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第52話 帝国の反撃

 戦場の少し後方にある司令塔からキリアムス皇子たちは帝国軍と王国軍の激戦を眺めていた。また各師団には通信兵として1名ずつが配置されており、そこから戦況を受けていた。特に敵王国部隊と真正面からぶつかっている第2軍団には、特に優秀な通信兵を配備していた。


 前線にいる通信兵と司令塔にいる通信兵が視覚共有することで、実際の戦場をそのまま見ることができる。少々詳細すぎるのが問題だが、実際に起きている状況を皇子や参謀が見れるというのは絶大な効果があった。


「今回の王国軍はしぶといな」


 キリアムス皇子が誰に向かってということもなく、呟いた。


「前回の会戦から学んだようですね。優秀です」


 ヤールイコ将軍が皇子の言葉を受けとって答えた。


 敵王国の陣形の周りには、黒鱗騎士がずらりと並んでいた。帝国第2軍の歩兵が敵黒鱗騎士の盾をかいくぐって足に槍を突き立てた。動けなくなった黒鱗騎士は槍が刺さったまま後ろに後退すると、次の黒鱗騎士がとってかわった。槍を突き立てた帝国歩兵は、槍を手放すしかなかった。このまま槍ごと敵まで引き釣り出されたらどうなるか想像するのは簡単だ。


 無念さをにじませながらキリアムス皇子は叫んだ。


「黒鱗騎士が盾で守るとは卑怯ではないか!」


 ヤールイコ将軍からみても、王国軍の順応の速さには頭が痛かった。盾で守るだけではない。黒鱗騎士が魔法阻害を打ち込まれたらすぐに交代するのだ。これでは敵の陣形を崩すのは難しい。前回は遠方からの矢による魔法阻害攻撃だけでも敵陣形が半壊したのだが、これだけ対策されるとは思ってもみなかったのだ。


「いったい、王国は何体の黒鱗騎士を持ってるんだ!?」


 再びキリアムス皇子の声が司令塔の中で響いた。


「人数比で3倍以上あると、甘く見てたようですね」


 ヤールイコ将軍は、再び皇子の声にこたえた。


「いまだに結界も破壊できていませんし、第2軍では荷が重いですな。少しずつ後退させ、帝国第1軍を表に出すのがよいと思われます」


 帝国第1軍は帝国直属の軍隊であり、全軍団の中でも精強な部隊であった。


 北大陸では10年前まで紛争が続いていた。このため魔法の知識や訓練方法が継承されなかったのだ。これを立て直したのが帝国であり、その知識は後ろにいるマントを被った参謀がもたらしたものだ。


 新たな知識や訓練方法により鍛え上げたのが第1軍である。他の軍団は、帝国が北大陸を平定してから参加した属国の兵士たちだった。当然ながら、魔法に関しては熟練しているとはいいがたい。


 たまにすごい才能を持った兵士も現れるのだが、すぐに優秀な兵士は第1軍に抜擢されるので結局第1軍が精強であるのは変わらない。


 そんな第2軍団が、今の王国軍と戦って勝てる見込みは薄いのである。


 キリアムス皇子が通信兵に命じた。


「第2軍に後退の命を伝えよ」


 ヤールイコ将軍が追加の命を加えた。


「左右に分かれて、敵陣形の目の前に突破口を見せろ。第3および第4軍は王国軍の側面を攻撃。このまま王国軍を包囲殲滅する」


 * * *


 悪くない作戦だ。

 そうダニエマルカムは思った。


 皇子と将軍の会話を静かに聞いていたが、この二人が優秀なのは間違いない。将軍は常に的確に状況判断ができる。皇子も少々抜けていると感じるときもあるが、時に鋭い観察眼を見せることがある。


 だが…


「皇子と将軍。少し気になることがありますな」


 ダニエマルカムはもったいぶったように話を始めた。


「何かね?」


 皇子は少し構えたような口調で答えた。作戦に不備があると指摘されるとでも思ったのだろう。


「いえ、王国軍の射撃が正確すぎると感じてましてね。もしかすると空から監視してるのかもやしれませんな」


 ダニエマルカムは部下のダルカルムを促した。


 ダルカルムは空を見渡すために司令塔の前に進み出た。ダニエマルカムの部下の中で探知が一番得意なのだ。しばらく観察していたが、首を横に振って報告した。


「おそらく認識阻害で隠れている者がいます。戦場の真上で、魔力の流れまではつかめないのですが」


「お前が感じるのなら、間違いなく誰かいるな」


 その話を聞いて、最初に反応したのはキリアムス皇子だった。


「そんなのは、ずるいぞ。こちらの動きが筒抜けではないか。我々も飛行艇部隊を出撃させるべきではないか?」


 ダニエマルカムはゆっくりと首を振って、皇子の提案を否定した。


「すでに三台も飛行艇を撃ち落とされたのをお忘れですか? 飛行艇は貴重なのですよ」


 マグザールにとっても反重力装置は手に入りづらい貴重品なのである。その貴重な装置を使った飛行艇を簡単に打ち落とされてはたまったものではない。


「これは我々で掃除するとしよう。お前も来い」


 ダニエマルカムが空を眺めていた部下に命じると、皇子と将軍に軽くあいさつをして司令塔の出口へと向かった。


 やっと体を動かすことができる。しかも噂に名高い女神装備相手の認識阻害戦など滅多にできることではないのだ。そう思うとダニエマルカムは心が躍った。


 司令塔の背後から2台の飛行艇が勢いよく飛び立った。


『ようやく戦えるな』


 ダニエマルカムは腹心の部下であるダルカルムに念話で話しかけた。


『司令塔で監視しなくて大丈夫ですか?』


 心配性のダルカルムは、上司が職場を放棄したのではないかと心配なのだ。


『あの二人がいれば大丈夫だろう』


 なんだかんだ言って、ダニエマルカムは皇子と将軍の能力を高く評価していた。


『それと母艦に探知が得意なのがいたな。そいつも参加させよう』


 相手は女神装備とやらを使っているという話を思い出した。かなり戦闘能力が高いという噂だ。ならば、こちらも万全の準備をするまでだった。


 戦場から少し離れた場所には、マグザール一味を運んできた中型巡洋艦が待機している。そこからもう1機が飛び立った。こちらは二人乗りだ。


『さて、狩りの時間と行こうか』


 ダニエマルカムは楽しそうに会話をしながら戦場の上空を飛び回った。まずは相手を探さなければならない。それはダルカルムの役割だ。探知なら彼に任せるのが一番なのだ。


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