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第32話 バルコニー

 王女の公開裁判から始まった乱戦が繰り広げられているとき、キリアムス皇子は王宮の主塔にあるバルコニーから戦いを見下ろしていた。横にはヤールイコ将軍がいる。


 上からだと戦闘の様子が手に取るようにわかる。

 ステージ台のすぐそばで、ザイールと黒鱗騎士が現れたところだった。


「あれが黒鱗騎士か?」


 キリアムス皇子にとっては、初めて見る黒鱗騎士だった。


「そうです。ただ王都侵攻のときと、黒鱗騎士の装備が違います」


「どんなところだ?」


「侵攻のときは、黒鱗騎士は両手に剣を持ってましたが、今は剣と盾を装備してます。黒鱗騎士と言っても泥人形ですから、痛みも感じないですからね。防御を捨てて戦いを挑まれたら、普通の人間に勝ち目はないでしょう」


「例の魔力阻害を避けるためか」


「おそらくは。もう騎士というより盾で守りながらごり押しで戦うように変わってますね。対応が早い」


 矢組隊が建物の窓から現れたのが見えた。これから斉射が始まる。


「これで黒鱗騎士も全滅よ」


 キリアムス皇子が嬉しそうに呟いた。


 だが、矢が全て防がれたのを見て皇子は青ざめた。


「そんな馬鹿な!?」


 ヤールイコ将軍は黙ったまま、しばらく観察を続けた。どうやら黒鱗騎士は二体一組で行動しているのに気が付いた。一体が兵士を相手に、そして残った一体が後ろを防御しているのだ。


「どうやら黒鱗騎士は2体チームを組んでるようですな」


「チーム?」


「一体が攻撃を、残りが防御です。やはり魔力阻害を避けるためでしょうが… これは厄介ですね」


 広場のあちこちから帝国兵が駆け付けて黒鱗騎士と戦いを始めた。


「少し混戦になってきたようだな、将軍」


 自分の観察眼が正しいかどうか確かめるため、キリアムス皇子が尋ねた。


「そうですね。少し厳しそうですね」


「そろそろ総攻撃の指令を出すのはどうだ?」


 ヤールイコ将軍が返事をする前に、広場の上で爆炎魔法がさく裂した。


 王宮のバルコニーから広場が見えなくなったが、すぐに煙は排除された。帝国の魔法兵が風を操作したのだろう。帝国も同じ手に何度も食わないのだ。


 将軍は、先ほどの問いに答えた。


「大賢者のザイールとアルミダが2名が出てきましたが、賢者バルガルドがまだです。やつが出てくるまでは我慢すべきでしょう」


「ガルドとは、そんなすごい奴なのか?」


「あの黒鱗騎士を召喚したのがガルドです」


 キリアムス皇子の前下で、帝国兵が一人、黒鱗騎士の盾でつぶされた。


「一体で20名の兵士を相手どれる化け物を千体召喚できる。そういう噂です」


 キリアムス皇子が驚愕の表情を見せた。


「は?! では一人で2万の軍団を相手できるのか?」


「本当にできるかどうか試してみないと分かりませんが、それほど面倒な相手です」


「では、ガルドが出てきたら…」


「その時が総攻撃の時です」


 そしてヤールイコ将軍はバルコニーの奥に座っている人物を向いた。

 日の当たらない陰に座っていたのは、フードを被った一人の男性だった。


「参謀閣下。確認させていただきたい。本当にテルメール王女を殺害しても問題ないのでしょうか」


 参謀と呼ばれた男は、座ったまま、すぐには答えなかった。

 ほんの少しの間の沈黙が、将軍にも皇子にも不快で仕方がなかった。


「南大陸平定に王女が使えるなら利用しろ。使えないなら殺しても構わん。食料はある。心配はするな」


 何の感情もなく、言葉だけが返ってきた。


「了解しました」


 キリアムス皇子とヤールイコ将軍は頭を下げ、同時に答えた。


 その時、バルコニーの入り口から聞いたことのない女性の声が響いた。

「あら、王女をどうするですって?」


 皇子と将軍が顔を上げると、見たことのない女性がバルコニーの入り口に立っていた。


 * * *


 公開処刑作戦の間、この主塔はもちろん、王宮も部外者の侵入は禁止だ。

 だが、目の前にいるのは、少し変わった服装を着て、見たことのない武器を携えた女性だ。


「誰ですかな?」

 将軍が聞いた。


「どうやって入ってきた!」

 皇子も質問をした。


 女性は皇子の質問にだけ答えた。

「簡単よ。そこのドアから入ってきたわ」


「衛兵はどうした?」


「いなかったわよ。職務怠慢ね」


 女性はとぼけた。


「で、どこのどなたかな?」

 フードを被った参謀が、再び尋ねた。


 見たことのない女性は参謀に向くと、剣を向けて言い放った。

「やっと見つけた、マグザールの残党! 覚悟なさい!」


 参謀は笑い出した。


「いきなり何を言うかと思えば。私が誰か知っているのかね?」


「うるさい! こんな旧式の武器を使うのはマグザールぐらいよ」


 女性は、持ってた武器を床に放り投げた。

 ガチャンと金属音を立てて、金属製の武器が転がった。


「王都の外の武器庫で見つけたAK-2Xよ」


 参謀はとぼけた。

「おや、どこで拾ったのかな?」


「帝国軍の野営地よ。どこで100丁も手に入れたのか聞いてるのよ!」


「答える義務はないと思うがね」


「ふん。ひっ捕まえて、全部吐かせてやるわ!」


 その時、ヤールイコ将軍が、女性を目掛けて剣を振り下ろした。

 少し不意打ちではあるが、この状況では仕方がないと判断したのだ。


 ヤールイコの一撃は、女性の剣に阻まれてしまった。

 驚いたのは、不意打ちが通じなかったことではなかった。


 剣が真っ二つに折られてしまったのだ。


 女性が満面の笑みを浮かべた。

「ふふん。この武器の威力を思い知りなさい」


 参謀が一歩前に出た。


「どうやら俺様が相手をする必要があるようだな」


「地球と同じように、この星からたたき出してあげる。覚悟なさい」


 そう女性が言うと、目にもとまらぬ剣戟で参謀に襲い掛かった。


 鋭い金属音がバルコニーに鳴り響いた。


 将軍は参謀の本気の攻撃を初めて見た。そう思った。自分たちよりさらに強化された肉体から繰り出さ

れる剣戟は、早く重そうに見えた。


 四度、五度と、金属音が鳴り響いたあと、女性は攻撃をやめて、一歩後ろに下がった。

 見ると、参謀の剣は何か所か欠けが出来ていた。


 一方の女性といえば、周りに淡く輝く光を纏っていた。

 結界だ。この女性は個人用の結界を使えるのだ。


「あら、私の剣に耐えられるなんて。まぁまぁな剣を使ってるのね」

 そういう女性の剣が少し光っているようにヤールイコ将軍には見えた。


「ふん。結界か」


 その参謀の言葉とともに、参謀の周囲も淡い光で覆われた。彼も個人で結界を使えたのだ。


「いつまでも最先端を独占してると思うなよ」


 参謀は剣を左手に持ち変えると、|こん棒≪メイス≫をどこからか取り出すと右手に持った。

 先端は丸くなった変わった形のメイスだった。


「驚くなよ!」


 参謀が叫ぶと、メイスを振り下ろした。


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