第45話 武器
航海士のクィーブルが後部ハッチから大きな箱を持って出てきた。
箱の下には小さなタイヤがついているので、ガラガラと移動できるようになってる。
「まずは強化剣と盾が100本ずつな」
航海士が箱をポンと叩いた。
艦長が箱から盾と剣を取り出して、掲げて見せた。
「ま、説明はいらないと思うが、一応な。両方とも魔硬化鋼材でできてるので、いろんなものをぶった切れるぜ」
これにはサルマン国王が反応した。
「メグ殿の剣が100本もあるのか」
「あー、私の剣は魔法陣装備だから、ちょっと違うかも」
メグが済まなさそうに国王に説明した。
「そうなのか…」
「がっかりするなって国王様。切れ味は劣るが、こいつもタフで壊れねえからな。いざというときまで頼れる相棒になるぜ」
艦長が助けた。
「芽上嬢嬢は女神装備の一部だからな。誰でも、ってわけにはいかねえのさ」
* * *
航海士が次の箱を持ってきた。
艦長が箱から小銃を取り出して説明を始めた。
「次も一般装備だな。自動小銃50丁とマガジン千個で徹甲弾2万発だ。引き金を引けば弾が出る」
艦長が、一発を近くの木に打ち込んだ。
大きな音とともに、木に小さな穴が空いた。
「こいつは単発での精密射撃に加えて、このスイッチで連射になる」
小銃の脇のスイッチを切り替えると、自動小銃の引き金を引いた。
ふたたび近くの木に撃ち込んだが、今度は数か所ほど穴が開いた。
「5.6㎜弾をまき散らせば敵は動けなくなる。いわゆる制圧用の武器だな」
一般装備とは魔力を全く持たない人でも扱える装備になる。この星は少し魔力濃度が低く、そのため魔力の低い兵士が多いのだ。
ちなみに古い爆薬の代わりに魔力カートリッジを使って弾を発射する。メグが学んだ限りでは、爆薬より威力が勝り、反動が少なく、扱いも楽で、故障も少ないらしい。なので、地球でもよく使われてる銃だ。
サルマン国王が艦長から銃を受け取った。
「これが50丁か… 弾が2万ということは2万人の軍と戦えるということか?」
メグが答えようとすると、艦長が遮った。
「相手が蛮族やらで統率がとれてなきゃいけるかもな。だが俺なら千人相手だって避けるがな。弾なんて20発撃って1発当たればいいほうさ」
「そんなものか…」
国王は、少しがっかりしたようだった。
「ま、保護管理局だからな。あまり強力な武器を渡したら戦いが一方的になっちまうからな」
メグは国王の落胆が理解できた。自分たちの損害を少しでも減らしたいのだ。だが保護管理局としては、片方にあまりに肩入れするのは問題とされていた。虐殺してしまっては、まとまらないのだ。
* * *
短い沈黙を破ったのは航海士だった。
「次の装備を持ってきたよ。一般装備の対物ライフルね」
箱にむき出しのライフルが5丁しまわれていた。それと弾薬箱が12個ほど。
またも艦長はライフルを手に取ると説明を始めた。
「こいつは、さっきの自動小銃よりずっと大きくて威力の高い弾を使う」
さっきの木に一発。
轟音が森に響くと、跡形も残らず木が爆散した。
「今のはブラスター弾だ。いわゆる爆裂魔法を込めた弾が千発。それと対物理結界弾が100発ほどある。ちょいとした戦車や宇宙船なら撃ちぬく力があるぜ」
今度はザイールが手を挙げて質問した。
「対物理結界弾というのは、帝国が使っていたのと同じなのか?」
「帝国が何を使ってたのは知らねぇんだが… メグ嬢は分かるか?」
艦長から、いきなり質問を振られたメグだったが、慌てずに答えることができた。
「同じよ。もっとも帝国のは榴弾で、こっちのほうが命中精度がいいはず。それと効果も高いはずよ」
「それは朗報であるな」
ザイールが満足そうにうなづいた。
* * *
また航海士が箱を持ってきた。今度は二箱だ。
一箱に銃が5丁ずつ並べて入っている。
「おー、今度は魔導装備だな」
そう言うと、ネクライス館長は両手にそれぞれの武器を持った。
「こっちが熱線ライフル。レーザーとか収束光線砲とか言われてるやつだな」
艦長が、森を目掛けてレーザーを発射した。
森から蒸気が上がり、火が燃え上がり始めた。
「おっと、山火事になっちまうな」
もう一つの銃を森に打ち込んだ。
今度は、爆発音が森の中に響いた。
「これはブラスターと呼ばれるライフルだな。プラズマキャノンとかいろんな名前があったけどな。ブラスター弾と原理は全く違うが、似たような名前がついてんだ。よく間違うところだぜ」
別名だとか言われても意味はないのではとメグは思ったのだが、艦長は楽しんでいるようなので、それはそれでいいかと思ったりした。
「両方とも弾丸を使わないが、使用者の魔力を使う。なので魔力放射ができるやつが必要だな。それも魔価が高けりゃ高いほどいいぜ」
「メグ殿、もしかして今まで練習していた魔法と同じ効果なのか?」
珍しくルミナスが口を開いた。
「えぇ、同じです」
「あら、せっかく頑張ったのに」
メグの答えを聞いたルミナスは、少し口を尖がらせて残念がった。
「ごめんなさい。これが来るとは知らずに訓練してしまって…」
メグは、あの厳しい訓練初日を思い出した。
まぁメグも同調で気持ち悪くて大変だったのだが。
「あら、メグを攻めてるのではなくてよ。ちょっとね。努力しなくても同じことができるのが不平等な気がしたの」
「あー、分かる! せっかく覚えた技術が陳腐化しちゃうのって、嫌な感じよね」
「そうなのよ。魔法を極める意味がなくなりそうな気がするのよ」
ネクライス艦長が会話に入ってきた。
「お二人さんの気持ちはわかるが陳腐化はしてねぇと思うぜ」
そう言うと、艦長は森に向かって手を広げた。
手の周りに、いくつもの魔法陣が浮かび上がった。
すべて熱線の魔法陣だった。それが10個。
そこから森に向けて光が伸びると、森の木々が次々と燃え始めた。
「こういうのは、これじゃ無理だろ?」
ルミナスもメグも突然の艦長の行動と威力に驚いて、すぐには声が出なかった。
「ちなみに熱線は物理結界を通り抜ける。つまり、今の攻撃で敵の中枢をたたけば… あとはわかるな」
「これを防ぐ方法はあるのかしら?」
ルミナスが質問した。
「撃たせないように抗魔法領域を上まで広げるか、見たら逃げるかしかねぇな」
艦長が、答えは簡単だろと言わんばかりに首をすくめた。
「物理結界の一種に反射鏡ってのがある。そいつには100%反射されるな。あとは煙や水蒸気があると威力が落ちる。普通の鏡だけはやめとめ。あっという間に溶けちまう」




