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第75話 終結

 ダニエマルカムは何十年以上も今の稼業を続けているが、巡洋艦の艦橋まで敵に突入されたのは初めてだった。しかも単独だ。命知らずなのか、何か策があるのか。


 ただ女神と言われる装備があれば、単独で艦橋を制圧できるかもしれない。何度も張りなおせる物理結界と強力な武器を兼ね備えていれば、一度に10人を相手にするのは可能だろう。そもそも艦橋の防御結界を突破できるだけの装備なのだから。


 となると下手に動いて、こちらにも犠牲者が出てはかなわない。


 そう思ったダニエマルカムは丁寧に対応することにした。


「まぁ女神さんも落ち着きなって。さっさと降伏してくれりゃあ、安全は保障するぜ」


 そういいながらもダニエマルカムは艦橋内の布陣を確認した。


 自分の正面に女神がいて、その横にはダルカムとハリカムを含んだ5人の主操作手がいる。そして艦橋前方にいる5人の補佐手は女神の背後にいる。要は女神さまは10人に囲まれているのだ。


 そのうち本人とダルカム、そしてハリカムは個人用結界を装備している。さっきの空中戦でみた女神の機関砲の威力だと数発で撃ちぬかれそうだった。二人と目があったが、まだ無理をするタイミングじゃないな。


 一方のメグは、少し威圧感を感じていた。


 当たり前だった。たった一人で敵の巡洋艦に殴り込みをかけるなど危険極まりない。


 そして自分の後ろには5人の帝国兵がいるが、見ることはできない。


 立ち位置を間違えたのに、今さら気が付いたのだった。


「何を言っているの。マグザールが絡んでいるのを知っている人間を生かしておくわけないでしょ」


「おいおい、酷い言われようだな」


 俺たちだって、そこまではするつもりはねぇ…


 そう言い返そうと思ったダニエマルカムだったが、さっきから違和感が無視できなくなってきた。そう言えば、先ほどの国王との念話に割り込まれたときも違和感を感じていたのだ。


 ああ…分かった


「一つ質問していいか?」


 メグも苛立ってきた。

 さっさと諦めてほしいのだが… 


「時間稼ぎしても無駄よ」


「ちげぇよ。どうして俺の名前を知ってるんだ? 俺はカムールと名乗ったはずだぜ」


 意外な質問に、メグは一瞬答えが出てこなかった。


 いや、本部から教えてもらっただけだが、それが何なのだ?


「どうしてって… 本部に問い合わせたからよ。宮殿で戦ったときにお前の写真を撮らせてもらった。それを送ったらマグザールのダニエマルカムと教えてもらっただけよ」


 なんだって?

 今、なんと言った?


 ダニエマルカムは返答を聞くと、頭が真っ白になった。いや、なりかけた。


「いや、ちょっと待て。本部に問い合わせたって言ったな?」


「連絡を取り合っているから写真を送ったら教えてもらっただけよ。地球独立戦役でウェンジン国の副司令官だって特定してもらったのよ。それがどうしたの?」


「連絡だと? この星系の周囲10光年には文明星なんか一つもないはずだ。いや最低でも50光年はあるぞ。通信なんかできないはずだ!」


 ダニエマルカムは必至で否定してみたものの、地球での役割まで言い当てられていてはごまかすことはできないのは分かっていた。


「何を言ってるの? この星に到着したときからずっと連絡を取りながら動いてるわよ。もちろん対結界破壊弾も飛行艇も、そして戦車についても報告済みよ。今頃ではマグザール討伐隊が出発するころね」


 メグはなんとなくわかってきた。


 要するに隠密行動をしているつもりだったのだろう。それがマグザールが絡んでいることや最終決戦で戦車が登場したことなどは報告されてると知って慌ててるのだ。


 ちなみに最後の討伐隊はメグのでっち上げだが、いまごろ討伐隊や調査団が編成されていてもおかしくはない。


 だから無謀ともいえる突撃ができたともいえる。万が一自分からの報告が途絶えたとなれば急遽編成されるのは間違いなかった。いや、これはメグの願望かもしれない。


 一方のダニエマルカムは誰ともなく呟くだけだった。


「宮殿の時から、すでに…」


 初期計画では、自分たちの関与が女神に、つまり保護管理局にばれたら即座に計画中止となっていた。マグザールの悪名はとどろいていたので、ばれないことが第一条件なのだ。


 つまり宮殿のときに中止にしておけばよかったのだ。それを自分が欲張ったために… あと少しで帝国を乗っ取れそうと考えた自分が馬鹿だったのだ。


 再びダニエマルカムはダルカムとハリカムを見た。

 二人とも、首を振っていた。こりゃ俺と同じ意見だな。


「そうか、わかったよ」


 そう言うとメグを睨むように見た。


 メグは、真正面から見つめられて居心地が悪くなってきた。一体何が分かったのだ? 

 機関砲を握りしめる手に力を入れると、もう一度すごんで見せた。


「何をどうするの? はっきり言いなさい!」


 ダニエマルカムも大きな声で、はっきりと返事をしてきた。


「ああ、作戦中止だ。諦めるぜ」


 そのまま、ダニエマルカムは艦橋内の通信手に伝えた。


「全部隊に作戦中止を通知だ」


 通信手は「はっ」と簡潔に答えると念話を始めた。


 メグは重要な点を確認した。


「本当に撤退? 地上の戦車部隊も中止?」


 ダニエマルカムは、面倒くさそうな顔をしながら答えた。すでに作戦中止になったのだから、さっさと終わらせたいのだ。なのに細かいことを聞いてくるのか、と。


「ああ、わかってるさ。通信手、戦車部隊に連絡。戦車部隊は作戦完了と伝えろ。そして契約完了だともな。ご苦労さんと言うのも忘れるなよ」


 通信をしている間に、メグはサルマン国王に報告した。


「そちらの連絡が終わったらサルマン国王が話がしたいとのことだ。私では公開念話での通話は難しいので、そちらに頼みたい」


 そんなことまで頼むのか?


 と言い返そうとしたダニエマルカムだったが、一度にすべてを片付けるほうが楽だと思い直して了承することにした。


「しかたねぇな。おい通信手。次は公開念話だ。あっちの国王と繋げるぞ。ああ、それとキリアムス皇子にも繋げろ」


 ほどなくしてサルマン国王がメグの視界に入ってきた。ガルドとルミナスにも視界には見えないが念話に参加できた。それと視界にはもう二人が写りこんだ。そのうち一人はキリアムス皇子だろう。もう一人は将軍か。王女様を救出したときに見た記憶があった。


「あー、俺の名前はカムールだ。そしてこちらは…」

「保護管理局の派遣の女神だ」


 メグが自己紹介した。


 そのあとはサルマン国王とキリアムス皇子がそれぞれ自己紹介をした。


「さてとだ。全員集まったところで報告がある。今回の作戦は撤収となった」


「なんだと!」


 キリアムス皇子が声を荒げた。


「まかせろと大見得を切ったじゃないか。それが念話の一つで撤収の報告だと?!」


「すまねぇな、キリアムス皇子。状況が変わったんだ」


「裏切ったのか?」


 サルマン国王がしびれを切らしたように会話に入り込んだ。


「このまま戦いを続けるたいか?」


「まー、まー、国王様。俺たちは平和的にクロクムス帝国の補佐をしてただけで。ただ今回の戦いでは星間条約の範囲をちょっとばかり逸脱してしまってな。それをこの女神さまに指摘されたっていうわけさ」


 メグはため息をついた。何か茶番劇でも見させられている気分だ。


「何を言っているのやら。お前らマグザールの存在自体が条約違反だろうが。今すぐ撤収する条件で見逃してあげると言ってるの。キリアムス皇子も彼らとの共謀罪で問われることになるわよ」


 キリアムス皇子は、いきなり共謀罪などと言われ混乱してしまった。


「何の話か訳が分からない! 我が帝国はアルムズイコ星系と星間条約を交わしただけであり、今回の進行も…」


 メグはキリアムス皇子の言葉を遮ると言い放った。


「だから、そんな星は存在しないの。あなたたちは騙されたの」


 キリアムス皇子が言葉に詰まった一瞬のスキをダニエマルカムは見逃さなかった。


「それでは俺たちはこれで撤収するぜ。女神さま、後の説明はよろしく!」


 その勢いのまま部下たちに撤収の命令をてきぱきと伝えると

「女神さまも、このまま一緒に撤収しますかい?」

 と嫌味っぽく伝えるのも忘れなかった。


 いつまでも女神さまが船内にいては邪魔なのだ。


 失敗したのだから、さっさと次に切り替えたいのだ。


 * * *


 それから一時間もたたずに軽巡洋艦と二隻の武装輸送船はアルラティア星を離れ、ダニエマルカムの軍勢は撤退した。どうも手勢全員が軽巡洋艦にいたようで、とても素早い撤退だった。


 おそらく討伐隊が来る前に、できるだけ早く逃げたかったのだろう。


 一方、戦車隊は戦車乗りも含めてすべてが置き去りだった。

 ただ星間条約にのっとり丁重に扱うようにと言い残して。


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