5.2.01 - 光の世界へ
ストームカレンダー、280日目。
オレを含めた3人と1匹で、噴水広場へと向かう。
夜明け前に、旅支度を済ませた、未希とストーム。
傍らには、すっかり未希の番犬となった灰色オオカミのリュウタ。
名目は、エレメント・コアへ向かう荷駄隊の護衛参加。
噴水広場に辿り着くと、見知った顔が多くいた。
微粒子を操るソフィア。
スコットランド人のミラーと、ハートリー。
他にも十数人のプレイヤー。
そして、この荷駄隊の隊長は、アーネストだった。
副官のウェストンもいる。
「久しぶりだな。こんな人数で旅をするのは」
「んん。最初のとき以来」
「まゆさん、論文、書かなくていいの?」
「論文を書くためにも、ログインは必要。調べたいこともたくさんある」
「ふーん」
オレは知らなかったのだが。
ストームが留学しようとしている大学は、世界でも最高峰の大学らしい。
あれから、留学の手続きも、とんとん拍子に話が進み、ノトウェンを推薦人とした、ボストン留学への道が開けているらしい。
ストームの通う、大和女子の態度も、まさに手のひら返しだった。
高校生活にも、さまざまな支援が学校から得られることになったらしい。
オレにはピンと来ない話だけどな。
推薦人自体が、ビッグカンパニーの超大物。
世界最高峰の大学への進学。
選考は論文提出と基礎学力。
基礎学力は問題ないらしく、入学することは、ほぼ確実だと言う。
日本の高校から見ても「我が校の生徒がオリンピックに出場」するくらいの栄誉なのかもしれない。
たぶんストームは、学校の聖女に昇格したのだ。
保健室通いのお荷物から、ちやほやされるスターになった。
もちろん、ストームの両親も喜んだらしい。
学費は、毎年1千万円以上かかるらしいが、あいつの家は金持ちだ。
その家族の支援が得られるのだから、経済的な問題もない。
とはいえ。
ストーム自身は、なにも変わっていなかった。
本人いわく、あるのは知的好奇心だけ。
なにかにかこつけて、今日もオレ達とニフィル・ロードにログインしている。
「ハイ。ソウジ。久しぶり」
ソフィアが声を掛けてきた。
「ああ。またよろしくな」
「あっちに、ミラーもいるわよ。またこのメンバーで旅行ね。楽しみね」
「旅行っておまえ。荷駄隊の護衛だろ。どこに楽しいがあるんだ」
「あいかわらずねぇ。私達と旅ができて嬉しいって言いなさいよ」
「……馬の世話は、もういいのかよ」
「もうすぐ1歳だからね。調教は私の仕事じゃないわ」
「いつ乗れるようになるんだっけ? その馬は」
「2歳になったら、騎乗の訓練が始まるけど、乗馬として扱えるようになるにはあと2年かかるわ」
「ずいぶん先だな」
「そうよねぇ。でも、そのかわりほら、あれ」
ソフィアが向けた指の先には、ヘラジカの群れ。
「体重が軽いヒトなら、あと半年くらいで乗れるようになるわよ。ソウジも練習してみる?」
「いや……ムリだろ。オレには」
今日も2頭のペアで、荷車1台。
荷車は全部で6台。
12頭のヘラジカが、出発を待っていた。
完全に陽が昇り、朝焼けの色が薄くなる頃。
副官のウェストンが出発の号令をかけた。
プレイヤーはオレ達を含めて、総勢26名ほど。
ヘラジカ12頭。
それと、オオカミが1匹。
アッシュバレルへの、2泊3日の旅が始まった。




