第39話 会議1
ランチの後のデザートは、果物だった。
ナシのようなみずみずしい食感で、乾く季節に最適だった。
「私はマンゴーフルーツが食べたかったなり!」
若干、一人だけ不満を表していた。
「あれは海の向こうの小さな島でしか取れないから、今は無理なんだよ」
サルマン国王がすまなさそうに言い訳をしていた。
「では、皆も食べ終わったし、移動しましょう」
メル王女が音頭をとった。
やはり、豊穣の祈りについて早く話を聞きたいのだろう。
サルマン国王が立ち上がると、近くの警備隊長に告げた。
「これから皆で森の散策に出る。森に誰も入れないように。夕食には戻る予定だが、戻らない場合は連絡する。では出発としましょう」
サルマン王の後を、テルメール王女、ルミナス、ザイール、ガルド、アルミダ、そしてメグの6人が続いた。森に入り、少し進んだところでガルドが秘密基地まで案内をした。
大きな岩丘のふもとにある洞穴に入り、少し進むと階段が現れた。
階段を上るガルドに続いていたザイールが、不思議そうに壁に触りだした。
「ここから秘密基地に入るわ。壁はたぶん強化した炭化ケイ素のはず」
とメグは説明した。
階段の先は、小さな通路になっていた。右手に入ると、少し広い部屋に出た。
「ようこそ、私の秘密基地へ。今日は、ここで会議よ」
全員が部屋に入ったところで、メグが告げた。
大賢者たちは、用意されていた椅子にそれぞれ腰掛けた。
「それでなんだけど、宇宙とか惑星とか聞いたことある人?」
全員が手を挙げた。
「前の女神さまから少し教わっている」
ガルドが全員を代表して答えた。
「確か、アルラティア星というのは、丸い星が宇宙に浮いているとかいう話だったな」
ザイールも知識を披露した。
「じゃあスクリーンで見せるわね」
メグがいうと、会議室の壁にスクリーンが出てきて、宇宙と一つの青い星が投影された。
「宇宙に浮かんでいる丸い星がアルラティア星ね。そして真ん中に見えるのが南大陸ね」
南大陸は地球の南アメリカ大陸のような形をしている。南北に長く、西側に高い山脈が通っているところまで似ている。大陸の中央部は草原地帯、そして東側は穀倉地帯だ。金色に輝く穀倉地帯が目でも確認できた。
ちなみに北は細い地峡で北大陸につながっているところまで同じだ。ただし北大陸はいくつもの山脈が走り、平地が少ない。南に比べると、厳しい自然環境にあるといえよう。
「この星の上に、みんなが生きているのが分かったかな」
メグは、先生になったような気分だった。
「次は、ほかの星を見てみましょう」
スクリーンに浮かんでいたアルラティア星が小さくなって、今度は天の川が現れた。
「我々は銀河って呼んでるけど、アルラティアではなんて呼んでるの?」
「羊毛の小路と呼んでます」
メル王女が答えた。
「素敵な名前ね。私の故郷では空にある川って呼んでたわ」
「それも素敵ですね」
メル王女が素敵な笑顔で答えてくれた。
「では、ここで質問」
メグが問いかけた。
「羊毛の小路はアルラティアにあるような太陽が集まってできているのは知ってる?」
全員が頷いた。
ここでガルドがぶっちゃけた感じで
「要するに別の星の話だな」
と話の内容をあててしまった。
「前の女神さんは違う世界から来たと言ってたけど、星の説明もしてたし、多分そんなところだろうと思ってたんだ」
「私は、はっきりと言われたわ。女神なんて言ってるけど、同じ人間だって。遠い別の場所から来たんだって」
ルミナスも、すっきりした表情で暴露してくれた。
「ただ国民には星の話はしないでくれと言われてたのである」
ザイールがまとめた。
ただ一人だけ、驚いたような、怒ったような顔をしている人がいた。
「ひどい! みんな知っていたのに私には黙っていたのか!」
アルミダだった。
どうやら、彼女にだけは細かな説明はしていなかったようだ。
「すまん」
ルミナスが最初に謝ったが、アルミダの機嫌が戻る様子はない。
「私も初めて聞いたことばかりだったから、アルミダと同じで驚いちゃった」
テルメール王女の言葉にアルミダは、ぴたりと泣き止んだ。
いや、泣きまねをやめたというべきか。
「そうか、そうか。メルも知らなかったのか~」
「よしよし、これで一緒だね」
メル王女はアルミダの頭をなでなでして落ち着かせた。
「さて、皆が同じ条件になったところで、メグ殿には説明をすすめてもらおうかな」
サルマン国王が場をまとめた。
メグは説明を始めた。
「なんだか、やる気がそがれちゃった気がするけど。また気を取り直して始めるわよ~」
そう言うと、銀河の全貌が映し出された。
せっかく魔法が使えるようになったのに、いまだに3D立体動画やホログラムとかは実現できていないのだ。相変わらずプロジェクターにノートパッド、そしてストロングポイント3D版を使った説明というのは昔と変わらないのだった。
「これが、さっきの羊毛の小道を上から見たところ」
銀河を上から見たり横から見せたりと、3Dらしく様々な角度から映し出した。
そしてメグはオリオン腕弧のあたりをポインターで示した。
「銀河の直径が10万光年ぐらい。渦巻腕が何本も伸びていてきれいでしょ? これが射手座腕、こっちがペルセウス腕、そして真ん中にあるオリオン腕と呼ばれてるわ。で、アルラティア星がここ」
今度は射手座腕のあたりをポインターで示した。
「そして私たちの射手座連合は、オリオン腕と射手座腕にまたがって広がってるわ。射手座連合の盟主のアベリオン星がここね。メル王女の使う豊穣の祈りを作ったのがアベリオン星にいる精霊なの」
「うむむ、地図で見てもよくわからんのだ」
アルミダの呟きが聞こえてきた。
「えっと、アルラティアからアベリオンまで、だいたい光の速度で1000年ぐらい。私の船だと3週間ぐらいの距離ね」
「宇宙にはほかにも国があるのか?」
国王からの質問だ。
「もちろん。すぐ近くにはデュネス星やドルアード精霊国とかたくさんあるかな。」
「地球までの距離はどのくらいか?」
ガルドが質問してきた。
「大体1500光年ぐらい。距離で言えば4週間ぐらいだけど… 地球の周りは、ちょっと訳ありかな」
メグの声が小さくなった。
実際、どこまで説明したらいいのか。そもそもよくわかってない状態ではある。要するに地球の周りは魔力が使えないとされる特殊な星域、オリオン特異星域と呼ばれる場所だったのだ。
「もしかして特異領域の話か?」
国王が確認してきたので、メグはうなずいた。
「その話も前任の女神から聞いていたのね」
国王もうなづき返してきた。
「そう。地球がある場所は魔力が使えなくなると言われる領域の真ん中にあるの。誰もいないと思われてた星域だったのが、20年前に地球が発見されてね。そして10年前に射手座星間連合に加わったの。地球は一番新しい射手座連合の加盟国なのよ」
「その話なら聞いたことあるぜ。確かアルラティア星も魔力濃度が低いとかなんとか」
ザイールだ。
「そうね。ちょうど文明限界濃度ギリギリなのよね」
「そうだったんですか?」
テルメール王女が不安そうだ。
「言いづらいけど、個々の魔力濃度だと豊穣の祈りをささげられる人がいなくなる可能性が高いらしくて… それで文明を維持できなくなるって聞いたわ。だから50年以上も続けてるのはすごいことだと思う」
「まだマグザールの説明がないようだが」
サルマン国王から質問が出た。




