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【書籍化】脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。(web版)  作者: サエトミユウ
2章 聖属性の魔法使い、2学年になる!

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第78話 お手本を見せるつもりが、ちょっと違ったのである

 シエラは、ずっと話し合っていたようだ。

 わざわざ両親が学園に来たみたいで、先生と両親とシエラが何度も面談室に行くのを見かけた。

 私としては、どちらにしろシエラが苦労するのだからシエラが覚悟を決めて選ぶべきだと思う。

 ただ、聞いてなかったことで後悔するのはつらいだろうから、不安なことは全部聞いて、貴族科か魔法科か、別の道を行くか、選んだらいいと思うよ。

 私は流されてイマココだからね!

 後悔はしていないけど、早いとこ冒険者になりたいなとは思ってる。

 なので、あわよくば退学騒動には便乗していくよ!


 で、翌週の家事の時間になりました。

「えへへ……リリス、迷惑をかけると思うけど、よろしくね」

「オッケー。こういう生徒同士の助け合いは魔法科の特徴だからね。任せとき!」

 シエラの言葉を受けて私は胸を叩いた。

 できないから何もやらない、それは使用人のやることだからやらなくていいってシエラが考えてたら『ちょっとなあ』と思ったけど、魔法科に残って、助けてもらうだろうけどやる、ってシエラが決めたなら、助けるよ。

 そもそも私、家事は好きだからね!


 でもって、最初の授業はというと……。

「バックパックに、並べてある荷物を詰めてください」

 って、コーデリア・セイジクラウン先生が真顔で言った。

 ……家事、関係あるかな?

 とは思ったけど、やれと言われればやりますよ。


 並べてある荷物は、服と最低限の日用品。あと、応急キットがある。

 私的には、服は真ん中に入れたい。

 底に入れたとき、床が濡れていると服も濡れるし、雨が降ったときにも上から濡れるから。

 もっと言うなら防水カバーをつけたいけど、そんなものはない。


「一人一人見て行きます。まずは、リリス・ヴァリアント」

 トップバッターだった。

「他の生徒の詰める作業を見るのも、授業の一環です」

 と、シエラやクリス君を見ながらコーデリア・セイジクラウン先生が言う。

 つまり、お手本になれと。了解。

 私は、応急キットを一番下にした。

 私の場合は使わないからという理由。濡れたり破損してもどうでもいいので!

 次に、服を畳んで入れていく。できれば皺になってほしくないので、大きく畳んで丸めた。本当は、下着類なんかがあると別のポーチか袋に入れてそれを間に挟んだりしたいんだけど、授業なので下着はなかった。

 で、日用品を最後に入れる。割れ物はないけどぶつからないように服を緩衝材にする感じで入れる。

「終わりましたー」

 コーデリア・セイジクラウン先生は、ちょっと困った顔をしたが、うなずいた。

「……いいでしょう。応急キットを一番下に入れたのは――」

「使わないからです!」

「でしょうね。リリス・ヴァリアントの場合は正しい判断です」

 と、コーデリア・セイジクラウン先生がおっしゃった。

 ……あ。一般的な詰め方をしないといけなかったのか。

 見本にならない……のか?

 え、そんなに怪我をするパターンが多いの!?

 普通そんなに怪我しないと思うんだけど!?


 戸惑っていると、コーデリア・セイジクラウン先生が次の生徒を指名した。

「次は、レイヴン・シルバーウインド」

 レイヴンは、衣類を一番下にした。

 応急キットは一番上だ。

 ここでコーデリア・セイジクラウン先生が大きくうなずいた。

「合格です」

 端的に述べたよ。

 レイヴンはちょっと肩をすくめた。

「魔法士団の正解はこうなんだろうなと思って詰めましたが、私もリリスと同じ詰め方をしますよ、先生」

 と、レイヴンが付け足す。

「冒険者としては、重たいデイパックを背負って戦うことをしません。放り投げます。そして応急キットはデイパックに詰めません。必要なら身につけます。デイパックに詰めるとしたら予備。リリスと同じく『使わないもの』なので、念のため底に詰めておく、というのが本来の私の判断です」

 コーデリア・セイジクラウン先生が苦笑した。

「そうですね。魔法士団は特殊です。デイパックを背負い、その背負ったデイパックから応急キットを取りだして騎士団の手当てをする、ということも多々ありますからね」

 全員が、コーデリア・セイジクラウン先生のお言葉に顔をしかめたと思う。


 そんなん、救護隊がやれよ! つーか救護隊を連れてけよ!

 魔法士団は戦うんだよ、救護隊じゃねーんだよ!


 私は挙手した。

「先生! 今の話だと、手当てもできないといけないんじゃないですか? そんな履修科目はなかったはずですが」

 コーデリア・セイジクラウン先生が私を見て言った。

「そこまでしたら、魔法士団ではなく救護隊になりますからね。ですが、覚えておいてください。騎士団員はデイパックを持ちません。魔法士団のみが持ちます。そして、近接戦闘を行う騎士団員は怪我をしやすく、多少の怪我なら応急キットを持っている魔法士団員に手当てをしてもらえばいいと考えています」


 はぁ~?

 ……いや、気持ちはわかるよ?

 私だって重いし動きが鈍るデイパックを背負って鎚矛を振り回したくないし、なら持ってる人から借りればいーじゃんという思考回路になってもしょうがない。

 でもさー、魔法士団って魔法で戦う人たちでしょ?

 なんで同じ戦闘員なのに、救護隊の活動もしないといけないわけ?

 しかも、応急キットは自腹でしょ? お高いんでしょ?

 金を取るわよ私なら!


「……ですが、求められたらですし、大怪我をしたときの応急キット程度ではどうにもなりませんし、我々は救護隊員ではなく魔法士団員なので手当てはできない、と回答するように必ず指導されます」


 コーデリア・セイジクラウン先生が、スンとした顔で続きを言った。

 そこまで言ってよ。


 ……って思ったらさらに続きを言った。

「そうは言っても目の前に怪我をした人がいて、応急キットを持っている自分に手当てするよう迫られ断れない場合もあるでしょうから、一番上に入れ、救護隊員ではないことを念押ししてから手当てするようにしてください」


 …………確かに。

 魔法士団って、基本的に低位貴族でおとなしめだもんね。怪我をしているのにスンとして、

「救護隊員と間違えないでくれる?」

 とか言えないよね! 私は言っちゃうと思うけど!


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2026年2月16日 電撃の新文芸より発売
脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。


著者:サエトミユウ / イラスト: とよた瑣織



― 新着の感想 ―
この世界では部隊で戦列組まないで全部混戦なのかな 魔法部隊は中長距離の攻撃部隊のはずだし、近接の騎士だと最前列で怪我しているだと魔法使いを態々抽出して危険な最前線まで行かせ救助させるなんて不効率だし、…
いっそ騎士団要らないんじゃね?普通の兵士と魔法師団のほうがよほど効率も良いと思う。騎士に従者が必要なのはまあ解るけど、それを他の戦闘職に任せたら戦力の低下にしかならないのになあ。 まあ言われたらボコボ…
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