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4.7.5


 おやしろの2階。分厚い窓。


 そこから光が差し始めた。

 陽が昇り始めたようだ。


 ひとまず前哨基地へと飛ぶ。


 誰もいない。

 四角張ったテント。焚火の跡とベンチ。 

 ほっとするのと同時に、なぜだか少し残念な気持ちも感じた。


 昇っていく朝陽を眺めながら、ベンチに腰を下ろした。


 ポーチからストームカレンダーを取り出しす。

 浮き出た数字は、31日目。

 未希やストームは、10日進んでいると言っていた。

 あの2人は40日を過ぎているのか。

 オレだけずいぶん遅れているな。


 ストームカレンダーをポーチに戻すと、基地の方から誰かが歩いてくる。


 ティナだ。

 なんの用だ。


 また、仕事だとか言って、戦いに駆り出されるんだろうか。


「ったく……なんで、アンタんちはこんな遠いんだよ」

「じゃあ、なんで来るんだよ。オレのことは、ほっといてくれよ」


「ウィリアムに呼んで来いって言われたんだよ。ついてきな」


 ウィリアム……なら行った方がいいか……


 しかたなく立ち上がる。

 そして、ティナに促されて歩き始めた。


「ヒゲ剃った?」

「再ログインしたんだよ」

「あっそ」


 ティナが振り返らずに前を歩いている。

 ゴワゴワのこげ茶の髪が、タワシのようだ。


「本当はなぁ、守備隊には、ログアウトする前に報告義務があるんだけど……まぁアンタは一般人だからいいのか」

「一般人? 他に、なに人がいるんだ」


「アタシらは軍人。国から給料もらって派遣されてるから、仕事で来てるんだよ」


「給料? なら、ウィリアムはおまえの上司、上官なのか」

「そういうことだね」


「ティナは、どの年代からログインしてるんだ」


「それは機密だけど……

 そうだなぁ……代わりに教えてやるよ。

 アタシはけっこう下っ端。

 年代よりも階級が優先されるのは同じだけど、ニフィル・ロードでは、より古い時代からログインしてるヤツのほうがリスペクトされるね。まぁそりゃそうだよね。ダディーの同僚とかさ、ヘタしたら、おじいちゃんの戦友だったりするからね」



「ウィリアムは、どの階級なんだ」

「あのヒトは大尉。現場たたき上げらしいけど、時代が違うから、アタシも詳しくは知らないよ」



 もしかして、この世界は……現実世界の国や、軍が支配しているのか?

 だとしたら、そんな世界で全てのプレイヤーを裏切って大罪人になるのって、どれだけの闇を抱えることになるんだ。


 どうでもいいか。

 どうせそんなのムリだろう。



 ティナの後をついていくと、司令部テントの周囲に十数人のプレイヤーが集まっていた。

 大半は男性だが、女性も数人。


 中央にはウィリアム。彼の側近も揃っている。

 リュウジやロンの姿もあった。


 何人かは、到着の報告をして、ウィリアムに敬礼している。

 ティナもそのひとりだ。


 ウィリアムが口を開いた。


「連日の防衛戦による消耗で、守備人員が不足している。見張りの交代人員も足りていない。

 今回、集まってもらったのは、見張りの再編成のためだ。

 これまで、そういった通常業務は軍で対応してきたが、しばらくは全員で協力してもらう」



 ……24時間の監視業務にオレも加われと。そういうことか。


 ウィリアムが説明を続けた。


「現在の守備人員は18名。

 2名を休暇にあて、4人で班を組み4交代で監視の任務についてもらう。

 異論がある者はいるか」



 異論は誰からもあがらない。

 そんなのやりたくないが……なにも言えない。


 オレのチームは、リュウジとロン。それとティナになった。

 軍属はティナだけ。

 各チームに最低一名は軍属を配置しろと言われ、オレ達のチームにはティナが志願した。

 よって、必然的に、オレ達のリーダーはティナになった。



 まぁ、こういう仕事は、現実世界でもやっているが……

 嫌だ……やりたくない……


 給料は出ないようだが、勤務終わりに食事が支給されるらしい。

 時間はどうやって確認するのかと聞いたら、ログインデバイスで調整しろと言われた。


 勤務時間は24時間に合わせたものではなく、ログインデバイスの4分。

 つまりニフィル・ロードでの6時間40分の監視業務に従事することになる。


 うん。

 時間の管理はややこしいので、隊長のティナに任せよう。


 オレのログインデバイスの表示は「6」だった。

 オレ達の最初のシフトは、次の次に決まった。

 次の任務時刻の「14」になる前に、詰所に来いとティナに言われた。


 何時だろう。

 夜の7時くらいかな。


 すっぽかしたらどうなるんだ。


「リュウジ。こんなこと、真面目にやるつもりかよ」

「俺は、この基地に少しばかり義理があってよ。やれと言われればやるよ。おまえもサボるんじゃねぇぞソウジ」


「…………」


 オレやリュウジ以外にも、軍属ではないプレイヤーが数人いるようだ。

 早速、ワインやウィスキーを対価に、任務時間の売り買いが始まっていた。


 その酒を買うのは軍属。

 ウィスキーを楽しみながら、監視任務をするつもりか。

 軍紀に問題は無いのだろうか。

 ウィリアムは、見て見ぬふりのようだ。


 なんだかウィリアムの思惑が見え隠れする。

 酔っぱらっていたとしても、軍人が監視したほうがいいのかもしれない。

 酒で軍属を長く立たせ、売り買いしない真面目な民兵に不足を埋めさせる。


 つまりオレは真面目な民兵。

 軍人を長時間の任務に就かせるために、巻き込まれただけ。


 だったら、オレもさぼりたい。


 しかしサボるんだったら、対価が必要だ。

 やはり、行くか。



 スピカへ。




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