第96話 告白されたのである
毒殺未遂事件のため、冬期休暇がずれ込んだ。
さすがにあんな事件があった後で、
「じゃっ、冬期休暇だから実家に帰るね」
……ってソッコー帰宅する猛者はいなかった。そういう猛者の代表は私とレイヴンだろうけど、どちらも実家に帰省しないので……。
私たち二年生だけ十日ほど冬期休暇がずれることになった。理由は『集団食中毒』らしいけど……。聖属性の魔法使いのいるクラスで集団食中毒ってありえないけどね? でも、そのありえないことが起きたって発表していることで察しろってことなんでしょうか。
諸共に毒殺されようとしていたスコール君は、隷属魔法の影響がようやく抜けた。
隷属魔法自体は魔法なので私には解除できない。
でも、闇魔法が使われていて、闇魔法が呪いであるのなら聖魔法が効く。
ということで、
「【聖浄】【聖癒】」
を唱えて綺麗にしてあげた。
マトモになったスコール君、たしかに光属性だったよ。魔法は土属性らしいけど。
隷属魔法にかかっていた時代もその片鱗が見え隠れしていたけど、それが抜けたらさわやか少年だなって思った。
「リリス先輩が治してくれたって聞きました。ありがとうございます!」
と、明るく言って頭を下げられたので、ちょっと聞いてみた。
「ねえ、なんで隷属魔法なんかにかかったの?」
そうしたら、笑顔だったスコール君がフッと空を見た。
「……なんででしょうね。ヴィクターが、公爵家に行き養子になって、幸せそうだったからかな……。義姉のことばかり話し、義姉を心酔しているアイツはとても幸せそうだったから……。昔と違って俺のことはもう歯牙にもかけてないみたいだったから、信じたかったんです」
私もつられて空を見た。
うん、青い。鳥が飛んでいるね。
「もうかからないようにしなよ?」
「わかってます。というか、俺にかけようと思う奴なんて、アイツだけでしょ。だから、もうかかりませんよ」
そう言うと、私を見て笑った。
じゃーねと別れようとしたら、呼び止められた。
「リリス先輩。俺とお付き合いしてくれませんか?」
とか耳を疑うことを言われたので振り向く。
「……魔法の影響をまだ受けていると」
「違いますよ。俺が英雄ガレスに憧れていたのも事実だし、リリス先輩が好きなのも事実です。隷属魔法だって、無から有は生まれないでしょ。……ホントは俺、冒険者になりたくて、憧れていたんです。ボクシー子爵家に養子に入ったのは後継者となるからで、両親は俺を本当の息子のように扱ってくれたから、絶対になれない。でも……ヴィクターがその枷を外してくれて、俺は冒険者を目指しました」
その話を聞いて思った。
……お家騒動って、本ッ当~にキツいよね。
――前略、ケイラお嬢様へ。
私へのある程度の理不尽。文句は言うしもしかしたら手が出ることもあるかもしんないけど廃嫡には絶対にしようと思わないので、後継者としてがんばってください。私、ヴァリアント男爵家を継がないので、よろしくお願いします。
そんな固い決意を密かにしている間にも、スコール君の独白……いや違うか告白を聞く。
「リリス先輩のことは、一目惚れとは違うけど、英雄ガレスに似た性格で、しかもすごくかわいいから憧れてました。お人好しで、サッパリしていて。貴族令嬢とは違うあなたが好きです」
私は頭をかく。
「ごめん。私って重度のファザコンなんだ。父様くらいの男じゃないと靡かないのよ」
「そうですか。わかりました」
アッサリ引いたなー。
「ホントに私のこと好きだったの?」
って思わず聞いちゃったよ。
スコール君が笑う。
「だって、『英雄ガレスに並び立つ男じゃないと無理』って言われて、自信満々に『俺は並び立ちます!』って返せないですよ」
そういうことか。
お断り常套句としては、本来効き目があるはずなのか。
「……私、これを勘違い王子と愉快な仲間たちに繰り返し言ってたんだけど、まるで効果がなかったんだけど」
「え……すごい人たちだな。まさしく勘違い」
そう返されて、笑い合った。
【お知らせ】
『イラストコメンタリー』の2つめがポストされました!
活動報告に追記してありますのでよろしくお願いします。
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