〜惨劇の別荘〜
別荘の周りは爆炎と共に燃え盛っていた。
そして上空を見ると、戦闘機が飛んでいるのが見えた。
「まさか……あれは……F-2戦闘機!?」
不知火は、自分の今見ている光景が信じれなかった。
不知火の目の前には、別荘の周りを戦闘機が飛び回り、そしてその戦闘機がミサイルを次々に落としている光景が広がっていた。
そして、恐らく西条真二の部下と思われる人物が、何人もその巻き添えを喰らって死んでいたのだった。
「ヒャッハッハッハ! 国家の名の下に死ね! 死ね!」
その戦闘機を操縦していたのが神宮寺徹平だった。
神宮寺は自分の地位を利用して、航空自衛隊所有の戦闘機を使って、不知火の別荘を攻撃していたのだった。
「庶民風情が! 神宮寺家に逆らったことを後悔しながら死ね!」
神宮寺徹平は、ミサイルを上空から次々に落としてきた。
そしてそのミサイルは別荘にも飛んで来ていた。
「あ……危ないっ!」
西条真二は、浅井心音の上から飛び掛かり覆い被さった。
その次の瞬間、ミサイルが別荘を直撃し、別荘が爆炎に巻き込まれた。
その衝撃で、外にいた高坂と斉藤と不知火の三人も、吹き飛ばされた。
「こ……心音さん……に……逃げて……」
不知火はそれだけ言うと、血を流しながら気を失った。
斉藤と高坂も同様にその場で気を失った。
「……痛たたた……」
「もう何? 何が起きたの!?」
「……確か何か別荘の外で爆炎が上がって……そして爆音がして……!?」
心音は自分の目の前に広がる状況を見て驚愕した。
心音の目の前には、見るも無惨に壊された別荘の一部だった物達が、爆炎と共に燃えていた。
そして心音の上には、心音をその瓦礫から守る様な形で、西条真二が大量に血を流していた。
「さ……西条さん……!? 何で!? 何で!? 何でーーーー!!」
心音は西条真二に泣きながら何度も叫びながら呼び掛けた。
すると西条真二は、今にも消えかけの意識で、その呼び掛けに答えた。
「……男が女性を守ることは当然だから……」
「それに……君には何故か生きていて欲しいって思ったから……」
「だから気付いたら身体が動いていた……」
「そんな感じかな……ハハハ……」
それだけ心音に伝えた後、西条真二は意識を無くした。
「西条さーーーん! 西条さーーーーん! 西条さーーーーーん!」
それからはもう心音が何度呼び掛けても、もう西条真二は意識を戻すことは無かった。
「折角……折角……出会えたのに……」
「龍一さんと瓜二つな……」
「優しいところもそっくりな男の人……」
心音は、涙を拭って飛んでいた戦闘機を睨み付けた。
「許さない! 絶対! 絶対許さない!」
「セイレーン! いるんでしょ! 力を貸しなさい!」
その心音の呼び掛けに応じる様に、心音の目の前にあの鳥の置物が現れた。
【はいはい……あの空を飛んでいるヤツを撃ち落としたいんだろ?】
【そうねぇ……ちょっと距離もあるし……普通には難しいかもねぇ……】
【……まー方法はなくはないけどねぇ……】
【アンタにそれが出来るかどうかはわからないけど……】
「出来るかどうかじゃなくやらなくちゃいけないの! 絶対! 絶対に!」
「だからお願い! その方法を教えて!」
【……声をさ……一直線に飛ばすんだよ……意識的にね……】
【アンタは今まで波状に声を届けて来た】
【それは多くの人間に聞いて欲しいからだと思うけど、それだと離れている人物には届けれない】
【そうじゃなくて本当に意識的にその人物だけに届けるつもりで歌うんだよ】
【そうしたらその声はまるでレーザーの様に一直線に飛ぶ】
【たとえどんなに距離があろうとも関係ない】
【ただこれを実行する為には相当の声量が必要だし、生半可な歌い方じゃダメだ】
【アンタの本気の歌で出来るかどうか】
【アタシもじっくりと見せてもらうとするよ……】
心音にそう語りかけた後で、その鳥の置物は姿を消した。
「声を一直線に飛ばす……か……」
心音は、爆炎から別荘の外に飛び出して、上空を飛んでいる戦闘機を睨み付けた。
「ワーーーーーーーーッ!」
そして心音は思いっきり大きな声を出した後で、深呼吸をした。
「空を飛んでいる人工で作られた鳥さん。私の歌を聞いて下さい」
「……そして……懺悔して下さい……」
「……それでは聞いて下さい……⦅レクイエム⦆……」
心音は上空を見ながら、⦅レクイエム⦆を歌い出した……
「ん? あの女の子が浅井心音か?」
「何か歌っている風に見えるが気でも触れたか?」
「こっちは何キロも離れた上空だぞ」
「眠く……なる……はずが……あれ……何か……おかしい……ぞ……そんな……バカな……徐々に眠気が……ダメ……ダメだ……ダメだ……」
神宮寺徹平は、操縦桿を持ったまま眠ってしまった。
そしてそのまま地面に衝突し、戦闘機は大爆発を起こした。
【ウッフッフ……本当に凄いね……アンタ……最高だよ……】
「ハァ……ハァ……ハァ……や……やった……やったよ……皆んな……西条さん……仇……取った……からね……」
心音は全身で力強く声を出した影響で、全身に疲労感がぐったり出ていた。
そしてそれと同時に、先程の別荘の爆発で受けた傷や痛みが身体中に走るのを感じていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……痛い……痛いよ」
「でも……皆んなを……助けない……と……私が……絶対に……」
心音は身体を引きずりながら、どこかに電話を掛け出した。
「もしもし……ドクター……今すぐ場所送るんでここに来てもらえますか?」
「……皆んな重傷です……お願いします……」
心音は、最後の気力を振り絞り、ドクターに現在地の情報を送ったところで気を失った。
そして気を失いながらも、心音は横目で別荘の燃え上がっていく様子のことを眺めていた。
そして遂に、心音は自分が封じ込めた記憶のことを思い出したのだった……。




