第66話 最後通告
先ほどまで念話が弾んでいた4名が無言になった。
サルマン国王が通信兵に伝えた。
『私が相手しよう。ほかの3名は受信だけとするように』
『了解。相手の音声と映像を繋ぎます』
通信兵が返答すると敵の上半身が視界に映った。王国の3名は初めて見るがメグには見覚えのある姿だ。宮殿で戦った相手、マグザールのダニエマルカムだった。
まず国王が名乗りを上げた。
『私がエルダイズ王国のサルマン国王である。汝の名を聞こう』
堂々とした威厳のある態度は、さすが長く国王を務めただけのことはある。
一方、相手は少し尊大な態度に見えた。
『初めてお目にかかる、私はクロクムス帝国の軍事参謀であり特別宰相、そして今回の討伐戦争の最高指揮官。カムールと覚えていただければ』
『その最高指揮官とやらが何の用だ?』
カムールと名乗った男は、にやりと笑みを浮かべた。
『威勢の良い王様ですな。今の状況を考えれば想像するのは簡単でしょう。降伏の話ですよ。あの熱光線の威力はすさまじかった。だが狙いを外した。撤退戦も見事だった。だが本気の帝国相手では意味がありませんな。地上では戦車隊の進撃と空中からの攻撃に挟まれ動けなくなっている。今は国王の隠れる陣地も特定した。今こそ降伏し、国王と王国兵士の身の安全を考えるときでしょう』
サルマン国王の返答は決まっていた。
『断る。帝国こそ理解したはずだ。王国の底力を。帝国が南大陸から撤退するまで、我ら誰一人として諦めぬ』
『それは残念な返事ですな。国民の生命を考えればこそ、和平を結ぶ時だと。国民の安全については保障しましょう。食料も十分に提供しましょう。今こそ平和を取り戻す貴重な機会と考えますよう』
ここにきて帝国の総指揮官とやらの物言いに我慢できなくなったのは、メグだった。
『勝手に侵略を始めた国が平和を取り戻すとかふざけないで!』
いきなり二人の会話に入り込んで、啖呵を切ってしまった。
これに一番驚いたのはサルマン国王だった。どちらかと言うと、いや、かなりおとなしいと思っていた女神様が、いきなり怒り心頭で会話に入り込んでくるとは予想外だった。一方、カムールと名乗った男は、意外と冷静に受け止めていた。
『おや、もしかすると女神殿ですかな?』
『そうよ。私はサジタリウス星間連合保護管理官、派遣の女神よ!』
『これは意外な方の登場ですな。もしかして先日の王宮でお会いした女性ですかな? あの時はお互い挨拶できず失礼いたしました。確か、一方的に攻撃してきたかと』
『うるさい!』
メグも自分が怒りだした理由が分からなくなっていた。おそらく昔のいじめっ子を思い出したのだろう。あの男子に似ているのだ。耳障りのよい言葉を適当に繋げて人の感情を逆なでする。そんなところがそっくりだ。
ダニエマルカム、いやカムールと名乗った男も地がでてしまった。
『女神さん、悪いことは言わねぇから降伏しな。いくら女神装備とはいえ巡洋艦に挑むのはお勧めしねぇぜ。それより噂の女神装備とやらをじっくりと見てみたいんだぜ』
『はぁ? そんなにみたけりゃ目にもの見せてあげるから。覚えときなさい、ダニエマルカム!』
そう言い切るとメグは念話から一方的に離脱してしまった。




