4.6.7
ストームカレンダー28日目。
未希達が噴水広場に出発した翌日の朝。
リュウジの予言通り、オレは、なにもすることがなかった。
周りでは、畑を耕したり、塀を組み上げたりしている。
どちらも、オレにはわからないし、そこで下働きをするつもりもない。やりたくない。
オレはメモリアへ行くことにした。
もしかしたら、売れるんじゃないかと、詰所で山積みにされていた武器を持てるだけ持っていく。
欲しけりゃ持ってっていいと言われている。
「ソウジ? どこいくんだ?」
途中で、ティナが声をかけてきたが、聞こえないフリをして立ち去った。
両手で長剣を6本抱え、腰のベルトに手斧を4本差す。
どれも、刃こぼれはなく、そのまま使えそうなやつだ。
オレのテントまでは遠い。
すこし抱え過ぎたかもしれない。
テントに辿り着くころには、腕がパンパンになっていた。
少し休んでから、また剣を抱え、メモリアへ飛んだ。
出たのは、酒場の小部屋。
そうだった。忘れていた。
ドアを開けて部屋の外へ出ると、マスターと鉢合わせた。
「てめぇ……ここは、おまえんちじゃねぇんだぞ」
相手をしたいところだが、それどころじゃない。
まずは、店の外に出て、抱えていた剣を地面に下ろした。
「ふぅ」
「ふぅじゃねぇよソウジ。うちの酒場を好き勝手に出入りすんじゃねぇ」
「悪かった。それよりマスター。飯、喰わしてくれ」
「……ったく、わかったよ、座って待ってろ」
なんだかんだ言うが、マスターは面倒見のいい男だ。
まぁ、オレがここでコインをばら撒いているからってのもあるだろうが。
カネはあるかとコイン袋を開くと、銀貨はなく、鉄コインが数枚。
おやしろには、まだ金貨が2枚あるが、この村では金貨は使えない。
カネを工面しなきゃならない。
テーブル席に座っていると、店から出て来たのはヒミコ。
運んできたのは、野菜とベーコンを挟んだパン。それとエール。
「おはよう、ソウジ。今日も早いね」
「ヒミコ。この村の鍛冶屋ってどこだ?」
「鍛冶屋さん? それなら……」
ヒミコに鍛冶屋の場所を聞いた。
代金だと言って、鉄コインを2枚渡した。
食べ終わる頃、台車を引くクラゲが店の前を通りかかった。
「よう、ソウジ。朝飯か? おれのぶんはどこだ?」
「ねぇよ。クラゲはこれから、仕事か」
「まぁな。薪木の納品だ」
台車には、その薪木が積まれていた。
手伝うつもりはなかったが、持ってきた剣や斧を、鍛冶屋まで運ぶ手段が欲しかった。
「クラゲ、台車押してやろうか」
「おお、いいのか。助かるぜ」
オレは持ってきた6本の剣と、4本の斧をクラゲの台車に乗せた。
クラゲが斧を1本よこせというので、まぁいいかと、くれてやることにした。
どうせ仕入れ値は、タダだ。
それから、クラゲの台車を押して、何軒かの家を回った。
いくらかの薪木を渡して、次の家へ。それを繰り返す。
昼頃になって、最後の納品先。
最も多く、薪木を納品する先は、鍛冶屋だった。
手間がはぶけた。
鍛冶屋の店主の前に、6本の剣と、3本の斧を並べる。
斧は、そのまま買い取ると言った。
問題は、剣だった。
村で、剣を欲しがるヤツなんて誰もいない。
買えるだけのカネを持ってるヤツもいない。
そのまま溶かして、鉄コインにもできると言ったが、それだと価値は2割か3割に落ちるようだ。
スピカの街なら、いくらでも買い取ってくれるだろうと店主が言った。
やはり行くしかないのかな……スピカへ。
とりあえず、持って帰るのは嫌だった。
より上等そうに見える2本を残して、あとは換金した。
剣よりも、そのまま売り物になる斧のほうが買い取り額は高かった。
剣は、溶かしたあとの鉄の値段にしかならなかった。
それでも、革袋代と手数料を差し引いた額で、鉄コイン240枚になった。
鉄コインは1枚、だいたい40グラム。
革袋の重さは9キロを超えた。
革袋は油まみれで、袋の底からポタポタと油が滴り落ちている。
コイン袋の数枚ではなにも感じなかったが、9キロになると、それはもはやカネではなく鉄だった。
鍛冶屋の店主から、手数料を払えば銀貨にしてやると言われたが断った。
この鉄コインは、この村で使う。
銀貨よりも、鉄の方が都合がいい。
クラゲが、手間賃をヨコセと喚いたが、すでに斧をやっただろうが。
オレは残した2本の剣を腰に差し、9キロの革袋を抱えて、おやしろにもどった。
これで、この村で生活するための資金はできた。
足りなくなったら、また剣や斧を売ればいい。
あとは、前哨基地に持ち込む資材や、食糧だ。
どうしようか……
まぁいいや。
あとは、明日考えよう。




