第79話 向き不向きがあるのがわかったのである
その後、レティシア、ノエル、あとできそうな男子が続いて詰めて合格をもらった。
……で、いよいよ荷物を詰めたことのない生徒の番になったよ。
まず、クリス君。
ちゃんと見てた? ……ってくらい、雑だ。
まず、服を畳まない。
そのまま入れようとして、入らず必死でグイグイ突っ込む。
どれが応急キットかもわからないようで、とにかく放り込んでいる。
だけど、一応はデイパックに入った。一応は。
「…………。では、応急キットを取りだしてください」
と、コーデリア・セイジクラウン先生が言うと、クリス君が戸惑った。
「えっ?」
「詰めた物は、取り出す。これはセットで行われます。『応急キットを取りだして』と指示されたときに、すぐに取り出せますか?」
「……えっと、その……」
クリス君が困ってモジモジする。
「今、自分が何をどこに詰めているのかを意識してください。入れればいい、というわけではないのです。リリス・ヴァリアントも他の生徒も、何をどこにどう詰めるかを意識して詰めていましたよ。そこも、ちゃんと観察してください」
「……はい」
萎れたクリス君。
……うん。私、お貴族様がどういう考えの人なのかってわかってきたよ!
次に、別の男子がやったが、彼はよく見ていたせいか単に整頓が得意なのかできた。
で、次々と男子がやる。
できる人は初めてだろうができるが、できない人はとことんできないらしい。
クリス君が悪いお手本を示してコーデリア・セイジクラウン先生があれだけ説教したのにもかかわらず、同じことを繰り返して同じ説教を喰らっている。
そして、フレイヤ。
意気込んでるなぁと思ったら……。
「ハッ!」
わしづかみにして入れようと……あっ、そもそもデイパックの口を開いてないよ!
何を見ていたの!?
フレイヤは首をかしげつつも、デイパックに荷物をわしづかみにしては乗っけている。
そして、バラバラと荷物が崩れ落ちていく。
「……あら? おかしいですわね。こうやれば入るはずですのに」
と、おっしゃいましたわ。
さすがですわ、期待を裏切らないわ~。
コーデリア・セイジクラウン先生、頭を抱えてしまった。
「……えーと、フレイヤ? 鞄は知ってるよね? 持ってるでしょ?」
私は頭を抱えてしまった先生に代わって説明する。
「当たり前ですわよ。どうやって登校しますの」
フレイヤがムッとしたように答える。
「ソレ、鞄だよ?『鞄に物を詰めろ』って先生は言ってるのに、なんで鞄を開けずに上に物を積み重ねたの?」
私がデイパックを指さすと、フレイヤは私をボーッと見た後デイパックを見て、顔を真っ赤にした。
「そ、それくらい知ってますわよ!」
「……それはよかったです。鞄を知らず、ものを詰めたことなどないと言われたらどうしようかと思いました」
と、コーデリア・セイジクラウン先生がボソッと呟いた。
だがしかし。
今までさんざん見てきたはずなのにデイパックの開け方すら知らないフレイヤなので、一から教えた。
「ここのベルトを外して、こうやるのよ。反対側をやってみて」
「わかりましたわ! こうですのね!」
さすがに手取り足取り教えればフレイヤにもできる。
「……フレイヤに治療を頼む騎士団員は絶対にいないと思うけど、魔法士団式荷物の詰め方を教えとくわ。服はこう、四角く折り曲げたら軽く丸めて、で、こういう隙間に日用品を詰めていくのよ。はい、やってみて」
「こうですのね!?」
「そうそう。……で、最後にコレ。これは怪我をした誰かがが何か言ってきたら『これを渡すように言われましたわ~』ってこれごと渡せばいいから」
「そういうものなんですのね。承知しましたわ」
と納得して一番上にポンと入れる。
コーデリア・セイジクラウン先生が大きく息を吐いた。
「感謝します、リリス・ヴァリアント。……フレイヤ・ストームハート、今リリス・ヴァリアントが説明したことを、決して忘れないようにしてくださいね」
「わかりましたわ!」
フレイヤって、返事はいいのよね……。
そして、大トリがシエル。
ドキドキしたけど、普通にできた。
「なんだ、できるじゃん」
と私が言ったら、シエルが苦笑する。
「うん、フレイヤの番がくるまでは無理だって思ってた。でも、フレイヤへの説明を聞いて、鞄に詰めるのと一緒だって理解したら簡単だったわ。私、採取した植物を鞄に詰めるの、すごく上手なのよ?」
と、シエルが返す。
……シエルはあがり症なのかもね?
言うほどできないってことはないのかもと思った。




