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第74話 突撃

 メグは目の前で行われている砲撃戦を見守ることしかできなかった。


 女神装備には結界が装備されているとはいえ、嵐のような強烈なブラスター弾の中に飛び込むのは無理なのだ。横から巡洋艦の対空砲台に向かって機関砲を叩きこんでみたが、すぐに2台の飛行艇が邪魔をしてきた。やすやすと攻撃はさせるつもりはないようだ。


 何度か飛行艇を振り切っているうちに、カグヤ号の砲台が被弾してしまった。


『修復限度を超えました』


 念話と同時に、カグヤ号は敵の巡洋艦から離れていった。


 冷静に考えれば、小さなコルベット級の艦船が軽巡洋艦に対して強襲するのは無謀だったのだろう。だが、そんな悠長なことを考えている暇はなかった。


 敵船が再び岩星弾の発射準備を始めたのだ。


『砲台の修理はどう?』


『無理です。船外作業が必要です』


 敵艦を叩くのは無理そうだ。では、どうする?

 さっきのサルマン国王の念話では防御は限界と言っていた。


『とにかく地下要塞を防御して』


『了解』


 カグヤ号は敵船の真下に移動すると、結界を展開した。

 その直後に岩石弾が投射された。


 カグヤの結界は簡単に破られ、さらに国王の結界も突き抜けて地上に2発が到達してしまった。心なしか結界の強度が下がった気がする。戦いの連続で国王の疲労がたまっているのだろう。


 こうなったら…


 メグは自分の持っている装備を確かめた。


 まだ戦うための武器はある。

 自己鍛造型突撃長柄武器。通称、突撃ランス。


 見た目は中世ヨーロッパで使われていた槍のような形状をしている。馬に乗った騎士が片手で持ち、敵に向かって突撃するときに使うランスに似ているから、そう呼ばれるようになった。


 結界を破壊するための成形爆薬弾を連続して自動鍛造することができ、多重結界を破るための武器だ。さらに突撃ランスにも結界を展開することが可能になっており、敵の結界展開を阻みつつ突撃できるのだ。


 成形炸薬弾が物理結界へ効果があると分かったときから開発が始まったのだが、最近になって製法が確立された武器だ。


 新しい武器だけに色々な使われ方が提案されているが、どれがもっとも効果があるのかは試行錯誤している段階だという。


 武器換装。


 重機関砲を空間収納に収納し、代わりに現出した突撃ランスを右手に持った。


 気が付くと、敵巡洋艦の目の前に浮かんでいた。

 一人の人間が相対する相手としては巨大な戦艦である。


『ナギ! 合図と同時に誘導弾発射!』


「わかりました。が、何をするつもりですか?』


『決まってるわ。突撃よ。誘導弾で敵の注意を引き付けて』


『そんな危険な』


『分かってるわよ。じゃあ誘導弾発射!』


『発射します。ちなみに、これで残弾ゼロです』


 カグヤ号から6発の誘導弾が発射され、それぞれ別の軌跡を描きながら敵巡洋艦に迫った。当然、誘導弾を撃ち落とすため激しい対空砲火が敵船から撃ち放たれた。結界がないのだから、当たれば被害はでかい。向こうも必至だろう。


 一発目の誘導弾が破壊された。

 すぐに二発目が爆発した。


 メグは突撃ランスをしっかりと握りしめると、敵艦艦橋に向かって突撃した。


 あっさりと艦橋防御用に張りめぐらしていた三重の結界を突き破った。さっきの砲撃戦を考えると他愛もないほど簡単だった。連続して10発の結界破壊砲弾を打ち込んだと考えれば、そんなものかもしれない。


 それだけ突撃ランスの自己鍛造の能力が高い。結界に触れるたびに成形爆薬弾をうちこむのと同じことだからだ。


 もう一つの大きな効果は、敵の結界を破壊した後に自分の結界を張ることだろう。これで敵は結界を展開することができない。多重結界の厄介なところは、全ての結界が破壊される前に張りなおされることだからだ。


 結界を破ったら、最後は艦橋の透明外壁だけだ。

 要は超強化ガラスだ。


 結界に比べるまでもなく、簡単に破壊して艦橋に突っ込んだ。


 艦橋の奥に陣取っている艦長の顔がよく見えた。


 王都の宮殿で剣を交えた相手だから見間違えることはない。


 ゆっくりとメグは艦橋内を見渡した。


 軽巡洋艦の一般的な配置は一番奥に艦長、その前に5名の主操作手が操艦や探知、そして攻撃や防御といった主要操作を行う。さらに艦橋前方には5名ほどが補佐役として通信や情報収集などを担っている。


 この艦も同じような構造になっていた。

 敵は10名ぐらいか。


 ここは大きく出る時だ。


 メグは機関砲に換装しなおして艦長に狙いを定め、腹の底から大声と念話で叫んだ。


「私は保護管理局から派遣された女神だ。諦めろダニエマルカム! お前たちの悪事もここまでだ!」


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