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【書籍化】脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。(web版)  作者: サエトミユウ
8章 聖属性の魔法使い、イベントをこなす!

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第97話 メデリア・ドラマティカの一年間

 一年生の最後にお父様から婚約解消の話を聞いた数日後、今度はアドリアン様とオーレン様が事件の黒幕は私だと主張したと聞いて、あまりのことに絶句してしまった。

 私が? 企んだ? 何を? 黒幕?

「……どういうことなの?」

 呆然としてつぶやく。

 ケイラ様も私に指示されたと主張しているらしい。

 私はしていない! アドバイスはしたけれど、聞かれたから答えただけ!

 お父様は、手紙を読めばわかるかもしれないから提出するようにと再度促され、私は用意しておいた手紙をお父様に渡す。

 お父様はそれを王城へ持っていった。

 ケイラ様も手紙を提出したそうだ。

 帰ってきたお父様に呼ばれ、私とケイラ様双方の手紙のやり取りを読んだことを語られた。

「確かに、お前は指示していないな。……なんというか、夢の話を互いに語っているだけだと私は思ったし、宰相や陛下もそう判断した」

 私はホッとする。

「はい、そのとおりです。ただ、夢にしてはあまりにも具体的だったので……いろいろ危惧しておりました。ケイラ様はレイヴン様をお慕いしているようで私の見た夢にショックを受けたようで……ならばこういったのはどうかしらと語っただけです」

 父は私の話にうなずく。

「そうだな、あくまでも夢の中の話で、後日たまたま現実で同じ事が起きただけ。夢でこんなことが起こった、ならこういうふうに夢の中ですればいい、それだけだと全員判断した。一部の貴族はお前がケルベロスを召喚したのではないかと疑ったが、一学生にあれほどの巨大な魔物を召喚するなど無理だ。ゆえに、お前に罪はないと皆が結論づけたよ」


 当たり前だわ。ケルベロスを召喚する方法なんて知らないもの。乙女ゲーでは確か闇ギルドが行ったはずだけど……依頼者は誰だったかしら? 黒いフード付きのローブで顔が見えないけれど、どこかで見たことのあるような気がする……。

 と、気が逸れているうちにお父様が続ける。

「ケイラ・ヴァリアント男爵令嬢はかなり夢見がちで夢と現実を混同するようなことがしょっちゅうあると家族が言っていた。それゆえ、彼女も表だっての処罰はないが、ヴァリアント男爵家で再教育させ、夢と混同することがなくなるまで表に出さない、ということになった」


 ……そうなのね。夢と混同したのではなく、乙女ゲーの話なんだけど……。でも、とうてい信じてもらえないわよね。たまたまアドリアン様たちには信じてもらえたってだけだわ。これからは気をつけないと……。

 お父様が私をジロリと睨んだ。


「だが、お前もお前だ。確かに指示はしていない。だが、お前も夢の話をさも予言のように書いたら、夢見がちな令嬢が本気にするだろう。いくら相手が勘違いしたとはいえ、そもそも夢の話などを手紙に書くものではない。深く反省し、二度としないと誓いなさい」

「はい、申しわけありませんでした」

 確かに迂闊だったわ。同じ悪役令嬢とはいえよく知らない方にそこまでの話をするんじゃなかった。

 案を実行するのはいいとして、私のせいにされるなんて……。

 尋ねられたから案を出してあげただけなのに。

 もう二度としないと誓うわ。


「あと、アドリアン・リーフル公爵令息とオーレン・レグナード侯爵子息だが……。誰も会話を聞いていないため、双方言い分を聞くだけでしか判断ができない。だが、あの手紙を読んだこともあるし、お前自身の性格もある。……お前は夢見がちだが怯えるばかりのおとなしい子だ。お前の夢の話と怯えを大げさにとらえ、その話を信じてお前のために何かしてやろうと思ったのだろうと結論した。……そもそも、お前の話を真に受けたのなら学園長やそれぞれの両親に相談すればよかったのだ。それを怠り相手を陥れようとしたのがいただけない。ゆえに、処罰は覆らない」


 私はうつむいてうなずく。

 攻略対象がバッドエンドを迎えるなんて……。私がゲームのストーリーを変えたからかしら。

 つまり、乙女ゲームのシナリオは破綻し、主人公は百合ルートに入り油断はできないけれど、少なくともアドリアン様やオーレン様から断罪されることはないわ。


 そう思っていた。そう思っていたのよ。

 ――登校初日、ギラギラと私を睨むアドリアン様の顔を見るまでは。

 私は驚き、立ちすくんだ。

 一緒に登校していたヴィクターが、素早く私を庇ってくれる。

「義姉様、ここは私が食い止めます。義姉様は行ってください」

「でもヴィクター……あなたは今日、入学式でしょう? 会場に行かないと……」

「義姉様の安全のほうがよほど重要です!」

 そんな会話をしていたら、アドリアン様は行ってしまった。

 ホッとした。……だけど、恨まれているのがわかった。

 でも、私は指示していないわ! そんな話はしたけれど、アドリアン様だって聞き流したじゃない!

 そう叫びたかったけど、激昂したアドリアン様が襲いかかってきそうで、怖くて言えなかった。


          *


 ――アドリアン様はそれ以降見かけなくなった。

 でも、オーレン様がこちらを窺うように見ている。

 オーレン様も恨んでいるだろう。『私が指示した』と主張していたそうだから。目を合わせたら怒鳴りつけられるかもしれないと避けていた。

 ……それでも、ジッとこちらを窺うように見ているため、何度か目が合ってしまう。

 すぐさま外す。

 そんなことを繰り返していたら、いつの間にかオーレン様もこちらを見なくなった。

 むしろ、私がいないかのように振る舞っている。

 ……安心していいのかしら。それとも、後で陥れる気かしら?

 周囲に気を配りながら過ごしていたら、気疲れしてしまった。

「……どうして私は悪役令嬢なの? 物語は破綻したのに、まだ攻略対象から狙われているなんて……」

 嘆いていると、タウンハウスに遊びに来た義弟が慰めてくれる。


 なぜか義弟は寮に住んでいる。

 乙女ゲームでは私が大反対したのだけれど、今は別に反対していない。なのに義弟は寮に住むことを選んだ。養子に入る以前から付き合っている友人がいて、放っておけないかららしい。

 面倒見が良くて思いやりのある良い子ね……。


 そんなふうに思っていたのに、冬期休暇で戻ってきた数日後、父から恐ろしい話を聞いた。

「ヴィクターは、闇ギルドに依頼しリリス・ヴァリアント男爵令嬢を殺害しようと企んでいた。しかもその依頼金は公爵家から横領した金だという。……闇ギルドは貴族の闇だ。ゆえに、そこが絡むと王家も追及しにくい。ゆえに表向きにはしないが……少なくとも、ヴィクターとの養子縁組の件は白紙に戻る」

 私は絶句した。

「……な、ぜ……。なぜそんなことに……?」

「ヴィクターいわく、お前を守るためだそうだ」

 私を守るため?

 そのために殺すなんて……。

 知らずに私は否定するように首を横に振っていた。

「そんな……私は……そんな……そんなことを望んでは……そんな恐ろしいことを……」

 だって、主人公が義弟に暗殺されるなんて、そんなの乙女ゲーにはなかったわ。私は知らない……。

 そもそも義弟は攻略対象だった? ……どうしたんだろう、思い出せない……眠らないとダメなのかもしれない。幼少のころはよく前世の夢を見たのに、最近は全然見なくなって……。


 ――そのとき、視えた。

「……あの、闇ギルドに依頼金を渡していた、あの黒いローブは……あれは、ヴィクターだったの……」

 そうだ、思い出した。ヴィクターの設定を。


【お知らせ】

 最後の『イラストコメンタリー』がポストされました!

 活動報告に追記してありますのでよろしくお願いします。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1306348/blogkey/3689847/


 売り上げですが、なかなかヤバいですねー。

 特に電書が壊滅的で、初日こそ好スタートだったんですが2日目にして早くもランキングから消えました。

 たぶんダメっぽいなという感触ですが、こればっかりはしかたないですね。

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2026年8月17日 電撃の新文芸より発売
脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。2


著者:サエトミユウ / イラスト: とよた瑣織



― 新着の感想 ―
もうヒロインと攻略対象がゴチャゴチャだねえ。ヒロインが2人だから同時に2本かそれ以上の物語が進行してると思いますけど。 ところで百合ルートは誰と誰のルートなんですか?そこ大事なところなんで!リリス×レ…
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