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第16話 山賊襲撃

 メグとガルドが歩き出してまもなく、街道わきの森から狼煙が上がっているのが見えた。


「おい。走るぞ」


 そう言うが早いか、ガルドは猛スピードで走りだした。


「突然、何?」


 訳も分からず、メグもガルドを追いかけて走り出した。


 数分も走ると、さっきの馬車に追いついてしまった。ただし、馬車は車輪が細い轍に挟まって、立ち往生していた。


 馬車の周りには10名ちょっとの人がいた。おそらく乗客だろう。何人かが馬車を持ち上げて、車輪を轍から出そうとしていた。それと二人ほどが道端に横になっていた。


「よお、大丈夫か?」


「あぁ、さっきの二人連れか」


 御者は、ガルドの顔を見て少しほっとしたような声で返事をした。


「見てくれよ、この轍。はまってしまって、動けなくなっちまったよ」


 御者が街道の真ん中にある細い溝を指さした。


「おかげで怪我人が二人ほど出ちまった」


 御者は道端の二人を指さした。一人は足を、もう一人は腕を骨折したようだった。


 メグが嬉しそうに手を挙げた。


「あたし、少しなら治療できるよ」


 ガルドが止める間もなく、メグは治療を始めた。


「そんなことしてもらって。ほんとに構わないのかい?」


 御者はガルドに尋ねた。

 メグは、もう治療に夢中で、聞けそうな雰囲気ではなかったからだ。


「あー、本人がいいって言うんだから、問題ないだろう」


 ガルドは苦笑しながら御者と乗客に言った。乗客たちは口々にお礼を言いながら、メグの周りに集まってきた。治療ができる術士は少ない。しかも無償となると、人の噂になりかねない。隠密とは正反対の行動である。


 一方ガルドは御者と話を続けていた。


「轍を避けなかったのか?」


 御者が、少し言い訳っぽく説明をした。


「それが轍があるのに気がつかんでな。まるで隠してたように思うんじゃ」


 御者の説明を聞いて、ガルドが御者に森を見るように促した。


「おい、あの狼煙が見えるな」


 御者はうなづいた。


「おそらく山賊の合図だ。罠に馬車がかかった、とな」


 御者と乗客たちの体がこわばったのが、離れたメグにもよくわかった。


「ところで俺は、術士5級のガルドだ。あっちのメグはギルドカードでは初級だが実力は保証する。俺たちを雇わないか?」


 四の五は無かった。全員一致で、ガルドとメグを雇うことに決めた。


 報酬がたいしたことなかったのもあっただろう。ガルドが要求したのは、途中の縦街道まで乗せてもらうことと、王都へ向かう商隊に紹介をしてもらうことだけだったのだ。


 * * *


「メグ。思念探知は得意か?」


「得意なのは思念通話のほうだけど、一応……」


 そういうと、メグは治療を中断して、目をつぶった。


 思念通話はお互いが思念波で会話するが、探知は勝手に思念波を感じ取る技術だ。話す声に思念が乗るように、呼吸のような体が発するかすかな振動を探知すると言われている。もっとも、メグは説明が間違っているのではないかと思っていた。なぜかというと、音よりも早く探知できるからだ。


「森の方角。12名ほど集まってる」


「なるほど。確認したよ」


 ガルドが答えた。

 メグも、ガルドと同じように森のほうを見た。

 十人ほどの武装した集団が、森から出てきたところだった。


 距離にして500mほどか。馬車との間は草っぱらで、遮るものはなかった。


「ちょっと、探知が遅すぎたみたいね」


 ガルドが人数を確認した。


「いや、十分だ。他に隠れてるやつはいないということだろう?」


 メグも数えてみた。ちょうど12人。全員で向かっていているわけだ。


「で、どう戦う?」


「私は、戦うところを見られたくないかな」


「だよな。じゃぁメグが前衛、俺が後衛で、いざというときの馬車の守りに入る。それでいいな?」


「問題なし」


 ガルドは手際よく、御者と乗客を馬車の中に誘導した。

 絶対に顔を出すなよ、と念を入れるのを忘れなかった。


 メグは、左手に盾、右手に銃を構えた。


 盾といっても物理結界を自動で張る優れものだ。多少の攻撃ではびくともしない。そして両足には念動アンクレットがある。少しリングに意識を集中すると、ふわりと体が軽くなった。これで念動で飛ぶときの加速や姿勢の制御が格段に簡単になるのだ。


 そして銃には、ゴム弾を使うことにした。


 鎧すら武装していない山賊になら十分との判断だ。それにメグは人を殺すのを避けたかった。日本に生まれ育ったメグにとって、人を殺すのはもちろん人が死ぬところすら見たことも避けたいのだ。


 山賊たちは、かなりゆっくりと近づいてきた。


 おそらく、人数を見せつけることで、こちらの戦意を失わせるつもりだろう。できれば降伏してくれれば御の字だと。


「おい。さっさと降伏しな。そうすりゃ命は助けてやるぜ」


 山賊のリーダーらしき人物が大声を張り上げた。


「それとも、二人だけで、俺らとやる気か!?」


 後ろの山賊たちがゲラゲラ笑った。これも威嚇のつもりだろう。


 メグが大声で返した。


「そっちこそおとなしく降伏しなさい!」


 山賊のリーダーが、驚いたような顔をした。


「威勢のいい姉ちゃんだな。悪りぃことは言わねぇ。おとなしくしるほうが身のためだぜ」


 周りの山賊も、何やら口々にメグのことを言い出した。ベッピンさんとか、魔法職が前に出ちゃいけないぜ、とか。


 普段から容姿のことを言われ慣れてないメグにとって、「ベッピン」などと言われてもどう反応していいか分からなかった。そもそも誰もが相手を褒めるし、本当に自分がベッピンなのかなど分かりはしない……


 ここにきて気が付いた。

 これが初めての実戦だと。


 山賊の一人が、メグに下品な言葉を投げかけた。


「美人の姉ちゃん。今晩一緒にどうだい?」


 メグは銃を構えて、その男を目掛けて銃を発砲した。


 鈍い発砲音とともに、男が沈んだ。


 死んではいない。ゴム弾と言えども強烈な痛みで動けなくなっただけだ。


 残りの山賊は、一斉にメグを目掛けて走り出した。


 開けた草原といえども少し長い草で死角があちこちにある。そこを上手に使いながら近づいてきた。自分たちの知らない魔法なんて数しれず。いちいち驚いていては生きていけない。攻撃の原理はわからなくても、要は矢のような遠距離攻撃であれば対処法は同じだ。


 メグは、残りの一番右端を目掛けて、移動を始めた。

 そう、少し体を浮かせての高速移動だ。さっきの足首のリングの効果だった。目線が動かないので、銃の照準がぶれない。しかも走るより圧倒的に素早い動きができるのだ。


 再びメグが銃を使うと、もう一人が倒れた。


 このメグの動きは山賊でも想定外だっただろう。


 山賊の動きが一瞬止まった。

 そこにガルドも突っ込んできた。


「おい、二手に分かれるぞ」


 リーダーが命令した。ガルドに6人、メグには4人が向かった。


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