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悲しきセイレーン  作者: 武虎竜
〜エピローグ 怪物から神へ……そして……〜
31/38

〜まさかの人物との出会い そして 決断……〜

 同時刻。心音と不知火もその会見を見ていた。

「私……テロリストなの……!?」

「私、この国を転覆させようなんて考えたこと一度もないよ」

「ただ困っている人達を助けてただけなのに」

「それの何がダメだって言うの!」

 

 心音は激しく怒って、辺りに置いてあった物を手当たり次第投げ出した。

 その様子を見て、不知火はそっと心音を抱き締めた。


「……心音さんは何も悪い事はしていません」

「でもそれは裏稼業から見た人間の話しです」

「どんな理由があっても人を殺める行為は、表の世界ではただの殺人です」

「そして更に心音さんには人を超えた力もある」

「それを国が恐れるのは仕方のない事です」


 不知火はその言葉を言った後で、抱き締めたその手を伸ばして、心音を見ながら優しい口調で更に伝えた。


「ただ心音さんがテロリストだろうが何だろうが、この不知火はずっと心音さんの味方です」

「それだけは絶対変わりません」

「だからそれで怒りを抑えて下さい」


 不知火のその言葉を聞いて、心音は小さく頷いた。

 不知火は落ち着いた心音の姿を見てようやく安堵の表情を浮かべた。


「……しかし高坂は女に会いに行ったからもう少しかかるとしても、斉藤は帰って来るのが遅いですね……」

「もしや……!?」


 不知火は最悪の事態を想定しだした。

 その刹那、別荘のドアが開く音が聞こえた。

 現れたのは斉藤と高坂だった。

 その斉藤の姿を見て不知火は安堵した。


「斉藤。遅かったな。もしかして高坂と合流していて遅くなったのか?」

 不知火は高坂に尋ねた。

「まあそんな感じです」

 斉藤は少しバツが悪そうな顔をしてそう答えた。


 その様子に不知火は少し不信感を抱いた。

 その様子を横目で見ていた高坂が口を開いた。

「そうそう! 俺が斉藤さんに連絡してちょっと待っててもらう様にお願いしたんです」

「俺のせいです。すいませんでした!」

 高坂は、不知火に頭を下げた。

 

 そのあまりの二人の態度を不信に思った不知火は、二人を大声で問い質した。

「斉藤! 高坂! お前ら何か隠しているだろ! 言え!」


そしてその刹那、不知火は今の状況に気付いた。


「心音さん……まずいです……囲まれてます……」

「……最悪の時は心音さん……わかってますね……?」


 不知火はヒソヒソ声で、心音に意志を確認していた。

 心音はその言葉に軽く頷いて、そばにあったギターを手に取り出した。


「待って下さい! 騙していたのは本当にすいません!」

「……でもこの人の姿を見たら、多分不知火さんも考え変わりますから」

「少しだけでいいんで話しを聞いて下さい!」 

 高坂は不知火にそう嘆願した。


 そして不知火は、その二人の後ろに誰かが立っていることに気付いた。

「テメェ何者だ? どうやってこの二人を取り込んだ?」

 不知火は、その人物に向けて凄みを利かせた。


「斉藤さん。高坂さん。ありがとうございます」

「そして不知火さん、浅井さん始めまして」

 その人物は、その二人の間からゆっくりと心音と不知火の前まで歩いて来た。


 その人物を見て、不知火は驚愕した。

 心音は見た瞬間に涙が止まらなくなった。

 そこにいた人物は、二人もよく知る人物にとても似ていたからだ。


「嘘……そんな……龍一さん……!?」

 心音は声にならない様な小声で、涙を流しながらそう言った。


「そ……そんな……その姿は……若?」

「ど……どういうことだ!? 若は死んだんじゃなかったのか!?」

 不知火は、その人物の見た目にとても困惑していた。

 

 そんな二人の様子を見て、その人物は話し出した。


「残念ながら、私は似ているだけで須藤龍一ではありません」

「私は探偵をしている西条真二と言う者です」

 西条真二は頭を下げながら、心音と不知火に挨拶をした。


 その様子を見て正気に戻った不知火は持っていた拳銃を手にして、西条真二に向けて構えた。

「探偵!? そんなわけないだろ?」

「……ならこの周りに囲んでいる人間達はどう説明する?」


 西条真二は、その向けられた銃に怯むこともなく、淡々と不知火の問いに答えた。


「この別荘を囲んでいるのは警察でも暴力団でもありません」

「私の仲間です」

「そして彼らは私の合図で一斉に催眠銃を撃ちます」

「恐らく心音さんの歌よりも早くね」

「何せ元は優秀な刑事の方々ですので」

「でも私が合図をしない限り何もしないので、そこはご安心下さい」


「お前……その度胸……本当に若みたいだな……」

 不知火は、拳銃を懐に閉まった。


「で、アンタは心音さんの能力もわかった上で、しかも斉藤と高坂も唆して、その上で一人でこの別荘の中まで来たわけだが、一体何が目的なんだ?」

 不知火は、西条真二に尋ねた。


「単刀直入に言います」

「皆さん、今すぐ自首して下さい」

「そうしないと貴方方はこの国、いえ神宮寺家に殺されることになります」

「私は悟の一件以降、浅井心音さんのことを色々調べました」

「そして貴方が悪人ではないことに気付きました」

「ただ、この国では如何なる理由でも人は殺してはいけません」

「だから貴方は裁かれなければなりません」

「どうかお願いです」

「大人しくこのまま私と一緒に来て下さい」

「貴方方の身の安全は、私が祖父に言って必ず守りますので」

 

 西条真二は、深く頭を下げた。

 するとその様子を見ていた高坂も、不知火の方を向いて頭を下げた。


「不知火さん。この男は西条警視総監の孫だそうです」

「だからこの男に頼めば我々の罪も、そして心音さんの罪も正しく裁いてくれると思います」

「なので俺からもお願いします!」


 その様子を見て不知火は心音の方を向いて、心音に尋ねた。

「……心音さんはどうしたいですか?」

「俺には判断出来ません」

「俺は心音さんに従うと決めているので、心音さんが決めて下さい」


その不知火の言葉を聞いた心音は、軽く深呼吸をした後で何かを決心した様子で話し始めた。


「……そっか……犯罪者なんだね私……」

「なんか改めて気付かされちゃったな……」

「私は歌が歌えたらそれで良かっただけなんだけどな……」

「どこで間違えたんだろうね……」

「……うん……いいよ……私自首することにする」

「それに捕まるのが龍一さんなら……いや龍一さんに似ている人なら……それも龍一さんの意志だと思えるし」

「だから西条真二さん。私を警察署まで連れて行って下さい」


「ありがとう。決断してくれて本当にありがとう」

「それでは行きましょうか……」

 西条真二は、心音を連れて別荘を出ようとしていた。



 その時だった。

 急に周りから爆炎が上がった。

 その刹那、西条真二の携帯電話が鳴った。

「真二さん! ヤバい! 神宮寺家マジでヤバいです! うわーっ!」

 

 爆音と共にその電話は切れた。

 その様子を見ていた不知火と斉藤と高坂は、ドアから外に飛び出した……。

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