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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
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5.1.15 - たすけt


 ストームにメッセージを打った。

『どうした。どこにいる?』


 しばらく待ったが、返事はこない。


 未希にメッセージを打つ。

『ストームからメッセージきてないか?』

 返事がこない。

 ああ、そうか。授業中だ。

 来るわけがない。


 スマホが震えた。

 ストームから。


『かわ』


 かわ?

 どこの川だ。


 返事を打つ。

『学校サボったのか』


 返事がきた。

『うん。行こうとしたけど、失敗した』

『おまえが失敗するなんて、珍しいな。なにかあったのか?』


 しばらく待ったが、返事はこない。

 ストームからの、意味不明なメッセージ。

 嫌な予感が、両肩から胸の内側に流れ込んでいく。



 かわ。川。

 学校に行くのを失敗して、川にいる?


 あいつの学校って、どこだ。

 女子高?

 このあたりで、お嬢様が通う女子高。

 そんなのしらねーよ。


 手掛かりは……ストームの制服。

 分からない。

 なら、考えろ。

 あいつの制服で、あいつの通う学校を知る方法。

 それを考えろ。


 スマホの電話帳を開く。

 ギャングの代理リーダー。ヨシヒロに電話をかける。

 すぐにつながった。


「どうも! ヨシヒロです。総司さんですか! お久しぶりです」

「わるい。聞きたいことがある」

「はい! なんでしょう」

「おまえのとこに、リョウスケっているか。歳は分からないが高校生だ」

「はい。いますね。あいつがなにかしましたか?」

「連絡先教えてくれ。頼みたいことがある」

「頼み? 分かりました。少々お待ちを……」

「ヨシヒロ。悪いんだが、連絡先が分かったら、SNSで送ってくれ」

「了解です!」


 電話を切る。

 そのまま、駅前まで歩き、タクシー乗り場の近くで待つ。

 ヨシヒロからのメッセージを受信。

 電話番号。

 その数字に触れる。

 スピーカーから電話のコール音が鳴る。


 あれ、あいつも授業中か。

 まぁいいか。


 数回のコールで電話がつながる。

「んだよ、ダレだよ?」

 トーンを抑えた、ガキの声。


「リョウスケか?」

「はぁっ? 誰だよおまえ? 授業中だぞ?」

「わるいな。総司だ。どうしても聞きたいことがある」

「は……え、総司さん?」


「いいから、聞け。文化祭でオレの後ろにいた女子高生、覚えてるか」

「え、えーと……外国人美少女じゃないほうですか?」

「そうだ。ジップパーカーを着て、フードを被っていた女」

「はい。なんとなくですけど」

「あいつの着ていた制服の学校、どこだか分かるか?」

「え……あぁ、見たことありますね。って、すいません、あと5分イイっすか。いま授業中なんすよ」


「わるかった。分かったら折り返してくれ。借りひとつだ。頼めるか?」

「も、もちろんでス! 借りなんてそんな! 自分の名前覚えてくれるだけで、嬉しいっス!」


 電話の奥から、浮ついたオッサンの声がする。

 注意でも受けているのだろうか。

 もういいだろう。

 そこで、電話を切った。


 他にも手掛かりが無いか、考えを巡らせる。

 知ってそうなヤツ……


 いるな、もうひとり。

 ストームの制服を見たことがあり、名門校に詳しい存在。


 いちど、呼吸を整える。

 目を閉じて、頭を真っ白にした。

 スマホに視線を落とす。

 問題ない。どうってことない。


 電話帳は出さずに、番号を打ち込む。

 なにも考えず、そのままの勢いで、通話を押す。


 コール音は数回。

 電話がつながる。


「もしもし?」

「……総司だけど」


「総司? もーう連絡よこさないで、元気なの? ちゃんと食べてるの?」

「……」

「どうしたの突然? おカネがなくなった?」

「違うよ、前に……未希の友達の、まゆっていただろ」

「まゆちゃん? たまに遊びにくるわよ。どうかした?」

「あいつが通ってる高校って、どこだか分かるか?」


「まゆちゃんの学校? そうねぇ……聞いたわけじゃないけど、あの制服はね、大和女子じゃないかしら」

「そうか。ありがとう」

「え、ちょ……と、そう」


 電話を切った。

 ストームよりも先に、オレが壊れそうだ。


 間を置かず、すぐに着信。

 通話を押す。


「オレだ」

「あ、総司さん。どうも。リョウスケです」

「ああ、わかったか?」

「はい。女子に聞いたんですけど、大和女子付属高校じゃないかって」

「ありがとう。助かったよ」

「いえいえ、光栄です。またなにかあったらいつでも」

「ああ。またな」


 電話を切った。

 大和女子。

 仕事で近くまで行ったことがある。

 場所も分かる。

 最寄りの駅から学校までの途中に川もある。


 タクシーの列に並ぶ。

 待たされている間に、考えをまとめる。


 あいつは、ギフテッドで?

 オレは無害な他人?

 なにするか分からないという、ルシアの予言。

 そして「たすけt」というメッセージ。


 関連が分からないし、オレが行ったところでどうなるんだ。

 そもそも、見つけ出せるのか。

 まぁ、別にいいか。

 他にすることもない。時間はいくらでもある。


 オレの順番がきた。

 タクシーのドアはすでに開いている。

 後部座席に乗り込み、行き先を告げる。


 タクシーが走り出す。

 SNSアプリを開いたが、ストームからの返事は無い。


 代わりに未希からのメッセージ。

『まゆさんが、どうかしたの?』

 返事をしておく。

『いや、わるかった。なんでもない。間違えた』

 返事はこない。また授業中なのだろう。

 未希は、なにも知らないのか。


 スマホをポケットに戻す。

 ひと呼吸置いたところで、ふと我に返った。




 なんだ。

 オレ、なにしてんだ?





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