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第22話 抵抗組織

 ランチを終えたガルドとメグは宿に戻ると、地下室へと急いだ。

 少し遅刻したのかもしれない。すでに5名が集まって話を進めていた。


 その中の一人がガルドを見るなり、


「生きていたのか、ガルド!」


 と喜びをあらわにした。


「俺が死ぬと思うか、ザイール!」


 ガルドの返事も、喜びにあふれていた。


「死んだという噂を聞いたが、殺されても死ぬわけねぇよな」


「まぁ死にかけたのは間違いないがな」


 にやりとガルドは笑うと、メグを紹介した。


「俺を死の淵から救ってくれたメグだ」


 メグは、軽く会釈をした。


「森の狩人で、探知が得意だ。そのほかにも治癒やちょっとしたトリックをたくさん知っている。今は、俺の弟子として一緒に行動している」


「初めまして。メグです」


 さっきまでガルドと抱き合ってた筋骨隆々とした男が、あいさつしてきた。


「探知か。そいつはありがてえな。俺はザイールだ。よろしくな」


 次に紹介されたのは、すっと細身で長身の女性のバンだ。


「私は、この部隊の隊長、マリオンだ。よろしく頼む」


 残りの部隊三名も、次々と自己紹介をした。


 マリオン隊長がメグに尋ねた。


「メグ殿。ひとつ確認したい。我々は王女救出の任務についている。とても危険な任務だが、作戦に協力してもらえるということで問題ないか」


 メグは即答した。


「もちろんです。そのために、ここにいます」


 メグの答えを聞いて、マリオン隊長の顔から少し緊張感が消えた。


 そこにガルドが付け加えた。


「メグは認識阻害が使えるぞ。俺も習ったが、今一つでな」


「それはありがたい。使いこなせる兵士が少なくて困っていたんだ。王女の居場所を探るのを手伝ってほしい」


「まかせて!」


 メグはちょっと自慢気だ。やはり頼られると嬉しいのだ。


 ガルドは、今度はザイールの肩をポンと叩いた。


「少し話がある。打ち合わせが終わったら、俺の部屋に来てくれ」


「おう。何でも言ってくれや」


 その時、地下室の入り口をノックする音がした。


「誰だ」


「宿の主でございます。お知らせを持ってまいりました」


「入っていいぞ」


 昨日のやせた宿の主が、地下室に入ってきた。


「伝言でございます。先ほど、新しい侵略軍が王都に到着しました。兵士数は推定で4万人で城外で待機中です。また軍団長と護衛数名が王宮に入りました。服装や扱われ方から、かなり高貴な身分と見られるとのこと。以上でございます」


 一瞬、地下室内が静まり返った。


「さらに4万だと」


 マリオン隊長が絞り出すように声をあげた。


「今の2万弱に対して倍以上の追加とはな」


 ザイールも困惑を隠せないようだ。


「主殿、ご苦労であった」


 マリオン隊長が言葉をかけると、宿の主は恭しい感じでお辞儀をすると、地下室から退室していった。


「くそっ! 初めから情報収集のやり直しか!」


 さっきまで落ち着いたようにみえたマリオン隊長だったが、感情を隠せなくなった。


「仕方がねぇさ。相手も本気ってことだ」


「だな。で、どこまで調べたんだい?」


 マリオンは現状で判明している帝国軍の布陣や王女の監禁場所についての報告を始めた。少なくとも王女は無事であることは確認されていた。


 * * *


 打ち合わせが終わった後、ガルドはザイールと一緒にガルドの部屋へ、そしてメグは自分の部屋へと戻った。


 今朝、王都を散策する前に、新しい部屋に変えてもらったのだ。ガルドの部屋は、地下への階段がある部屋の横。そしてメグはガルドの部屋の真上の部屋になった。二つの部屋には隠し階段があった。


 メグが隠し階段を下りて、ガルドの部屋に入ると、ザイールとガルドの二人ともエールを飲み終わったところだった。さっきの打ち合わせの後、宿の食事処でエールをもらったようだ。


「もう飲んでるの!」


 メグは呆れたような怒ったような声をあげた。


「まぁ、いいじゃねぇか。十年ぶりに親友に会ったんだぜ」


「メグも飲むか?」


 ガルドが今日で三杯目のエールのコップをメグに手渡した。

 メグも、すっと杯を手に取ると、グイっとエールを喉に流し込んだ。


「いい飲みっぷりじゃねぇか。気に入ったぜ!」


 そういうと、ザイールはウィンクした。うん、絶対に悪い人ではなさそう、というのがメグの正直な感想だった。


「それで、メグ。確認だが、ザイールには話してもいいんだよな」


「ザイールは元勇者のひとりでしょ。なら大丈夫よ」


 ザイールが、二人の会話を不思議そうに見ていた。というか薄々気づいていたのかもしれないが。


「でだ。テルメール王女の呼びかけに答えてくれた女神が、メグだ」


 ザイールは、その場で片膝をついてメグに礼をした。


「女神さま。再びの降臨につき、心から感謝の意を表します」


「そんな堅苦しくしないで」


 そういうと、メグはザイールに立ち上がるよう促した。

 心なしかザイールの目が潤んでいるように見えた。


「そうか。テルメールの願いは通じたのか」


「ついでに俺の命も救ってもらったぞ」


 ガルドが笑い飛ばした。


「あのね、ザイールなら知ってると思うけど私は|Critical Task Force《臨時の派遣》よ。たまたま呼びかけたときに、この星にいただけなの」


 ザイールは何を言われているのかわからない、という顔でガルドのほうを向いた。それはそうだろう。自分たちを、この王国を救うためにやってきたはずの女神から、こんな自信なさげな言葉を聞かされるとは想像していなかったはずだ。


「もう女神役はやめるんで?」


 ガルドがからかうようにメグにきいた。


「女神の代わりなんて、無理よ。女神のための訓練もしてないし、装備もないし…」


 そう言いながらも、二人の期待にこたえたいという気持ちも大きかった。いや、二人のためではない。自分のためだ。


 地球でマグザールが行った悪行の数々。

 彼女の古い友人や知り合いの家族も何人か死んでいるのだ。


「でもね。やっぱり、許せない。あいつらの何が目的か知らないけど、絶対に止めて見せるわ。できることなら何でもするから一緒に頑張りましょう」


 そういうとメグは二人の手を取った。

 自分でも驚くような行動だった。マグザールへの敵意だけでなく、やはり自分の女神という立場から自然に出てしまったのだろう。


 とは言ったものの、メグの立場で出来ることは限られていた。今はイエローアラートなので、保護管理局の規定によりメグ本人が表に出て戦うことは禁止されている。


「今は魔法を教えたりするぐらいだけど、裏にいるやつらを洗い出す。二人とも頼りにしてるわ」


「王女の救出も頼むぜ」


「もちろんよ。それと、あいつらが使っている武器がどこから来たのかもよ」


「とにかく忍び込むしかねぇな」


「そうね。隊長の言ってた通り王宮への潜入ね」


 一通り、難しい話が終わったら、ガルドとザイールは昔話を始めた。十年の間、積もった話に付き合わされたメグだったが、意外と退屈しなかった。二人とも話が面白かったのだ。


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