第44話 タビ―貿易会社
カグヤ号がナギと名乗ってから5日ほど。
ガルドとザイールは成型爆薬兵器の開発に、そしてルミナスたち魔法部隊は新魔法の習得に明け暮れていた。そのあいだ、メグはサルマン国王の相談相手になったり、テルメール王女の話し相手になっていた。
本当は王女に簡易版の豊穣の祈りを教えたかったのだけれど、メグは豊穣の祈りを使えない。ナギに調べてもらって、一般的な知識として豊穣の祈り原理を教えたりしていた。
そして、今日はタビ―貿易会社の輸送船が到着する日だ。
メグたちは神殿から十キロほど離れた空き地に集まっていた。メグ以外には国王と元勇者と呼ばれた人も一緒だ。
しばらく空を眺めていると、平べったい丸い形の着陸ポッドが降りてきた。
かなりの速度で大気圏に進入しているにも関わらず、静かに航跡も残さずに現れたのには、メグも驚きだった。かなり運転が上手な人たちに違いない。
真っ白いポッドがメグ達の目の前に着底した。船体にはトラ猫の模様が描かれている。かなりかわいい感じだ。
着陸艇後部のハッチが開いた。かなり大きな扉だ。さすが輸送艇ということだろう。そこから二人ほどのタビ―貿易会社の社員が降り立った。
一人はひげだらけのごつい男性。もう一人は眼鏡をかけた少し細めの男性。そして二人ともカーキ色の戦闘服姿だった。迷彩柄でないが、傭兵という言葉がぴったりの姿だ。
「おう、お待たせ。ここがエルダイズ王国であってるよな」
ひげだらけの男がメグに声をかけた。
気が付けばメグだけ他の5名から二歩ほど前に出ていた。それでメグが代表者と判断したみたいだ。
「はい、間違いないです」
商社マンを想像していたメグだったが、まったく違う風貌に動転してしまい一息遅れて返事した。
「あんたは?」
「私は第5保護管理局の保護管理者の芽上です」
そう言うと、自分のネックレスを渡した。これがIDになっている。
ひげの男性はネックレスを受け取ると、目の前にかざした。
これで追記専用の思念カプセルを見れば、メグの所属が確認できるのだ。
「おう、確認できたぜ。俺はタビ―貿易会社の第12船団ゼレン号艦長のネクライスだ。そしてこいつはクィーブル。航海士だ」
「よろしく、お嬢ちゃん」
航海士があいさつした。意外と紳士的な雰囲気だ。
サルマン国王が一歩前に出た。
「私がエルダイズ王国の国王、ソロモンだ。今回の援助について感謝の意を表したい」
「おう。こっちこそよろしくな。こんな言葉遣いしかできずに、すまんな。荒事を治めるのが仕事でな。こんなになっちまったよ」
艦長が大笑いした。
「もちろん構わない。それより武器を運んでいただいたという話だったが…」
サルマン国王が少し不思議そうな顔をして確認した。
確かに着陸艇ポッドは小さくて、大量の武器が入るようには見えないのだ。
「おう、間違いないぜ。ちゃんと小さな軍隊分ぐらいは持ってきたぜ」
「もしかしてレッド案件ですかね?」
艦長に代わって航海士が聞いてきた。彼らからすれば保護管理局が認めれば貿易相手になるわけなので、興味があるのだろう。
これにはメグが答えることにした。
「そうね。ちょっとばかり大トラブル発生なのよ」
「てことは、どこぞやの外星勢力とドンパチということですね」
艦長がひげを撫でながら、腑に落ちないようだった。
「こんな星域でレッド案件なんて珍しいな。どんな奴らか聞いていいか?」
メグは少し考えてから答えることにした。秘密にしておく必要も感じられなかったし。
「マグザールよ」
艦長と航海士の反応に、メグは驚いた。
「なんだと! マグザールの連中か!」
「いや、やつらならあり得る」
言葉の節々に怒りがこもっていた。
「あぁ、すまねぇな。俺らも、昔にひどい目にあったんでね」
「いきなり侵略されて大変だったのさ」
「もしかして東欧侵攻戦ですか?」
メグの質問に、艦長が不思議そうな顔をした。
「それを知ってるってことは、あんたも地球人かい?」
「日本出身よ。私が小さかったころ、両親が死んだわ」
「そうか、あんたも大変な目にあったんだな」
もう10年以上前、マグザールにより東欧は直接侵略を受け、日本は大気圏外の核爆発による電磁波攻撃を受けたのだ。芽上の両親は混乱の中で命を落としていた。
「俺らも手伝えるなら手を貸すぜ。なぁクィーブル?」
「もちろん! と言いたいところなんですがね。明日には出発しないと遅配ですぜ、艦長」
「あー、くそ!」
「今、襲ってきてくれりゃ返り討ちにできますがね」
「メグのお嬢ちゃん、合戦はいつだい?」
これにはサルマンが答えた。
「今、準備中だ。侵略軍の侵攻を待って、迎え撃つ考えだ」
「情報、感謝するぜ。ちょいと手伝うのは無理そうだな」
「借りを返すのは、またの機会にしましょうぜ」
なんとなく、この船で一番しっかりしているのは航海士なのだなと、メグはぼんやりと理解した。艦長はみんなをまとめる役なのだろう。
「代わりに何か安くしてやるぜ。例えばキネティックキャノンとかどうだ?」
メグには知らない兵器だった
「どんな兵器ですか?」
「よくレールガンとか言われるやつだ。各種砲弾を打ち出すやつで、本来なら戦艦用の兵器なんだがな、それを個人用として改良したやつさ」
すごい言葉が出てきて、メグは返す言葉が出てこなかった。
「艦長、砲弾の説明しをしないと」
しっかり者の航海士が艦長に進言した。
「あー、そうだったな。いろんな砲弾を射出できるんだがな。何よりすごいのが最新の拡散型無慣性砲弾だ。マグザールの宇宙要塞を吹っ飛ばした超光速弾の改良版だぜ。絶対お勧めすの一品だな」
航海士が追加の説明をしてくれた。
「直径2㎞から10㎞の範囲の敵を殲滅できるが、絶対に地面に向けて撃ってはいけない。そういう武器なんだ」
メグは表情で、どうしてですか?と尋ねていた。
「地面をえぐり取って、マグマが露出する場合があるんだ。特に地殻の薄い場所はな」
航海士が脅しのような説明をしてきた。
「あれやると星が死ぬらしいな。地球の大絶滅期ってやつだ」
艦長の言葉も、脅しにしかメグには聞こえなかった。
「その… そんな怖い兵器は…」
メグのささやきは艦長には届かなかったらしい。
「今なら1億EUDでどうだ?」
「艦長、それは安すぎ… まぁ賛成しますよ。ほかの乗組員にもカンパ出させますよ」
「ありがとよ。で、どうする? 今なら安いよ」
「そんな危ない武器なんか絶対に使いこなせないです!」
大慌てでメグは断った。
「そっか。やっぱり無理か」
と言ってネクライス船長は大笑いした。
「じゃ、装備の受け渡しと行きますか。受けてるのは標準装備一式だったな」




