第48話 雑談2
メグの話が終わると、次は艦長とガルドの会話になった。
最近の射手座連合での出来事なんかもネクライス艦長はよく知っていた。メル王女からの緊急連絡への対応が遅れた理由まで知っていた。
10年ほど前の紛争で、いくつかの公国が射手座連合から脱退したのが原因だろうと。
「前は各星には必ず伝道使者が常駐してたんだがな。紛争が原因で伝道使者が何人もやめて足りなくなっちまった。それが原因だろうな」
艦長の説明にガルドは暗い顔になった。
「そうだったのか。10年前に異常気象に襲われたことがあってな。干ばつと洪水が続いた。緊急連絡をしても助けは現れなかったんだが… そんな理由があったのか」
「これからは保護管理局に自動で緊急連絡を通信するようになるって話だ。それをしてるのが、このメグ姉貴ってことだな」
自分のことが話題になったので、メグもその時の様子をガルドに伝えることにした。
「秘密基地で恒星通信装置を設置し終わったら、いきなり緊急連絡が入ってきて。半日かけて発信元を探したらガルドを見つけたの。血がほとんど抜けて死ぬ寸前だったけど」
ガルドがメグの顔を見た。
「こうして、俺は生きて話しているわけだ」
艦長は笑いながら、
「派遣にしちゃ、上出来だと思うぜ」
と冗談めかした。
「それにしても、保護管理局の中身について、私より知ってるのね」
「保護管理局とは、よく一緒に仕事をするからな。それに俺らは貿易会社だからな。情報こそが一番の商品さ」
「なるほどね。実はタビ―貿易会社は、私の第一志望だったんだ」
「ほー、お嬢ちゃんがね。今は、ちょいと危険だからおすすめはしねぇな。戦争屋の真似事が多すぎだ」
「そうなんだ」
メグは、憧れていた会社の実態を聞いて、少しがっかりした。
その一方で、就職しなくて運がよかったのかもという思いも感じた。
「保護管理局なんてのも面白れぇと思うがな」
メグは、思い切って仕事について聞いてみた。
「よく一緒に仕事するという話だけど、どんな仕事ですか?」
「そうだな。星の文明が滅びないよう、上手に発展する手伝いをするのが女神局の最初の仕事だな。今のアルラティア星がそうだな。目標は星の開国だな」
「だが開国した後も管理局の仕事は終わらねぇ。最初に宇宙空港を作るんだがな。空港の作り方を教えるのは女神局で、資材を提供するのは俺らだな。次は貿易するんだがな、普通は売るものがねぇ。なので星の特産品を探すんだが、管理局が特産品を探したりすることが多いな」
メグは、初めて聞く内容ばかりだった。
「でもよ、お嬢ちゃんはいい管理局員になれるんじゃねぇかな」
艦長からの意外な言葉にメグは言葉が出なかった。
そう言ってもらえるのは嬉しいけど、ちょっと唐突すぎる…
「特産品を探すのは簡単じゃないんだ。あんたらみたいに現地といい感じになりゃ、いいものを見つけられるんじゃねぇかな」
「ほう。メル姉は何かいいものでも見つけたかい?」
ガルドが聞いてきた。
「俺もぜひ知りたいな」
艦長も乗り気になった。
「えぇと」
メグは焦りながら、今までのことを振り返ってみた。
「あ、あれだ! 弾力性のある、バネみたいなセラミック!」
あの乗り心地の良かった馬車に使われてた塊のようなバネを思い出した。
「え、マジか!」
艦長が驚いたような声をあげた。
「柔らかいんじゃなくて、弾力のあるセラミックを作れるってか?」
ガルドに確認をするように、もう一度、艦長が聞いた。
ちょっと自信なさげだが、ガルドは頷いて答えた。
「おそらくだが、ザイールの弟子が作ってるやつだ。ずいぶん昔にザイールが自慢してきたことがあってな。もっとも何がすごいのか、俺には全く分からなかったんだがな」
「そりゃな。セラミックは硬くて丈夫で安いんだが、弾力性がない。仕方がないので高価な金属製のバネを使うんだが… セラミックで代替できるとなりゃ、すごい発明だ。いや、こりゃいい話を聞けたぜ」
艦長はすこぶる上機嫌になってきた。
ガルドに体を乗り出して、
「で、どうだい? 俺らと独占契約を結ばねぇか?」
と聞いてきた。次にメグにも、
「お嬢ちゃんも、この星の救世主様になっていただいてだな」
あ、やばい。メグは、大声で反論した。
「ダメよ。そんなこと考えなしに決めちゃ。ちゃんと国王と相談して決めないと」
きつい顔でメグは艦長を見据えた。
「そもそもガルドにも私にも契約する権利なんか無いじゃない」
艦長は苦笑いをしながら、言い訳をした。
「すまねぇ、ちょいと興奮しちまった。冗談ってことで許してくれや」
だが、次には真剣な顔になった。
「だが、すごい技術だというのは間違いねぇ。誰かに取られないよう気をつけるんだな」
「そいつは嬉しい言葉だな。覚えておくよ」
「あぁ。俺らと契約するまで待っててくれよな」
そう言うと艦長は大笑いした。
艦長が笑い終わったところで、ガルドが艦長に質問した。
「俺たちにも独自の技術があるというのを聞いて嬉しいのは確かなんだが。今まで見た限りでは、射手座や地球のほうが技術が発達しているのに、なぜ弾力性のあるセラミックを作れなかったんだ?」
「ふむ。まぁ俺が思うに、たまたまだな。セラミック加工には魔法が必要だが、地球では魔法が使えねぇ。で、射手座連合は魔法が発達しているから、すぐに飛んで行ってしまう。弾力性のあるセラミックなんか必要と思わなかったんだろうな」
「つまり中途半端な俺らの星だから出来た技術ってことだな」
ガルドの理解の仕方に艦長は、にやりと笑った。
「両方のいいとこどり、って考え方もあるがな」
ガルドは、また妙なことを考えついた。
「ということは、せっかくの技術も使われないかもしれないのか?」
「うーん、それはねぇと思うがな。例えば、あの自動小銃。中にはたくさんのバネが使われてる。これがセラミックで代用できるなら、軽くなって構造も簡単になるかもしれねぇ。ようは性能次第だな」
メグは意を決して、自分の意見を述べてみた。
「不便って意外と感じないから。でも一度でも便利さを知ってしまうと戻れないから、使われないってことはないと思う」
艦長が、メグにサムアップしてくれた。
「おー、いいこと言うね。気に入ったぜ」
一方、ガルドはだいたい予想がついた。
「メル姉は、よっぽどあの馬車が気に入ったんだな」
「だってねぇ。最初はカチカチの馬車に二日間も揺られて疲れ切ったところで、あのふわふわの馬車でしょ。寝ながら移動できるなんて幸せだな~って。それが忘れられなくて」
「せっかく感動して聞いてたのによ。よく寝れた話だったのかよ」
そう言うと、また艦長が笑った。
つられてガルドもメグも笑った。




