第42話 昼飯2
三人が昼食の天幕に到着すると、すでに良い匂いがあたりに漂っていた。
料理長がメグの姿を見ると、やってきた。
「今日はメル殿に教わったピザというのを作ってみたぞい」
「外を歩いてるときから、いい香りが一杯で、楽しみです!」
「トマトというのが手に入らないのが残念だが、最高の小麦粉、チーズ、キノコ、羊肉、そしてこの山でとれる岩塩で味付けしてある」
「ちょうど新しいピザが焼けたところだ。熱々のを食べて行ってくれ」
そう言うと料理長は、三人をせかすように食堂の天幕に招き入れると、窯から丸いピザを取り出した。目の前でピザを6等分すると、お皿に二切れずつ乗せて三人に差し出した。
どこをどう見ても、ピザであった。
チーズがたっぷりで、美味しそう。
「これが地球の食い物なんだな」
「面白い作り方であるな」
ガルドもザイールも興味津々だ。
「食べ方を見せるね」
メグが左手にお皿を持ったまま、
「手を洗って…」
右手をさっと洗浄して、
「こう食べる!」
ピザを一切れつまむと、パクリと食べた。
とろりと溶けたチーズが、お皿の上に零れ落ちた。
「美味しい~」
大満足のメグだった。
「手で食べるのか!」
そんなメグの食べ方を見て、ガルドは少し驚いた。
手で直接食べるのは、アルラティア星では珍しかったのだ。
「熱ィ!」
さっそく、真似してピザを手で持ったガルドが、小さく手を振っている。
「慣れないと熱いのよ」
「ふむ。熱いと知っていれば対策はあるのである」
今度はザイールがピザを手で持って、食べた。
なかなか口の中に入らず、苦労している。
普通に持つと、ピザはだらりと垂れてしまうので、食べにくいのだ。
「ちょっと、もう一回、食べるところを見せてくれ!」
ガルドの頼みに、メグはピザをもう一口食べた。
「分かったぞ」
「私もである」
二人は、ピザを少し折って持った。
これなら、ピザが垂れ落ちない。
二人とも、パクリとピザを口に入れると、しばらくもぐもぐと食べていた。
「うまいな」
「美味しいのである」
「二枚じゃ足りないな」
「後で追加を取りに行くのがよいであろう」
そんな三人のやり取りを後ろからじっと見ていた料理長が声をかけてきた。
「まだ何枚もあるから、好きなだけ食べてくれよな」
「はーい!」と返事したのはメグだ。
「後でルミナスの所にも持っていこう」
* * *
昼食が終わったあとも、三人はしばらく食堂で雑談を続けた。
メグは、ピザの後はコーヒーが欲しいな、などとぼんやりと考えていたのだが。
「そういえば、ルミナスたちに教えたのは、どんな魔法だい?」
ガルドは意外と魔法に興味があるのだ。
「一つはレーザー光線っていう光を収束させる技術。もう一つは、プラズマっていうのを作って、打ち出すやつ」
「レーザーってのは、何だい?」
「プラズマとは何であるか?」
ガルドとザイールが同時に質問した。
「うーん、実は説明が難しい。というか自分もよくわかってないんだけど…」
メグは湊葉大学校では使い方も原理も両方とも習ったのだが、原理のほうは忘れてしまっていた。正確さより分かった気になる説明を考えることにした。
「焚火って、近づくだけで熱いでしょ? でも焚火から離れたら熱くないのでしょ? だから強烈な光を真っすぐ遠くまで飛ばす魔術がレーザーよ」
「で、どうやって収束させるんだい?」
うーん、さすがに説明が足りなさすぎるか…
ガルドの指摘にちょっと慌てたメグであった。
「えっと、空気中の二酸化炭素を圧縮しつつエネルギーを加えると、ええと、電子が…そのあの…励起して光を出すので、それを真っすぐに合わせて光が収束する…みたいな?」
そんなメグをみて、ザイールが助け船を出してくれた。
「ではプラズマとは何であるか?」
「そっちのほうが簡単なはず。空気を思いっきり熱っして原子から電子が分離したのがプラズマで、それが何かにぶつかると大爆発するのよ。そのプラズマを魔法の膜で覆って飛ばすだけで、簡単な爆裂効果が出せるのよ」
「ふむ。では原子とか電子とはなんぞや?」
「えっとね… すべての物質は小さな原子からできていて…」
「いや、もう十分聞いたんじゃないかな?」
メグが説明している途中で、ガルドが遮った。
「えー、せっかく話してたのに」
「多分、実際に試してから説明を聞いたほうが早い気がするぞ」
そう言ってガルドが笑った。
原理を知ると魔法の効果が高くはなるが、原理を知っていても使えるとは限らない。まず魔法を使って感覚をつかんでから説明を聞くほうが早い場合が多い。
「昼飯もすんだし、メグの船に移動しようぜ」
そういうとガルドが立ち上がった。




