第73話 聖属性の上級魔法がわからないのである
二年生になると、いよいよ魔法の授業が本格化する。
一年生のときは属性によらず魔力だけを的にぶつける訓練が主だったけれど、属性による個別指導に切り替わる。
希少属性以外はそれぞれその属性が使える教官がついて基本詠唱、また、それぞれが使ってきた魔法の指導やアドバイス、上級までの魔法についてを教わる。
魔法科については、上級を一発は放てる内包魔力を持っている生徒ばかりのはずなので、卒業するまでに上級魔法を一発放つようになるようにするのだそう。
ただ、魔法科に入っている生徒で上級魔法を一発も撃てない人は今までいなかったし、なんなら入学前から撃てる生徒がほとんど、ということで、卒業のラインはぐぐっと低いのよね。
そんな中での私です。
「……上級魔法って、なんですかね?」
という素朴な疑問から始めますわよ。
私の属性を持つ教官はいないため、コーデリア・セイジクラウン先生が見てくれている。
私だけじゃなくて、シエラもだ。彼女の『緑属性』って、私よりも稀少なんじゃないかって属性だもん。
「魔法科のほとんどの生徒が魔法士団へ入るため、カリキュラムがその目的で組まれていますし、試験も似た内容になります。ですが、魔法科を受験し合格した生徒の中には魔法士団へ入らず別の道……宮廷魔法使いは目指さないでしょうが、研究職に就く生徒もいます。稀にですが。ですので、攻撃魔法以外での上級魔法を使えるよう指導し……属性によっては難しいという場合は筆記試験と代替の上級魔法に当たる特殊魔法を習得することで実技合格としています」
と、コーデリア・セイジクラウン先生が説明した。
ウンウン、とうなずく私とシエラ。
「と、なると、すでにリリス・ヴァリアントは合格点に達しているので、自習してください。シエラ・ウィスプライト、あなたの魔法を――」
「ちょちょちょ、そんな殺生な!」
シエラをマンツーマンでみようとしている先生にストップをかけた。
ハァ、とコーデリア・セイジクラウン先生がため息をつく。
「……ではリリス・ヴァリアント、サッサと進めましょうか。回復魔法で試したいところですが、大怪我を治すとなるとあなたの父親が黙ってないでしょうから、浄化魔法にしましょうか。……この魔石を、浄化できますか?」
コーデリア・セイジクラウン先生が小さな魔石を取りだした。
「やったことないけどやってみまーす。【聖癒】」
ペカー!
と輝き、魔石が魔石じゃなくなった。
「はい、上級魔法クリアですね。さて――」
先生がかまってくれない!
思わずふくれっ面をしたら、コーデリア・セイジクラウン先生が再びため息をついた。
「リリス・ヴァリアント。聖水では魔石を浄化することはできないのですよ? それを浄化できるということは、間違いなく上級魔法と考えていいのです。……それと、上級魔法程度、皆クリアしています。シエラ・ウィスプライトをいつまで待たせる気ですか」
「あ」
周囲を見たら、全員自主練しているわ。
そういえば、頼れる我がパートナーも上級魔法程度、軽ーく使えるわよね。失念していたわよ。
「す、すみません……。シエラも、ごめんね」
シエラが苦笑して首を横に振った。
「リリスは魔法使いの家ではなかったから知らなくてもしょうがないよ。――ではいきます。生命の息吹よ、我が魔力を糧にその力強さを見せよ――【新緑促進】」
シエラが杖を持ち、雑草に向けて詠唱すると……。
「うわ、すごい」
ワッサーと雑草が生い茂った。
「いいでしょう、合格です」
コーデリア・セイジクラウン先生が軽くうなずいて合格を告げた。
……うん。確かにみんな軽く唱えて先生も軽く合格を言い渡しているね。
「あー、恥かいたわー」
「しかたがないって」
終わった後に猫背になったら、シエラに肩をポンポン叩かれた。
「……にしても、シエラは魔法士団に入らないんだ? 研究職なの?」
「あー……うん。魔法士団は入らないかな! 迷ってたけど、先輩とかに話を聞いたかぎりじゃ私には無理みたいだから」
シエラがキッパリと言い切った。
だよねー。シエラって、フレイヤ以上にお嬢様感があるもんね。野営とか無理そう。




