第47話 雑談1
女神装備の盛り上がりが落ち着いたところで、今まで一度も話さなかった意外な人物が手を挙げて、話始めた。
テルメール王女だった。
「もしよければ、商人の方々も食事をご一緒はいかがですか?」
サルマン国王も、「それは良い考えだ」と艦長に頼みいれた。
「もしかして、ビールはあるのか?」
艦長が、そう言い終わるのとほんとど同時に航海士から鋭い声が飛んだ。
「艦長! わかってますよね、納期のこと。それに待ってる仲間がいますよ!」
「ああ、言ってみただけさ」と艦長が小さい声で言い訳じみた返事をした。
だがサルマン国王はひかなかった。
「それでは、食事を提供することは可能でしょうか? 皆さんのお仲間の分も用意させていただきたいのですが」
「それなら問題ないです。それで大丈夫ですよね? お頭?」
航海士が艦長の代わりに返事をした。
「では、さっそく料理を運んできましょう。すいませんが少しお時間をいただければと思います」
「あぁ、そのぐらいなら問題ないだろう。な、航海士さん!」
「夜ぐらいまでに準備して頂ければと思います」
艦長が何かを思い出した。
「あぁ、できれば肉があるとありがてぇ。それと…」
だが艦長が言い終わる前に、サルマン国王が返事をした。
「美味いビールですね。了解しました」
艦長は苦笑いをしながら
「ありがてぇ。あれで士気が上がるからな」
と頭をかいた。
航海士が着陸ポッドから別の箱を持ち出してきた。
「これは採取ボックスです。食材などを見つけたときに集めておくものなんですよ。出来れば上で待ってる10人の分もお願いしたいので、私がついていきますよ」
一方、艦長は椅子にどっかと座った。
「おう、よろしくな。俺は、ここで留守番してるぜ」
「俺とメル姉貴も残ろう」
ガルドが宣言した。
いきなり残ると言われたメグだが、まぁ問題ないかと特に何も言わずに艦長の前の椅子に座った。
ガルドも、椅子を持ってきて二人の前に座った。
ちょうど三人が囲む形になって、真ん中にテーブルを置けばお茶会でも始まるような雰囲気だった。
「では、しばしお待ちください」
サルマン国王と残りの大賢者たちは、少し離れた本体へ向かって移動を始めた。
残ったのはタビ―貿易会社ゼレン号の艦長、ガルド、そしてメグの三人。
「なんだか国王が敬語で話していて、艦長のほうが偉いみたいよね」
メグは沈黙に覆われる前に、何かを話そうと一生懸命に考えたことを口にした。
「はは、すまねぇな。念話が敬語に変換してくれりゃ楽なんだがなぁ」
「そういう気の利いた翻訳はしないですよね」
「ちげぇねぇ」
艦長が笑った。
「ま、国王と言っても、戦乱の中で力をつけた平民上がりだからな。俺らと同じだし、敬語なしで接してもらうほうが気楽だと思ってるだろうな」
ガルドが昔語りを始めそうな感じになった。
だが、次の言葉はメグが予想しなかったことだった。
「で、メグの姉御様。さっきから落ち込んでるようだが… 何か気になることでもあったのか?」
あぁ。やっぱり分かったか。
感情が顔に出るって、よく言われたからなぁ。
そんなことをメグは思いながら、自分の気持ちを話すことにした。ガルドなら、それほど気にならないし…
「こんな大事な時に、みんな頑張ってるときに、派遣で来ただけの私なんかで大丈夫かなって心配になってしまって」
ガルドがかぶりをふった。
「自分は派遣だって、何度か言ってたな」
メグは小さくうなづいた。
「俺には派遣が何だかよくわからん。どこからか来たって話だろ?」
またメグは小さくうなづいた。
「けどさ、そもそも女神ってさ、どこか別の星から俺らの星に来て、また帰るんだろ? それって派遣と同じな気がすんだよな」
今度はメグはうなづかなかった。
「それにさ、もう助けてもらったんだよ。俺もメル妹もメグ姉貴がいたから助かったんだぜ。さらには、こうして武器まで提供してもらったしな」
メグも理解はしている。
自分が、まったくの役立たずではなかったということは。
だが、自分でなくても誰でもできたはずだし、ちゃんと保護管理局の正社員なら、もっと上手に立ち回っていたかもしれない。そういう思いが消えないのだ。
「最後にひとつ。ここは俺たちの星だ。手助けはあっても、俺たちが戦って、俺たちが未来を決める。あまり深く考えずに、できる範囲で助けてもらうだけで十分なんだ。俺はそう思ってる」
自分に期待しすぎていたのかもしれない。
できることを頑張る。
それだけで十分なのだ。
メグは顔を上げて、ガルドの顔を見据えた。
「ありがとう、ガルド。もうちょっと自信を持たないとね」
「あぁ、頼むぜ女神様よ」
ガルドとメグは、自然と笑みがこぼれた。
メグは、少し気が晴れた気がした。
そこに艦長が割って入ってきた。
「おう、この兄ちゃんの言う通りだ。この星にとっちゃ派遣とか関係ねぇ。あんたも立派な女神にならねぇとな」
そう言うとメグの顔をじっと睨むように見た。
「そしてマグザールに仕返ししてぇんだろ」
その言葉にメグは心を貫かれたような気がした。
今までの苦しみは全部あいつらが原因だ、と。
「そうね。マグザールなんかに負けてたまるもんですか!」
メグが椅子から立ち上がって、宣言した。
「おう、同じ地球人同士、あいつらへの復讐を頼むぜ」
艦長も椅子から立ち上がって、メグに拳を差し出した。
「吹っ切れたみたいだな。よろしく頼むぜ、メルの姉御!」
ガルドも立ち上がると拳を差し出した。
メグは、二人に拳を返しながら、自分の打算的な部分に少し嫌悪感を感じていた。さっきまで悩んでいたことが、いざ帰るところが無いとわかったとたんに頑張れるって、けっこう自分が打算的なのだなと。
その一方で、艦長もガルドも、そんな自分のことを全く気にしていないのも分かった。彼らからすれば、理由なんてなんでもいいのだ。出来ることをするかどうか、それだけなのだろう。




