第40話 会議2
マグザールについて考えるだけで、メグの声が少し低く、そして荒くなった。
「あいつらは… マグザールは射手座連合や周辺の星にいた犯罪者が作った組織よ」
サルマン王が、念のため確認の質問をした。
「犯罪者というのは、どういうことだ?」
「文字通り犯罪を犯した人よ。もう100年以上前だけど、死刑の代わりに流刑として小さな惑星に追い払ってたころがあったの。魔力濃度がゼロの星にね。で、ある時、犯罪者たちが反乱を起こして脱走したの。それ以来、あちこちの星を略奪している連中よ」
メグの説明は続いた。
「地球にも来たわ。どこかの地球の地域国家に潜り込んで、大戦争を引き起こしたの。おかげで1億人以上が死んだわ。最悪よ」
「1億人」
サルマン王がつぶやいた。
無理もない。南大陸の国々を合わせても2千万人ほどしかいなかったからだ。
「そうよ。まぁ地球には100億人は住んでるけどね」
「100億人!」
「そう。すごいでしょ。というか変よね。こんなに人が住んでる星は地球以外にないみたい。だけど射手座連合には全部で1000億以上の人がいるのよ」
ソロモン王から言葉は帰ってこなかった。
おそらく、今日の説明で一番の驚きだったようだ。
無理もないかもしれない。南大陸で一番大きな王国だと思っていたのが、宇宙から見れば小さな星の一部でしかないのだから。人口という単純な数字で事実を突きつけられた気分は、あまり良いものではないだろう。
「どう? 宇宙は広いでしょ。そして危険も一杯あるの。射手座連合も、マグザールだけでなくほかの国や帝国と戦争することもあるし、連合内でも競争があるからね」
「で、我々から何を望むんだ」
ソロモン国王が単刀直入に尋ねた。
「マグザールをたたき出す手伝いをしたい。そしてたたき出した後、射手座連合と国交を結んでほしい」
メグの要望に対して、ソロモンは納得できなかったようだ。
「ほんとうに国交を結ぶだけでいいのか? こちらに有利すぎないか?」
「アルラティア星って、地球とアベリオンの間にあるのよね。で、やっぱりこの付近に人が住んでる星が少なくて、ちょうどいい場所にあるのよ」
そう言うと、メグは銀河系での地球とアベリオンを示した。
「だから国交を結んだら、自由貿易港を開いてもらうわ。それと宇宙軍を創設して、その三分の一を供出してもらうことになるわね。そこは地球と同じ条件のはず」
「宇宙軍というのは、こういう船を作るのだな。だが我々は作り方を知らないのだが」
「大丈夫よ。作り方は教えてもらえるから。ほかにも食料を増産したら、輸出してもらうと思う。食べ物が乏しい星も多いのよ」
メグは、田中局長から聞いた話に、適当に自分の考えを混ぜて説明した。自分なりに納得できる話をしたかったのだ。
「もちろん国王と私の上司と直接話をして詳細は確認する必要があるわ」
「分かった。ところで国交を断ることは可能なのか?」
「断れない理由はないわね」
「断った場合、どうなると思う?」
メグは、少し考えてみた。これについては局長からのブリーフィングにはなかったので、自分なりに想像して答えることにした。
「断言はできないけれど、やっぱりマグザールを討伐すると思う。討伐隊を組んで、勝手にアルラティア星に入って、マグザールを捕まえるかたたき出すでしょうね」
「ずいぶんと乱暴だな」
「マグザール相手だとね。好き勝手にさせるわけにはいかないから。だから国交を結ばなくても討伐はしてくれると思う」
「そうか。どちらにせよ結果が変わらないなら、我々には討伐に加わる意思がある。自分の力で安全は確保したい」
メグから、少し力が抜けた。
「じゃあ、基本は合意ね」
サルマンは力強く頷いた。
「もちろんだ。というか、最初から賛成するつもりだったけどね」
メグとしては、えぇ〜という気持ちになった。
なら素直に賛成してくれてもよかったのに…
「それともう一つ確認だ。正式な国交は王国を取り戻した後にしたいが大丈夫か?」
サルマンの質問は当然だった。
法律家は王都にいて、ここにいないのだから。王様一人ですべてを決めてしまうのは無理がある。万が一、不平等な条件が入ってたら大変なので、きっちりと精査する役人が必要だった。
「今は基本合意ということで、覚書を作ってもらうことになってるから大丈夫よ。文面は局長と国王で決めてもらうわ」
それについては、メグも理解していた。
二人の合意というで、握手をした。
アルラティア星には握手の習慣はなかったが、メグが差し出した右手に、サルマンはすっと右手を差し出してきた。
「いいね。これは日本の風習かい?」
「いえ、地球の風習よ。かっこいいでしょ!」
サルマンは笑って、頷いた。
いい感じだ。
ガルドが大きな声であくびをした。
「いや~、長い会議だったな」
そして
「でさ、一番大事なことを聞きたいんだけど、いいかな?」
とメグに尋ねた。
「もちろん何でも聞いて!」
元気で答えたメグに、ガルドは落ち着いた声で聞いた。
「で、マグザールには勝てるんだろうな?」
メグの目が泳ぎ始めた。
「え、も、もちろんよ」
あ、これじゃ誰からも信用を得られない…
それはメグ自身もはっきりと分かった。
「例のマグザールの野郎を捕まえるとか言って失敗したし、ほんとに大丈夫なのか?」
メグの答えは…
「えっとね、増援が来るのが遅くなりそうでしてですね。それにマグザールの勢力もわかってなあくてですね… あの、でも標準兵装はもらえるって話で…」
不安しかなかった。
「おいおい、しっかりしてくれよ、派遣の女神様」
言い出したガルドまで、心配になってきてしまった。
「きっと、大丈夫よ。あんな旧式の武器しか持ってないやつらに負けないわよ。多分…」
メグは、勇気を振り絞って宣言したが、最後は尻つぼみになった。
ガルドが大きく笑いだした。
「ま、大丈夫だろうさ。俺らも手伝う。それに6万の大軍から王女を救出したのを忘れたのかい?」
そしてガルドがメグに右手を拳骨を差し出した。
前にメグが教えたグータッチというやつだ。
メグはガルドの右手を拳骨でタッチした。
「そうよね。皆で頑張ろう!」




