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第71話 女神の戦い

「しっかし、硬いわね」


 つい、メグは愚痴をこぼしてしまった。


 先ほどから敵巡洋艦に機関砲を叩き込んでいるのだが、大きな損害が出ないのだ。

 そして、じっくりと弱点を狙おうとすると相手の飛行艇が邪魔をしてくる。


『どうやら装甲をかなり強化したようです。艦艇図鑑に比べると、少し太った感じですね』


 ヒュン、という風切り音がメグの耳元で鳴った。


 巡洋艦のブラスター砲なので当たってもたいしたことはない。だが、飛行艇の機関銃は対結界弾なので、当たれば結界が壊れる。そこにブラスター弾を当てられると、さすがに危ない。


「あの邪魔なのから片付ける」


 そのまま飛行艇を追いかけ始めた。

 最初に一台を撃墜したのは、かなり幸運だったのが分かった。


 追いかけると逃げるのだ。


 いや、追いかけようと飛行艇に向いた瞬間に相手が回避行動を始めるのだ。適当に撃って外れても巡洋艦に当たれば… と思っても機関砲では装甲を貫けない。


 追いかけるにしても巡洋艦の結界で区切られた空間での追いかけっこでだ。さすがの女神装備の駆動装置をもってしても俊敏性を生かせない。


 思うに、最初に撃墜した飛行艇は機関砲の威力を知らなかったのだろう。いや、まさか女神が持っているのが銃機関砲とは思わなかったに違いない。うかつに撃ち合いに入った途端、機関砲の数発で飛行艇がばらばらになった。


 ならば、追いかけるふりをして飛行艇が巡洋艦の陰に入ったところで、反転。巡洋艦をぐるりと一周して先回りしようとしたが、もう一台の飛行艇に動きを読まれてしまった。逆に何発か食らってしまった。


『敵左舷の攻撃翼に攻撃成功』


 ナギから念話が入った。


『このまま左舷側から攻撃します。回避行動を』


 メグは飛行艇を追いかけるのをいったんやめ、敵巡洋艦の右舷側に回り込んだ。直後に敵艦を覆っていた結界が壊れると、爆発音が鳴り響いた。爆発というより、強烈な振動音といったところか。巡洋艦の分厚い装甲にカグヤ号の念動弾が当たった音だろう。


 単純な質量兵器ではあるが、装甲を破るための砲弾である。さらに念動力を使うことで速度が増している。


 普通の巡洋艦程度の装甲なら貫通するはずだが、この敵艦には通用しない。それでも何発も打ち込み続ければ戦闘能力を失うはずだ。


 結界はすぐに張りなおされるので、何発も打ち込めない。


 だから時間はかかるが、長引かせれば田中局長が何とかしてくれる。時間はこちらの味方だ。マグザールが関わっているならば射手座連合の航空軍が出てくるかもしれない。そうなれば、巡洋艦の一隻など逃げるしかなくなるのだから。


 そのときメグは飛行艇がいなくなっているのに気が付いた。

 さっきから邪魔だった飛行艇が2台ともいない。


 諦めた?

 それとも何かの準備か?


 そんな疑問はすぐに解決した。何かの準備だ。

 舷側に3個の岩石弾が作られ始めたのだ。


 さっきまではなかったから、敵の攻撃パターンが変わったのだ。


『何これ? ナギ、敵の狙いは何!』


 カグヤからの応答は、あまり中身のあるものではなかった。


『ただいま解析しています。岩石弾による攻撃を認めました。攻撃翼でも岩石弾が生成されています。ただ巡洋艦舷側の岩石弾は敵結界自身で阻まれ打ち出せないはずです。狙いはメグになりますが、岩石弾では命中させるのは難しいでしょう。となると敵の狙いは…まだ分かりません』


『そう、分からないのね…』


『すいません。念のため地面の国王にも連絡を入れておきます』


『お願い』


 国王にはガルドから連絡してもらうことになった。まぁ国王軍も上空の戦いは観察しているだろうし、岩石弾は目立つから気がついてはいると思う。


 悩んでいても仕方がない。とにかく攻撃だ。


 岩石弾を生成している、と思われる敵の砲台らしきものに向けて機関砲を打ち込んでみた。そして反撃を食らった。


 巡洋艦から今までの倍以上のブラスター弾が飛んできたのだ。


 それだけではなかった。

 どうやら小型の岩石弾も発射してきていた。


 ブラスター弾なら多少は当たっても問題ないが、岩石弾を何発も同時に受けると結界が破壊されるのだ。こうも大量に撃ってくると回避する空間すらない。そうなると逃げるしかない。


 もう弾幕と言ってもいいぐらいの密度だ。

 回避するというより退避するしかなかった。


 もう一度、攻撃を。

 そうメグが考えたとき。


 巡洋艦を守っていた結界が消えた。

 ほぼ透明と言えども鬱陶しい結界がなくなり、青空が濃く見えた。


 そして巡洋艦が作り出した8発の岩石弾が地上めがけて落ちていくのが見えた。目標は分かり切っている。国王がいる地下要塞だ。


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