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第33話 帝国参謀

 密かにバルコニーに侵入し、機を見て颯爽と参謀を捕まえて脱出する。

 それがメグの計画だった。


 予想外なことといえば参謀と呼ばれる男が、思った以上に強かったことだった。


 さっきの剣による攻撃は、かなり激烈だった。剣の性能の違いがなければ、受けきれなかったかもしれない。そもそも剣技は苦手な教科だったのだから、さっさと捕まえるという計画が無謀だったのかもしれない。


 そして参謀が右手で持っている|こん棒≪メイス≫には見覚えがあった。

 地球での学校の授業だったかな?


 だが思い出す前に参謀はメイスを振り下ろしてきた。

 メグは剣でメイスを受け流したが、参謀は流れるように右から剣を切り付けてきた。


 メグも剣を流すようにして右からの剣戟に合わせた。剣と剣が交わる甲高い音が響くと同時に、参謀の剣圧が消えた。参謀が剣を引いたのだろう。メグは体勢を崩してしまった。


 そのスキを逃さず参謀はメグの左肩めがけてメイスを振り下ろした。

 はっきり言えば、近接武器で個人用とはいえ防御結界を破壊するのは不可能だ。そう習っていた。ただし例外があって、それが…


 これは避けないとまずい!


 とっさに抜重して右に転がるようにして避けた。

 いや、避けようとしたのだが、十分ではなかった。


 メイスはメグの結界を打ち破り、さらに左肩を直撃した。


 痛い!


 メグは叫び声をあげるところだった。


 が、それほど痛みはない。

 結界がメイスの勢いをそいでくれたのだろう。それに魔力で肉体強化されているのも大きい。


 とにかく距離をとらなければ…


 メグは一歩離れると、ちょっと捨て台詞っぽく

「そんな技術じゃ、追いつくのは無理ね」

 と言うと、バルコニーの後ろの壁を切り刻んだ。


 壁が崩れ落ちたところで、隣の部屋に飛び移ったメグは、剣の代わりに小銃を取り出した。


 そして、小銃から、MHEAT弾(結界破壊弾)を参謀にぶちまけた。


 MHEAT弾とは、爆発魔法カートリッジを使った成形爆薬弾だ。爆炎を一か所に集中させることで、超圧縮効果により液果金属を発射する。これが効果的なのが物理結界だ。かつては炎魔法の使い手だけに知られていた秘術だったが、例のごとく地球人が全部解き明かしてしまったやつだ。


 こんな弾を生身で受けたらひとたまりもない。胴体に大穴が開いてしまえば、治療魔法程度では治すことは不可能だ。捕まえるのが目的なのだから、体の直撃を避け結界だけを破壊するように撃つ。そのつもりだった。


 何発ものMHEAT弾を浴びて、参謀の結界は次々と破壊されていった。だが壊されるのと同じ速度で、結界が再構築されていった。


 メグが感心したような声を上げた。


「あら。思ったより最新式の装備を持ってるじゃない。それも拾ったと言うのかしら」


 参謀が使っていたのは、MHEAT弾対応の最新式の結界装置だ。大きくて強力な結界をひとつ作るのではなく、小さな結界を素早く大量に作るのだ。一つ一つは簡単に破壊されても、簡単に張りなおすことができる。複数の結界を重ね掛けすることで、一つが割られても次の結界で防ぐ。


 男は黙ったまま、いきなり魔法を三発、撃ってきた。


 一発はメグの個人用結界に阻まれた。残りの二発のうち、一発がメグの頭上の天井に、残りは後ろの壁で爆発した。


「こんな狭い部屋で爆裂魔法なんて! ちょっと非常識じゃない!」


 もうもうと立ち込める煙の中からメグが叫んだ。


 参謀は少し笑みが浮かんでいた。

「結界破壊弾を撃ちまくる女性に言われたくはないな」


 そして、再びメイスと剣を構えた。


 メグは、足のキネティックリングの出力を全開にした。今度は機動戦を挑む。


 一気にスピードに乗ると、そのまま参謀にぶつかりにいった。

 これのいいところは予備動作なしで、いきなり動けることだ。どんなに身体強化した人間でも、この動きは真似できない。狙い通り、メイスを振り下ろす前に懐に飛び込むことに成功した。


 だが参謀は思った以上に強かった。


 数度にわたるメグの銃撃のほとんどは結界に阻まれた。破壊した結界を通り抜けた銃弾も、参謀にかわされてしまった。ふたたび参謀がメイスを振り下ろしてきた。


 これを受けてはいけない。

 メグは、右へと回りこんだ。左手に盾があるので右に回り込むと、学校ではしつこいほど習っていたのだ。


 参謀のメイスは空を切り、そのままバルコニーの床に大穴を開けた。


 先ほどからのMHEAT弾や爆裂魔法の影響で、もろくなっていたバルコニーが、とうとう壊れて主塔から落ちていった。幸い主塔を守る結界があるので、破片が地上に巻き散ることはないはずだ。


 これ以上、情報が集められそうにないので、メグは最初の目標である黒幕の確保は諦めた。


 だが参謀のフードがめくれて、顔が出ていた。


「やっと顔を見せたわね」


「ほう。どうやった?」


「ちょっと、そよ風をね」


 銃撃と一緒に、小さな風を巻き起こしていたのだ。

 これで顔写真から人物を特定できる。


 会話の間にメグは思念を飛ばした。


『ガルド聞いてる? 黒幕確保は失敗。今から王女を救出するわ』


 すぐに応答があった。


『やっと出番だな。しかし確保失敗は残念だったな』


『そうね。でも証拠はみつけたかな』


『そいつは良かった。じゃ、予定通りに』


 メグは参謀に

「残念だけど、ここまでね。じゃ、さよなら」

 そういうと、主塔から飛び降りた。そして即座にMHEAT弾をぶっ放した。


 主塔を囲んでいた物理結界が砕け散った。


 結界に引っかかっていたバルコニーの残骸は、結界が砕けると、また地上に落下していった。その下は広場だ。バルコニーの残骸とともにメグは広場に舞い降りた。


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