表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
241/251

4.6.9


 夕方。

 酒場へ立ち寄って、飯を喰う。


 エールと美味い食事。

 今日は、肉があまり入ってなかったが、野菜をふんだんに入れたシチューだった。


 この店には、食事のために、しばらく通うことになると思う。


 前哨基地は、食糧不足。

 まぁ、仮に食糧があったところで、オレは料理ができない。


 そうなると、やはり、おやしろまでの往復が面倒だな。

 どこか近くに空き家とかないのかな。


 忙しそうなヒミコを捕まえて尋ねてみたが、この近辺に空き家はないようだ。

 そもそも、酒場の近くはこの村の一等地だと言われた。


 それもそうか。

 雑貨屋も近くにある。

 店はそれだけだが、ここは村で唯一の繁華街だ。


 ヒミコが提案した。

「うちの宿泊部屋に、ロングステイしたら?」


 なるほど……


「1泊いくらだ?」

「鉄コイン2枚」

「安いのか高いのか、よくわからん値段だな」

「ソウジなら、タダで半年住めるくらいお金落としてると思うけどね」


 まぁいいか。今夜は帰ろう。


「わかった、考えとくよ。マスターにも、それとなく伝えておいてくれ」

「おっけー」



 食事を済ませて、おやしろに戻る。

 寝る前に一度、様子を見に前哨基地へ飛んだ。


 辺りはすでに夜。

 オレのテントの周りには何もないので、真っ暗……

 のはずだったが、焚火に火が灯っていた。


 誰かがベンチに座っている。

 こう見えても、ここはオレの家で、焚火もベンチも公共施設じゃないんだが。


「あっ、ソウジ、やっと出てきやがった! アンタさぁ……自分が守備隊のメンバーだってことわかってんの?」


 座っていたのは、ティナだった。


「なんだよ。なんの用だ」

「仕事しねーから、文句言いにきたんだよ!」

「そうか。悪かったな。じゃあもう済んだろ。帰れ」


「そんなんで済むわけ……ん……?」

「……なんだよ」


 ティナの視線がオレの左胸で止まっていた。


「なによこれ」

「あん?」


「これよ、これ」

「ああ……ブローチか。貰ったんだ。それがどうした」


「貰ったって……誰によ? 女?」

「まぁ……そうだな。男だったら断るのも簡単だったのにな」


「どんな女?」

「おまえには、関係ないだろ」


「……そ、そうね……関係ないわね」


 なんなんだ。

 なにしに来たんだホントに。


「それ……パンジー?」

「ぱん? なんだ?」


 ティナが立ち上がる。


「まぁ、アンタのことなんてどうでもいいんだけど……」

 横を向いたまま、また言葉を続けた。

「パンジーの意味、知ってるの?」


「知らねーよ」


「……私を思ってください……愛の告白」

「……」


「でも、それ、赤よね」

「赤だとなんだ」


「それは心にしまっておきます。私の思い……忘れないでね……」


 ティナが、にやけながら、こっちを向いた。


「つまり、アンタはフラれたってわけよ。アハハハハ!」


 片手で腹を押さえて、すこし屈みながら笑い続けている。


「じゃあ、アタシもさようなら。おやすみ」


 それだけ言い捨てて、ティナは歩き出した。

 基地の中心部へと立ち去っていった。



 なんだ。

 いったいなんなんだ、アイツは。

 何がしたい?

 何が言いたい?

 オレのことはもう、ほっとけよ。



 ……まぁいいか。


 ティナも守備隊メンバーなんだよな。

 後ろからヘタクソな矢で射貫かれるのも嫌だから、次はもう少し顔を作るか。


 ああ、めんどくせぇ。

 帰って寝よう。


 ログインデバイスを出す。

 文字に触れようとしたところで、基地の方から鐘が鳴った。


 カンカン、カンカンカン、カン。

 カンカン、カンカンカン、カン。


 鐘のリズムは、2回、3回、1回。


 以前、リュウジに教わった記憶がある。

 覚えているのは、鐘の音で、敵の種類と数を知らせているということ。


 だが……


 どの鐘が何だったのか。

 まったく覚えていない。


「ソウジ! 仕事!」

 ティナが振り向いて、大声を上げている。



 ちくしょう……


 様子を見にくるんじゃなかった。

 このままバックレようかとも思ったが。



 オレは、ティナのいる方へ駆け出していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ