第28話 帝国軍再編
キリアムス皇子が第1から第3軍団を引き連れて、王都に乗り込んだのが昨日。王女との面会も終わり、いよいよ帝国軍の部隊再編を行うことになった。
「皇帝陛下からの勅令により、この俺が総司令に任命された」
ヤールイコ以下、4名の将軍がキリアムス皇子の前に並んでいた。それぞれ、立派な鎧を着用していた。
その後ろには、100名ほどの各軍団の兵士長が並んでいた。
合計400名の兵士たちがいるのは、王宮にある大きな広間だ。王宮の宮殿内に作られた広間は、なかなか豪勢に飾られていた。その中で、まぶしいばかりに磨き上げられた帝国軍の鎧が光り輝いた。
「南大陸で最大の国であるエルダイズ王国の王都攻略は大成功に終わった。今後は南大陸討伐が目標である。侵攻軍の司令官であったヤールイコ将軍は、皇子の指揮下に入る」
ヤールイコ指令が率いた侵攻軍にキリアムス皇子と一緒に進駐してきた第一から第三軍と合わせて、南大陸討伐軍は4つの軍団による編成となった。それと、もう一つの軍団が指揮下に入っていた。補給部隊である。ヤールイコの侵攻軍に常に補給し続けた部隊であった。
「ヤールイコは俺の指揮下に入るが、我が補佐官とする。王都攻略などの経験から、助言などを頼むことになる」
ヤールイコが恭しく頭を下げた。
「各軍団の2万人、合計8万人の兵士をもって、南大陸を平定する」
キリアムス皇子が高らかに宣言した。
それに合わせて400名の兵士が鬨の声時の声を上げた。
広間に雄たけびが充満した。
「なお、王都攻略を担った侵攻軍については、今日から二日間の休みを与える。進撃を開始してから今日までの30日間、休みなく働いていいたからな」
今度は侵攻軍の兵士100名から、喜びの雄たけびが湧きあがった。
* * *
その翌日から、元王国の抵抗勢力による王女奪還の動きが激しくなった。真夜中になると、王宮のあちこちから爆発音が聞こえてくる。
だがヤールイコ将軍の熟睡を妨害することはなかった。もう司令官ではない。今は皇子の補佐官であり、肩書で言えば将軍である。しかも公式には休暇中の将軍なのである。治安維持など、本来なら気にする必要はないのだ。
「また王宮に侵入者だ」
キリアムス皇子が、愚痴をこぼした。
話の相手は、例のごとくヤールイコ将軍である。
皇子が幼いころからの知り合いでもあるので、気が付くとなんでも話してしまうのだ。
「とはいえ、王女のいる主塔は万全なはずなのでは?」
ヤールイコは気持ちを一切入れずに返答すると、朝食のパンを一切れを口にした。やはり王都の食事は美味しい。
「まぁな。あれから結界による防御を追加して、さらに精鋭を100名は貼り付けている。あれを突破するには、軍隊が必要だろうな」
「であれば、ぐっすりとお眠りになればよろしいのでは?」
「夜中に煩いのだよ。しかもだな、昨晩は軍隊のほうでもボヤ騒ぎがあったらしい。そのうちの一か所は武器庫だと。絶対に侵入者の仕業だろう」
またため息を吐くと、皇子はマンゴージュースを飲み干した。
「そして、未だに一人も捕まえられていない」
皇子が呟いた隙に、おつきの従者がマンゴージュースを追加した。
「そもそも、この街はなんだ? 地下街だらけではないか!」
「要塞都市として名高い王都でしたが、迷宮都市と言うべきですね」
「まったくだ。もしかして地上より地下のほうが広いのではないか?」
「王都を攻略した時、市民が誰もいなかったのですよ。地下に隠れていたわけです」
「だが王宮の修復を後回しにはせんぞ」
キリアムス皇子は、自分の決定を変える気はなかった。
「分かっておりますよ。それについては自分も意見を変えました。広大な地下街を調べるより、自分たちで安全な場所を作り上げるほうが楽でした。少なくとも、この建物と主塔の隠し通路は全てつぶしましたから」
皇子が朝食の卵の料理を頬張ったので、少し会話が途切れた。
しっかり食べている皇子を見て、ヤールイコは安心した。これだけ食べているのであれば、心配することはないだろう。
「お前の休暇はいつまでだったかな?」
キリアムス皇子が質問した。
「今日までですよ。明日から、また激務だと考えると憂鬱になります」
今度は、ヤールイコが溜息を吐く番だった。
「で、例の計画の準備は進んでるんだろうな」
「イーグルプラトーでしたっけ? 明日までには詳細を仕上げる予定です」
「明後日の平定軍の到着には、絶対に間に合わせろよ」
「分かっておりますよ。あの方ですね」
「あぁ。休みのお前に頼むのは悪いが、参謀に計画を承認してもらう必要があるからな」
三日後に、約4万の平定軍が追加として到着する。
そこに、帝国参謀が一緒に来るのだ。
王女の公開裁判を餌に、王国の抵抗勢力を根こそぎにする。可能なら大賢者も何人か捕まえる。それが平原の大鷹計画だ。
ちなみに公開処刑ではなく、公開裁判である。これなら処刑をしなくても問題ない。裁判結果を好きに決めればいいのだから。皇子の苦肉の策だ。




