表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
284/401

4.8.10 - 春の大三角形


 ハンバーグが、ジュウジュウと鉄板皿の上で音をたてている。

 ストームはスプーンを裏返し、オムライスにケチャップを伸ばしている。



「これ、見て」


 ストームが、タブレットの画面を見せた。

 星座の図面。

 中央におとめ座。麦の穂を手に持った女性の絵。

 おとめ座の左横に牛飼い座。

 おとめ座の上に、しし座。


 ストームが順番に指で示していく。


「アルクトゥルス、スピカ、デネボラは、春の大三角形。

 おとめ座のダイヤモンド」


「それがどうした? デネボラなんてまだ出て来てないぞ」


「総司につけられた最初の3人の名前は、シェルタン、レグルス、ヴェータなんだよね?」


「そうだな。シェルタンは死んで、レグルスは行方不明」



「その3人は全員、しし座。

 死んじゃったシェルタンはね、王を支える功労者。

 目立たないけど忠節のために進んで犠牲になる予兆の星。


 行方不明のレグルスは、ガキ大将。

 復讐心が強くて、支配と独裁への固執を意味する星。


 最後にデネボラ。

 デネボラは、落ちぶれた貴族。不運を招く不名誉な星」



 なるほど。

 あいつら、全員、星の名前か。

 うん……?


「デネボラはどこだ? そんなやついなかったぞ」


「デネボラは、しし座ヴェータ。落ちぶれ貴族だから、名前隠してるんじゃない? 次に会ったときに、ヴェータさんに聞いてみたら?」


「……星座の理屈なら、ヴェータはアルクとスピカの同列ってことか」


「それは分からないけど、最初から思い出してみて。

 アルクトゥルスは、スピカへの道しるべ。

 スピカはおとめ座の1等星。

 春のダイヤモンドと呼ばれる、春の大三角形の星。

 その最後のピースが、しし座のヴェータ。名前を隠してるデネボラ。

 重要なカギになるのは、間違いないと思う。

 わたしならそこから攻略する」



 攻略ってお前……


「リノンとか、モルウェナって星座もあるのか?」

「無い……と思う」


 ストームが、オムライスを口に運びながら、タブレットで検索をする。


「ウェールズ……かな」

「ウェールズ? なんだそれは」

「イギリスに含まれてる国、っていうか地方っていうか、地名」

「それがどうした」


「アーサー王伝説の舞台でもあるんだけどね。共通点が多いのはここ」


 ストームがタブレットの画面を回す。

 英語なので、オレには読めない。

 ストームがオムライスをもぐもぐしながら、解説を続けた。


「リノンは、神話の女性。

 献身的な母親。

 強い思想を持つ支配者。

 それでいて、不当な告発に耐える象徴」



 不当かどうかは知らないが、告発にさらされているのは当たってる。

 強い思想の支配者というのも、的を得ているかもしれない。

 母親は……どうだろうか。



「モルウェナは、守護聖人の名前。

 古いウェールズ語で乙女、白い海。

 同じ名称の教区が、イギリスにもあるみたいだね。

 このステンドグラスに描かれてるみたいだよ」



 タブレットに写る、どこかの教会のステンドグラス。

 オレが知ってるモルウェナはまだ10歳だ。

 それらしき人物は見当たらない。

 青いローブを着た女性が、どことなくリノンに似ているような気もする。


「総司の読み通り、ふたりは母と娘なんじゃない?」


 さらっと言うなぁ、おい。


「で……このシナリオの結末はなんだ。どうなるんだ」

「それは知らないけど」

「なにか、覚えたほうがいい単語はあるか」


「んん……アルカイドが出たら、ムネアツ」

「ムネ、アツ?」



「おおぐま座の尻尾の先端。北斗七星の七番目。

 でもって、スピカとアルクトゥルスに繋がる春の大曲線。

 もし、アルカイドが出てくるとしたら、シナリオの終盤だと思う」



「なるほど。オレには意味が分からないが、覚えておこう」


 もし出てきたら、ヴィルゴ王国へは、一切、行くのをやめよう。



「あとはディアデムかな。かみのけ座アルファ。

 デネボラとアルクトゥルスを結ぶ途中にある星。

 でも、出てくるとしたら、ちょっと邪魔するだけの脇役かも」


「そうか……」



 まとめると……

 ヴェータは、もしかしたらデネボラで、物語のカギ。

 アルカイドが登場したら終盤。

 ディアデムは脇役。



 ダメだな。忘れる。

 カタカナが多すぎる。



 ストームは、オムライスにスプーンを運びながら、タブレットの画面に視線を落としている。

 楽しそうだ。


「ストームは、星とか星座に詳しいんだな」




「んん……ただの趣味」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ