〜過去の清算と心音の決意〜
「心音さん!」
不知火は、病院のベッドで目を覚ました。
「おや? 気付いたんですね不知火さん。高坂さんと斉藤さんも目を覚ましてますよ」
ドクターは目を覚ました不知火に向かってそう答えた。
「心音さんは今どこに?」
不知火はドクターに尋ねた。
「心音さんは……もうここにはいない……」
「数日前に意識を取り戻して、貴方に置き手紙を残してここを去って行きました」
ドクターは、不知火に心音からの手紙を渡した。
手紙にはこう書いていた。
『不知火さん。黙って出て行くことを許して下さい。今回のことでよくわかりました。私が殺人者であること。この国に害を成す存在であること。そしてそんな私と一緒にいる人は次々に不幸になることを。西条さんも私と出会わなければ死ななかった。全部私のせいです。だから私はみんなの元から去る事にします。今まで本当にありがとうございました』
不知火はその手紙を読んだ後で、横のベッドにいた斉藤と高坂に向かって叫んだ。
「斉藤! 高坂! お前達はこのままでいいのか!」
「あんな二十歳の少女にここまで気を使わせて!」
「俺は嫌だぞ! 絶対嫌だ!」
「何て思われても構わない!」
「俺は心音さんに従うって決めたんだから!」
すると、そんな不知火に向かって斉藤は答えた。
「不知火さん……もう俺達にはどうしようも出来ないんです……」
「ここどこかわかってますか?」
「いつもの病院ではないんですよ?」
不知火は、斉藤のその言葉を聞いて困惑した。
「どういう意味だ?」
すると、その様子を見ていた高坂が口を開いた。
「ここは警察病院です……俺達はもう捕まったんです……」
「そしてそれこそが心音さんが望んだことなんです!」
「は? 高坂―――! お前何を言ってやがる! いつものドクターがこうやって俺の前にいるじゃねぇか……?」
そう言いながら、不知火は違和感に気付いた。
確かに良く見ると、いつもの馴染みの病院にしては、その病院は綺麗だった。
「……さっき話したが、心音さんは数日前に目を覚ました」
「そしてその後でワシにお願いして来たんじゃ」
「『私……これから神宮寺誠亮を殺しに行く。西条さんの仇取らなきゃだから。でも皆んなの身が心配。だからお願い。このまま警察に保護されて下さい。通報は私がしといたから。ドクター、皆んなを宜しくお願いします。それとドクターのお陰で、私全部思い出せました。神宮寺誠亮を殺したら、私は過去の清算をしに行きます。もうそうなったら私も本当の殺人者になるから。だから全て終わったら、私も警察に自首するから。そんで今までの罪を償うことにする。それじゃーそれまでドクター元気でね』」
「そう言って心音さんは出て行った……」
「それから数日後……神宮寺誠亮が殺されたってテレビで速報が流れたよ」
「あの子は……本当にたった一人で仇を打ったんじゃな……」
ドクターは、大粒の涙を流していた。
そのドクターの話を聞いて、不知火も斉藤も高坂も悔しさを滲ませながら、ただ黙ることしか出来なかった。
(心音さん……俺はアンタが殺人者だろうと何だろうと関係ない)
(だから生きてまた再びこの不知火の前に現れて下さい)
(俺は一生貴方に仕えますから……)
数日前。神宮寺財閥のビル。
悲しい歌声がビル中を包む。
その歌声の前には何も意味が無い。
銃も屈強な男も。
ただ鍵を持つだけのただの抜け殻。
そうしてそのビルの中を、新しいギターを手に少女は上がっていく。
一段一段と。ただ淡々と。
誰にも気づかれずに。ただ淡々と。
そして少女は辿り着く。最上階に。
少女はそのドアを開けた。
「神宮寺誠亮。アンタには死を以て償ってもらう」
ドアを開けてすぐにその少女は、持っていた拳銃をその男に突きつけた。
「なるほど……これが噂の能力か……」
そこに座っていた男は、覚悟を決めたのかその少女に淡々とそう話し掛けた。
「戦闘機すら落とす能力か……」
「もはや人に在らざりし者じゃな……」
「……それでワシを殺してどうする?」
「ワシを殺したところで、お前を狙う者はただ増えるだけじゃぞ」
「そしてその先に待つのはただの地獄じゃ」
その少女は、その言葉を聞いた後で少し微笑んだ。
「アンタを殺して過去も精算したら私はもう自首するわ」
「それが私のせいで無くなった西条さんが望んでいることだから……だから……」
その直後、その男の頭に向けて少女は銃弾を放った。
その男は頭を撃ち抜かれて、その場に倒れ込んだ。
その倒れた男を見ながら、少女は冷たい表情を見せて言い放った。
「アンタも死を以て償え」
そしてその少女は、その部屋を出て行った。
翌日。その速報は世界中を駆け巡る。
【神宮寺財閥のドン神宮寺誠亮。銃弾による脳挫傷により死亡】
【監視カメラの映像から容疑者浅井心音が浮上】
【警察が国際指名手配を決定】
【浅井心音は神宮寺徹平が戦闘機で事故死した件と、別荘爆発事件及び西条警視総監の孫の西条真二が死亡した事件にも関与か?】
連日連夜、そのニュースが流れた。
「浅井心音はとても危険な人物だ! 警察の威信を掛けて必ずこの少女を捕まえる!」
警視総監である西条圭一が、警視庁でも異例の集会をして、全員にそう呼び掛けた……。




