第21話 王都散策
狭い部屋とはいえ、久々のベッドでぐっすりと眠った二人であった。気が付けば、すでに日は上り、あと少しで朝食の時間が終わるところで目が覚めた。この数日は夜明けとともに活動を始めていたのを考えると寝坊と言えよう。
二人して遅い朝食を終えると、今日の予定について話し合った。
「昼過ぎまで暇なのよね。王都を見学してもいいかしら?」
「そうだな。ざっくりと王都の構造を頭に入れるのも必要だな」
ということで、王都を歩くことにした。
宿を出ると、まずは王都の中心にある王宮を目指した。
侵略から10日ほどたち、市民の生活は落ち着いているようだ。子供たちが道を走って遊んでいるのを見てると戦争中とは思えないほどだ。
「王都は3重の城壁で囲まれていて、中心に王宮がある。その外側に政府施設や商人が住む高級街、今俺たちがいるのは、さらに外側にある一番外側の区画。いわゆる庶民が住んでるとこだな」
「つまり私たちみたいな人ね」
「女神さまが庶民といわれると変な感じがするな。とにかく、ここは宿屋や食事処が充実している区画でもある。俺なんかが一番安心できる区画だな」
三つあるうちの真ん中、第二の城壁に到着した。
平地から高さ10mぐらいの壁が続いていた。上には帝国兵らしき人影が歩いていた。
「立派ね」
「ザイールが頑張ったのさ。こいつも含めて三重の城壁で王都は万全の守りを誇っていたのだがな」
「いきなり過去形ね」
「あっさりと物理結界も一緒に攻略されてしまったからな。でも俺は城壁を見ると安心する」
「前に聞いた結界破壊砲弾ね。何とかして手に入れる必要があるわね」
内側の区画に入るには城門を通る必要がある。
だが城門には帝国兵が検問所を作っていたため、中に入るのはあきらめた。城門と言っても、メグたちの目の前にある城門は幅は5mぐらい、一度に4名が通り抜けられる程度の小さめの城門だった。
「こんな城門が500mぐらいごとに作ってある。比較的自由に出入りできるが、一度に大勢が入るには正面の大門を使う。内側区画には礼拝堂や学校など市民が利用する施設もある。見どころが多い区画だ」
「へぇー、学校があるんだ」
「まぁな。前の女神さまから作れって言われてな。王都に住む6歳から12歳までの子供は、誰でも入れる」
「そんな細かいことまで指示されるんだ。なんだか意外ね」
「学校とギルドは作れって言われたのさ」
「ギルドもなんだ!」
「学校は誰もが通う必要がある。そこで人を育てる。魔法適性の高い子供はギルドで技術を学ぶ。国が土地を、ギルドが魔法使いを管理する、と言われたな」
「地球にはギルドはないのよね」
「それは意外だな。どこにでもギルドはあると思っていたぞ」
「だからルオンデ村でギルドに入ったとき、すごくワクワクしちゃった!」
「妙にきょろきょろ見回していると思ったが、それが理由だったのか」
「学校、見てみたかったな」
「残念だったな。普段なら誰でも見れたのだがな」
メグは一息つくと、周りを見渡した。
今日も良い天気で、青い空と白い家並みがよいコントラストになっていてきれいだ。日本人であるメグから見ると、うん、やっぱりヨーロッパの街並みみたいだ。
「でも酷い占領はしてないのを確認できただけでも安心したわ」
「どうする? 正面にまわってみるか。あそこからなら王宮が見えるかもしれない」
「それより、食事はどうかしら? また王都の美味しい料理が食べてみたい!」
「軽く食べるか。あの食事処はどうだ?」
ガルドが指さしたのは、城門の近くのカフェのようなお店だった。
城門の前の広場に面していて、店の前にテーブルが並んでいた。
「悪くないわね」
メグとガルドは、通りに面したテーブルに座った。
ほどなくウェイターがやってきたので、メグはハーブティーのような飲み物、ガルドはエールを頼んだ。
暖かい陽気で、二人は喉が渇いていた。
まずは乾杯、ということで軽くコップを合わせた。
「ふぅー、うまいな」
ガルドは、一気にエールを喉に流し込んだ。
「おーい、お替りだ」
ウェイターがうなづいたのがみえた。
「昼間からビールなんて、この後打ち合わせでしょ? 大丈夫?」
「この程度では酔わん」
ガルドは続けた。
「それに水よりエールのほうが安い」
「え! そうなの!?」
メグは、ちょっと驚いた。
「王都では飲める水は貴重だ。生成水を使うことが多いからな。精製した水は不味い。だからレモンやハーブで味付けをする」
「なるほど、なるほど」
メグは地理の授業を思い出していた。ヨーロッパでは硬水のため飲み水が貴重で、ビールを水代わりに飲むとかなんとか。
「地球は水が豊富なのか?」
「私が生まれた日本はね。でも水よりビールのほうが安い地域はあるって習ったわ」
「確かに山のほうだと水を飲むな」
ウェイターがランチを運んできた。
パンを揚げて砂糖をまぶした、デザートのようなランチだった。
「この店の一押しってやつだな」
「でも注文してないわよね」
「座ったら、注文したとみなすんだろ。よくあるぞ」
「そうなんだ」
一押しらしく、程よい甘さがたまらない一品だった。
ガルドも美味しそうに食べていた。ごつい見た目だが、甘いもの好きだな。メグは確信した。
そのままカフェに座りながら人々が行き来する姿をのんびりと眺めていた二人だったが、昼が過ぎたところで宿に戻ることにした。いよいよ打ち合わせ、である。




