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悲しきセイレーン  作者: 武虎竜
〜エピローグ 怪物から神へ……そして……〜
35/38

〜最悪の結末〜

 その同日。某所。

 そこには三人の若い女性が、目隠しをしたまま、何者かに縄を縛られた状態で椅子に座らされていた。

 そして三人は目を覚ました。


「ここは一体どこ?」

「あれ? 何で目隠しして座らされてんの?」

「誰? 一体誰なの?」

 

 その声に反応するかの様に、その目の前に座っていた若い少女が口を開いた。


「おはようございます、先輩方」

 その声に三人は震え上がった。


「その声は……まさか心音ちゃん!?」

「嘘!? 何で!?」

「何で心音ちゃんがこんなことしてるの?」


「何ででしょう?」

「わかりませんよね?」

「私もまだ完全に思い出した訳ではないですし……」

 

 心音は、座ったまま優しく話し出した。

 だが次の瞬間、急に立ち上がって身も凍る様な冷たい声で三人に言い放った。


「でも……貴方方ですよね……私から声を奪ったのは……」


 それはまるで悪魔の様な語り方だった。その心音の言葉に三人は更に震え上がった。


「わ……私じゃない! 私はちょっと協力しただけ」

「私も違う! 私も脅されて仕方なく協力しただけよ」

「違う! 私も違う! だから殺さないで!」

 

 その三人の言葉を聞いた心音は、更に低い声で言い放った。

「そうですか……それでは三人共死んでもらいましょうか……」


「……明日香よ! 明日香が全部計画したの! 私はお金で雇われて少し協力しただけ!」

 凪沙が最初に口を開いた。


 するとそれに呼応するかの様に、乙音が口を開いた。

「そうです明日香さんです! 全ての計画を立てたのは!」

「私はちょっとファンと裏で繋がってしまっててそれをネタに脅されてて」

「それで仕方なく協力しただけです! 信じて下さい!」


「アンタ達! 裏切ったわね! 覚えていなさい!」

「ごめんね心音ちゃん! でもあれは事故! 事故なのよ!」

「ほらあんまり覚えてないでしょ?」

「あの日心音ちゃんお酒飲みすぎてて」

「それでその後でガス爆発が起こって」

「それで煙を吸い過ぎて、喉が潰れたんだよ!」

「だから私のせいじゃない! 信じて!」


 明日香は心音に向かってそう答えた。


「事故……ですか……それじゃーちょっと実験してみましょうか!」

 心音はとびっきり明るい声でそう言うと、周りにいた自分が金で雇った人達に何かを用意させた。


「明日香さんは元看護師だからもちろん知ってますよね」

「アルコールを体内に入れるとどうなるかは」

「軽い酩酊状態に一気に落ちるんですよね確か」


 心音は笑顔でそう話したかと思うと、それが合図だったかの様に、その人達は三人の腕を固定し始めた。

 そしてその後で、その人達は三人に注射をし始めた。


「や……やめ……て……」

 三人は、そんな声にならない声を上げながら意識を失った。


 心音はその人達に次の指示を出し、その意識の無い三人の口に度数の高いスピリタスを含ませて、顔が下に向かない様に机の上に三人の顎を乗せて、口がやや上に向く様にさせた。そしてその三人の口をテープで縛らせた。

 そして、その人達にガソリンを撒き散らさせた後で、事務所を出た。

 そして心音は、事務所に火を放った。

 次の瞬間、炎が一気に燃え広がった。

 その様子を見て、心音は事務所を後にした。


(バイバイ……私を育ててくれた事務所……そして……私の居場所……)



 同時刻。多数の警官と藤田と立花と新庄は、GPSの通りに心音の住処まで来ていた。

 そしてその光景に驚愕していた。

 そこには三個のスマホがあるだけだった。


「クソッ! やられた!」

 立花は、悔しい声を滲ませてそう叫んだ。


「……本当……どんどん厄介な存在になってますね……」

 新庄はその状況を見ながら落胆した。


「そ……そんな……それじゃー心音はどこに……? そして三人は?」

 藤田は目の前の状況を見ながら、膝から崩れ落ちた。



 その直後だった。緊急無線が入った。


【都内某芸能事務所にて火災発生。現在賢明な消火活動が行われているとのこと】


 その無線を聞いて三人は蒼ざめた。

 そして三人共が悪い予感を感じていた。

 そして三人はすぐ様、その現場に向かったのだった。

 そして、その燃え盛る現場で、三人はその悪い予感が的中してしまったことに落胆した。



 翌日。若い女性三人の焼死体が見つかった。

 その場所は、心音が以前所属していた事務所だった。

 心音は三人からスマホを奪った後で、それをまず自分の元の住処に置いた。

 そして、藤田、立花、新庄、警官数人に連れられた社長が出て来るのを、事務所の近くの車でじっと待っていたのだった。

 そして全員外に出て来たのを雇った人間に確認させた後で、自分が雇った別の何人かにその三人を事務所まで運ばせて、犯行に及んだのだった。


「……守れなかった……俺のせいで……三人の尊い命を心音に奪わせてしまった……」

 藤田は、その三体の焼死体を見ながら、悔しさを滲ませた。


「藤田さん、アンタは何も悪くない……」

 立花は、藤田の肩を叩きながら藤田に言葉を掛けた。


「起きてしまったことは仕方ありません……」

「浅井心音の方が我々よりも上手だったってことでしょう」

「しかし、もし不知火の話が本当なら、浅井心音はこれで自分の目的は全て達成したことになります」

「そうなると、この後自首してくるということですが」

「本当に自首してくるのでしょうか……私にはまだ半信半疑です……」

 

 新庄は焼け焦げた現場を見ながら、二人に向かって問い掛けた。


「……信じるも何も……今の浅井心音はもう誰にも止められない……」

「本人の自首を待つしか……俺達にはもう打つ手がないんだから……」

 立花は、自らの無力を嘆いた。


(心音……もう充分だろ……)

(もうそろそろ姿を見せてくれ!)

(もうこれ以上罪を重ねないでくれ!)


 藤田は祈る様な気持ちで、心の中でそう思った……。

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