている。

 この先、エルハムにどんな試練が待っているのか。

 それはもう、どうでもいいし、興味もない。


 これで、任務は完全に終わった。


 セルヒオら、アッシュバレルの面々とも、そこで解散。

 あとで、呑もうと誘われたが、オレは断わった。

 ミラーと、ソフィアと、ミケルの3人が、あとで顔を出すと言っている。


「オレ達は、これからどうするんだ、ストーム」

「ん……未定」


 腕組みをするソフィアが答えた。

「アーネストから、報酬とか貰えるんじゃない? 結構いい仕事したわよね」


「なら俺は酒だ。アーネスト秘蔵のスコッチを要求しよう」

「僕は、別になにもいらないよ。暇だったし」


 ミラーと違って、ミケルは無欲だった。

 そのふたりに、ストームが尋ねた。


「ミラーとミケルはどうするの? 隊に戻るの?」

「なぁんにも言われてねぇな。戻るとしたら、軍の本部か」

「僕は自由だよ。でも今夜は、ログアウトしたいな」


「そうだね。今日は宿でログアウトして、それから考えようか」

「みきも、お風呂はいりたい」


 ふと、気になって、ログインデバイスを出した。

『 ELAPSED 2:26 』

 なんだかんだで、10日くらい過ごしたようだ。


「ならオレは、穀物を貰いにメモリアへ行く。夜には戻る」

「んん。じゃあ、わたし達は宿で休もう。疲れたよ」

「みきも疲れたし、寝不足」

「まずは、ご飯ね。お昼食べましょう」


 未希が言った。

「ルルは、どうなるの?」


 ヘラジカのルル。

 呼ばれたのが分かっているのか、耳を動かしながら、未希に顔を向けた。

 未希が勝手に名付けてしまったが、そもそもこのヘラジカは、オレ達が自由に使っていい家畜ではない。

 アーネストから一時的に借りているだけだ。


「とりあえず、厩舎に預けておきましょ」

「うん」


 厩舎か。どこにあるんだ、そんなもの。

 なにげなく、基地を見渡す。

 小汚いバラックのところで視線が止まる。

 リュウジのことを、すっかり忘れていた。


 あのバラックは、リュウジが寝起きしていたボロ小屋だ。


 そうか。

 あのバラックにも、アッシュバレルにも。

 この世界のどこにも、リュウジはいない。


 リュウジだけじゃない。

 もともと少ない知り合いが、少しずつ減っていく。


 まぁべつに、死んだわけじゃないんだよな。

 退場しただけだ。

 現実世界のどこかの場所で。どこかの時代で。

 残りの人生を続けているだろう。

 その残りが数秒なのか、数十年なのか。

 オレには、どうでもいいことだ。

 

 忘れよう。

 どうせ、ログアウトで、記憶も薄れる。


 そもそも、あいつはヤクザ。

 しかも、おそらく、死刑囚。


 冗談じゃない。

 現実世界で関わるなんて、バカげてる。



 すっぱり忘れよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ