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4.7.4 - アジト


 2人を連れて階段を昇り、ドアを開けた。


 部屋の中から冷たい空気。

 またエアコンがつけっぱなしだった。


 最初にストームが口を開く。

「なにここ、空き家?」


 次に未希。

「おにいちゃん、空き家に住んでるの? 不法侵入?」


 奥の部屋にタオルケットとクッション。

 オレの部屋の荷物はそれだけ。


「おととい越してきたばかりだ。ログインするなら、左の部屋を使え」


「おとといって、おとなりさんにご挨拶した?」

 未希が喋りながら、土間に足を踏み入れる。

 その肩をブルっと震わせた。


「さむっ……おにいちゃん、エアコン効きすぎじゃない?」

「ああ、消すのを忘れてた」


 未希が土間で靴を脱ぐ。

 ストームも、そのあとに続く。


「これは……改造のしがいがある……」

 なに言ってんだ、ストームは。


 2人は、なにもないダイニングの端に荷物を置いた。


「コンビニ行ってくる」


 ゴミを増やしたくない。

 が、オレが何かを言う前に、2人は部屋から出て行った。


 十分ほどで部屋に戻ると、ダイニングの床でペットボトルのキャップを回し、お菓子の袋を開ける。

 ストームは、ナップザックからノートパソコンを取り出して、カチカチとキーボードを叩き始めた。


「おにいちゃんも、ログインするんでしょ?」

「オレは今日もいいよ……」


「えー、でも、ログインしてたみたいだよ。

 補給に出てたみきの友達から聞いたよ。なんかデレデレしてたって」


 またオレの未来の話か。

 デレデレって、友達ってダレだよ。


「昨日は何日入ってたんだ?」


「う~んと……10日過ごしたよ。こっちでは2時間半くらい」

「総司も、来週までに14時間ログインしといて。あとで時間調整するの大変だから」


「もう、ソフィアとおまえ達だけでもやれるだろう。オレより強いじゃないか」

「ダメ。それは合理的じゃない。他にすることないなら総司もログインしろ」


「おにいちゃん、もしかして、これで寝てるの? 風邪ひくよ?」

 いつの間にか未希が、タオルケットを拾い上げていた。

 それを畳んで、クッションの横に置く。

 それから、床に落ちていたリモコンを拾う。


「寒いからエアコンの温度上げるね」


 そんなに寒いのか。オレは普通だが。


「あれ、自動設定なの? へんなの」

「んん、この部屋は怪しい。なにかいる」


 うさんくさい霊能力者かなにかか、こいつらは。


「でも、ここは使える。月水金は、ここに集まろう」


 ……勝手に決めるな。


「まずカーテンを取り寄せよう。電磁波シールド入りのやつ。

 テーブルも欲しい。あと棚。ソファーも欲しいね。

 みきさんは? なにかいる?」


「う~ん……おにいちゃんのお布団?」


 家具か。

 冷蔵庫くらい買おうかな。


 それからしばらく、ぺちゃくちゃとオレの部屋をディスったあと、2人はログインした。

 ダイニングのお菓子は広げたまま。

 その隅に2人の荷物。

 ストームは、勝手にノートパソコンのコードを繋ぎ、電源は入れたまま。

 誰もいなくなった部屋で、ノートパソコンのファンが唸っている。


 ちくしょう。

 直接的な単語は避けたが、ニフィル・ロードっぽい話をしまくっていた。

 ゲームかなにかの話のレベルで収まってるとは思うが。

 まぁ、気にしすぎるのも返ってよくない。

 あれでいいだろう。


 そのまま、しばらく床に座っていた。

 いつ戻るかわからない2人を放置して、出かけるわけにもいかない。

 なにもすることがない。

 他に音が無いので、ノートパソコンのファンが、やけにうるさく感じる。


 スマホが震えていた。

 アプリの通知。


 発信者は、ルシアだ。

 ああ……めんどくせぇ……


 スマホには触れず、ポケットからログインデバイスを取り出した。

 ログインリチャージは、とうに終わっている。


 ワールドカウント24。

 ログイン待機中。


 なにも家具がなく、障害物もないので文字は緑色だ。


『 Join Me 』

 触れろと言っている。

 来いと言っている。


 逃げてこいと言っているような気もする。

 無意識に指が文字に触れる。


 虹の幕が現れ、オレは呑み込まれた。




 眼を開けると、おやしろのベッドの上。

 真っ暗だ。


 前回のログアウトは、日没のすぐあと。

 だとすると、今は真夜中。

 夜明けはまだ遠いだろう。

 変な時間のログインになってしまった。



 前哨基地へ行こうと思ったがヤメた。

 夜中の戦闘に巻き込まれるのは嫌だ。


 眠くはないが、そのまま眼を閉じた。

 眠れるかどうかはわからないが、他にすることがない。



 このまま、夜明けを待とう。




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