第92話 嘘でしょって話を聞かされたのである
冬期試験の後、打ち合わせって言われて呼ばれた席で、とんでもない話を聞かされた。
「……えっ? スコール君が隷属魔法にかかってる?」
嘘でしょ?
「嘘でしょ、って顔をしているけど、本当だ。……私は、隷属魔法にかかっていた者を知っている。あちこち旅をしていたとき、偶然そういう連中と出会したことがあるんだ。……そのときは、なんやかんやあって解除されたが……。彼はずっとかかりっぱなしだ」
なら、解除してあげたら……って考えたら。
「解除するのは容易いが、誰かもわからず解除してもまたかけられる可能性がある」
予測したレイヴンに先回りして言われた。
あ、そうなんだ……。
クリス君もうなずく。
「かけるのは大変で、解除は簡単なんだけど、そのかけるのが大変なのは、対象者を薬でおかしくさせてからかけるからなんだよ。だから、犯人もわからず解除すると、スコール君がまた薬を飲まされてかけられることになる。そうなると、スコール君自身が危険だ。どんな薬かわからないから」
「それは大変」
生きているなら私が魔法で治してあげるけど、死んじゃうかもしれないのか。それはかわいそう。
「なので相手が誰かを探っていたし、理由があるだろうと様子を窺っていた。……で、恐らく仕掛けてきたよ。感謝祭で、毒物か何かを飲み物に仕込んでくるようだ」
…………。
「それはないんじゃない? スコール君、私が聖属性だって知っているでしょ?」
呆れた声で反論したら、レイヴンは首を横に振る。
「彼は知っているかもしれない。だが、どの程度の効力かを正確に知っているかはわからない。クリスだって知らないだろう?」
「うん、知らないね」
あ、そういえばそうだね。
「隷属魔法をかけた犯人がどこまで知っているかわからない。だが……恐らくは知らないんじゃないかと思う。君の聖属性の魔法は、肉を焼いたアレしか皆は知らないからな。あとは、鎚矛を振り回しているか錫杖を振り回しているか、誰かをひっぱたいているかしか知らないだろう」
……レイヴンが辛辣なんですけど!
それじゃ私が脳筋みたいじゃんか!
「そ、それはたまたまそこだけしか見られてないからじゃん! レイヴンは知ってるでしょ!?」
「私はね。君の父も、私の父も、あの屋敷に住むクランの皆も知っている。だけど、他には知られてないんじゃないか?」
……え。
「そうでもない。確か査問会のときにいろいろやった気がする。……けど……」
聖水は出せるけど、治療できることは言ってないかな。そしてあのときは呪いに関してがメインだったから、毒を消せるとは言ってないかもしれない。
「どのみちあまり知られていないし、もっと言うなら犯人はリリスを舐めているはずだ。君の見た目は可憐で、そのわりに物理で物事を解決するきらいがあるからね。魔法は大したことがないと思われるだろう」
そっかあ。舐められてるのかあ。
「……で、リリスの魔法で毒を消してほしい。……と考えているんだが、できるか? 無理なら、聖水で割ろうかと思う」
「あ、普通にできるよ。瓶に触れば毒を消せるし、グラスに触れば毒を消せるし。触らなくても消せるね」
二人が絶句する。
「……え、リリスって、実はすごいんだ?」
とかクリス君に言われたよ。
「〝実は〟ってどういう意味よ」
「だって、肉を焼いているか、鎚矛を振り回しているか、錫杖を振り回しているか、誰かをどついているかしか、してないじゃないか」
ってクリス君が言ったし!
酷い!
で。
クリス君は念のためにコーデリア・セイジクラウン先生にも話しておこうと言った。
「隷属魔法を人にかけるなんて重罪だよ。僕も昔読んだだけだからうろ覚えだし、実家に帰ってちゃんと読めばいろいろわかるけど、もう時間がない。先生でも知らないかもしれないけど……それくらいやっちゃいけない魔法で、やれる人間は裏の組織の人間だと思うんだよ。だから、僕たちだけで対処するのは難しいと思うんだ」
「……正直、私は反対なんだがな。先生が犯人だとは思っていないが、もしかしたら反対するかもしれない。私としてはここで捕まえておきたいのによけいな手出しをされて逃げられたら困るんだ」
なるほど。コーデリア・セイジクラウン先生はちょっとお堅い先生だもんね。
でも。
「私は先生に伝えるべきかなって思う。捕まえたい気持ちはわかる。でも結局のところ狙われてるのって私でしょ? みんなを巻き込むのは悪いし、先生がいい方法を考えてくれるならそれでヨシ、犯人に逃げられたとしてもスコール君は保護してもらえそうじゃん? 何しろ重罪の被害者なんだし、関係者を徹底的に洗って遠ざけてもらえるでしょ」
そう答えたら、レイヴンがため息をついた。
「……わかった。話そう」
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