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第23話 王宮

 メグたちが王女奪還班と初めて会合した日の夕刻、メグとマリオン隊長が王宮に忍び込んだ。この二人だけが認識阻害の使い手だったからだ。


 ガルドとザイール、そして残りの4名は後方待機だ。何かがあったとき、いつでも出られるよう王宮の地下通路に潜んでいた。


 メグとマリオン隊長は、庭園の脇にある隠し扉から顔を出した。


「大丈夫。行きましょう」


 メグは、頭に装着したカメラのスイッチを入れた。


「それは何?」


「カメラっていうの。写ったものを記録するの。証拠になるでしょ」


「念視記録結晶があるのに?」


「カメラは光そのものを記録するから認識阻害の影響を受けないからね」


 その代わりにレンズというのを前に向けておかないといけないし、暗いと映りが悪いとか欠点は多い。なので両方を使うのが一番なのだ。もちろん、メグは念視記録結晶も身に着けている。


 ちなみに結晶はガルドが持っている。メグの見た視覚をガルドに送って、彼が結晶に記録する。思念が得意なメグだからできる技だ。何かあっても、ガルドが無事なら証拠は無事だ。


 二人は王宮を囲む城壁に沿って移動した。先日の攻防戦で王宮も被害にあったが、メグが聞かされていたよりは破壊の跡が少ない。思うに王宮が意外と広いからだろう。主塔や宮殿のほかにも、礼拝堂や大勢の兵士が集まることができる集会場、食堂や応接間を備えた建物などがあった。


 そんな王宮の中心部は広い庭園になっていた。


 そして庭園には、掘っ立て小屋のような建物が作られていた。


 ここが、侵略軍の司令部だ。


 掘っ立て小屋と言ったら失礼だったかもしれない。強固な炭化ケイ素を使った3階建てだ。一階が面会などを行う広場、二階が会議室、そして三階が司令などが住む部屋になっているというのが、今まで調べた結果だった。


「ここからは思念会話でいくわよ」


 メグがマリオン隊長に指示した。

 一応だが防音結界も張ったのだが、念のためだ。


 司令部の周りには見張りの兵士が取り囲んでいた。近づかれると結界の効果が下がるし、ぶつかればばれてしまう。


「あんな建物を作るなんて、用心深いわよね」


 自分たちで作った建物なので、秘密の抜け道を心配する必要はない。工兵に頼んで、急ごしらえで作ってもらったのだろう。


 まだ夜は始まったばかり。

 二人して、しばらく様子をうかがうことにした。


「あの女神様、じゃなかった、メグ…様?」


「メグって呼んで大丈夫だって」


「はい、メグ…さん。ひとつ質問してもよろしいですか?」


 メグはうなづいて返事した。


「あの、メグさんは、ガルド殿の恋人だったりしますか?」


 メグは吹き出しそうになった口を慌てて押さえて、何とか答えた。


「いや単なる弟子と先生、じゃなかった女神役と勇者役よ」


 マリオン隊長には、もうメグのことを知らせてあるのだ。メグの能力を知らないと計画を立てられないからだ。


「まぁそうですよね」


 マリオンはさらに続けた。


「メグさんにとって、ガルド様ってどんな方ですか?」


「うーん、考えたことないけど、信頼できる相棒かな」


「そうですか、信頼されてると…」


 マリオン隊長の顔がどんどんと曇ってきて来ている。相手の気持ちがわからないと自負しているメグでさえも隊長が何か抱えてるのが伝わってきた。


「何? 言ってしまうほうが気持ちが楽になるわよ。これから王女様を奪還するんだから、その前にすっきりさせちゃえば?」


「そうですよね。実はガルド様の元気な姿を見ていたら、ちょっと… 怒りがこみあげてきてしまって」


 マリオンが慌てて説明を続けた。


「あ、そうじゃなくて… 私、どうしても許せないんです。王女を連れ去られたことに。ガルド様なら王女様を絶対に守ってくださると信じていたのに。もちろん絶対なんてことはないのはわかってます。でも、さっきのガルド様があんなに元気な上に、能天気で…」


 メグは軽くマリオンの肩をたたいた。


「ガルドは頑張ったよ。戦ったところは見れなかったけれど、私が彼を見つけたときは瀕死だったの。手足に3本の魔力阻害の矢と、腹にも一本。血がほとんど残ってなくて死ぬ一歩手前だったんだから」


 そう。けがは本当にひどかった。

 が、そのあとのことを思い出したメグは、顔がにやけてきた。


「ところがね、手当して最初の3日は寝てばかりだったのに、4日目に起き上がったかと思うとトレーニングを始めたの。そして5日目には剣をふるって森の中を王都目指して歩き始めたんだから」


 ガルドの回復力には驚くばかりである。


「ただ、思ったより王女のことを心配している感じはないわね。それは不思議かも」


 その点に関してはメグも理解できないところだった。豊穣の祈りを使える王女を殺すわけがないと思っているのかもしれない。もっともマグザールなら自分たちで穀物を育てられるから、本当は危ないのだが。


「そういえば、ガルドに恋人や奥さんっているのかしら?」


 メグがマリオンに聞いたが、答えを聞くまでもなかった。


 マリオンは勢いよく首を横に振ると「ずっ〜と一人ですね」とこたえた。


「そんな気がしたわ。でも変よねぇ。顔も悪くないし、態度は落ち着いていて、腕も立つし。ちょっと真面目すぎる気はするけど、モテるわよねぇ。普通なら」


「ですよね」


「でも、王女のことになると、やたらと真剣になるけど。もしかしてガルドって王女のことが好きだったりしない?」


 メグは、今度は核心をついたと思った。

 だがしかし…


「それはないです」


 と、マリオンにきっぱりと否定された。


「逆です。王女様がガルド殿のことが大好きで、いつも追いかけています。ガルド殿は逃げてばかりなのです」


 メグの頭に女の子に追いかけられるガルドの姿が駆け巡った。

 似合わない…


 幸いなことにロリコン疑惑は晴れたガルドだが…


「だからガルド殿がさっさと結婚すれば王女も諦めるかなと」


「それで最初に質問してきたのね。でも私とは何も起こらないわよ。なんか違うのよね」


「そうですよね… 私もわかります」


「それにガルドって50年以上生きてて100歳近いんでしょ? なんか年齢差すごくない?」


 マリオンはぽかんという顔をした。


「え? 年齢なんか関係ないですよね? ガルドも女神さまも何年だって生きられますよね? 愛さえあれば問題ないです。飽きたら別の人と付き合うとか何度だって人生やり直せますよ」


 ああ、そうだった。

 魔力が高ければ高いほど長生きするんだっけ。地球育ちなので、その感覚に慣れてないのだ。

 なので結婚しても子育てが終わると、自然と消滅する家族も多い、らしい。


「ただ王女様がガルドを愛しているかと言われると、ちょっと違う気がします。どちらかと言うと甘えてる感じですね」


 その時、司令部に動きが見えた。


「静かに…」


 マリオン隊長が口を抑える仕草をした。


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