4.7.20
アルクから、銀貨を20枚受け取った。
契約の手付金だと言う。
ログインデバイスさえあれば、オレは働かなくても生きていけそうだ。
過去のプレイヤーの年金だと思って、遠慮なく使わせてもらおう。
そのあと、アルクは、家から立ち去った。
今日は、この家を使って良いというので、そうさせてもらう。
先に簡単に家の中を調べる。
まずは、入り口の扉。
鍵穴はなく、代わりにかんぬきを支えるフックがついていた。
扉の横に、丁度はまりそうな杭も立て掛けられている。
1階は、薄暗いが会議室のようになっている。
壁伝いに歩いていくと、奥にも扉があった。
樫の木よりも鉄が目立つ頑丈そうな扉だった。
この扉にも鍵穴はついていない。
だが、押しても引いても、ビクともしない。
この扉も反対側から、かんぬきが掛かっているのかもしれない。
扉の先が気になるが、どうにもならない。
そこから離れて、タペストリーに近づく。
描かれているのは紋章……だな。
白地に黒。
左右に円を縁取る麦の穂。
左は上を向き、右は下を向いている。
中心には、ぼやけて塗りつぶされた円。
そこから、十字に白い筋が伸びている。
麦の穂に囲まれた、星の輝きを写したような紋章だった。
1階には、他になにもない。
階段を昇り2階へ。
広さは1階と変わらない。
窓はあるが、分厚いガラス。
剣でちょっと小突いたくらいじゃ、壊れないだろう。
透明なガラスではない。だから外を見ることはできない。
外部から入ってくるのは、そのガラスから滲む光だけで、あとは壁。
暖炉も煙突もない。
この家は、空気を入れ替えるのすら困難だ。
この家には、入り口の扉以外に出入りできる隙間がない。
開かない扉に、紋章が描かれたタペストリー。
出入りできるのは1ヶ所だけ。
内側からのかんぬきだけなので、出ることはできる。
しかし、外からカギをかけることができない。
閉じ込めるための家ではない。
自ら閉じこもるだけの家。
まぁいいか。
また1階へ。
奥の扉がなんなのかは謎だが、とりあえず、入り口のかんぬきをかけておく。
また2階に戻る。
ベッドにホコリはなく、綺麗に整頓されていた。
そういえば、生活感ゼロの家なのに、床も壁も綺麗だ。
オレが使うからと、事前に家具を運び込み、掃除してくれたのだろうか。
ベッドに横になってみる。
他に暇をつぶせるものがない。
なにもすることがなかった。
時間は、おそらくまだ正午のあたり。
このまま、明日の朝まで待たされるのだろうか。
いくらオレでもそれは無理だ。
ログインデバイスを叩き出す。
腹が減ったから、前哨基地でなにか食わしてもらおう。
ティナかリュウジを探そう。
オレは、前哨基地へ戻ることにした。
3日ぶりか。
守備隊の仕事、なんにもしてねぇな。




