表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悲しきセイレーン  作者: 武虎竜
〜エピローグ 怪物から神へ……そして……〜
30/38

〜冷泉翔の正体 そして 動き出す国家〜

 同日。心音達は遠いところにある一軒の家にいた。

 そこは、不知火が極秘で購入していた別荘だった。

 不知火はとても頭が切れる男だった。

 昨夜全てが終わった後で、心音に須藤組のアジトを離れる様に指示していたのだった。

 そして、お抱えの医者を呼んでいたのも、この別荘だったのだ。


 不知火はわかっていたのだ。

 神宮寺悟を殺すということのその本当の意味を。

 だから須藤組が関わっていたところでもなく、組が所有していたところでも無い、個人で購入していた別荘に、心音を連れて行っていたのだ。

 それは単に危険を察知した行動だったこともあるが、それに加えて心労が続いている心音を気遣っての行動でもあった。


「不知火さん。ここ凄く気持ちいいよーー」


 心音はその別荘をとても気に入ったみたいで珍しくはしゃいでいた。

 その様子を見て、不知火もホッと胸を撫で下ろしていた。


「ねーねー不知火さん。ところで斉藤さんと高坂さんは?」

 心音は斉藤と高坂が今朝からいないことを気にしていた。


「斉藤には諸々の買い出しをお願いしています」

「とりあえず何日かだけでも過ごせるだけのものが必要ですので」

「高坂は何か用事があるとのことで、今朝方出掛けて行きました」


「ふーーん……そうなんだ……」



 同日。斉藤は不知火に言われた通り街に買い物に来ていた。

「とりあえず数日過ごすならこんなもんかな……」

 斉藤は袋一杯買い込んだものを車に積めると、車を走らせ出した。

 

 しばらく走っている内に斉藤は、一台の車に後を付けられていることに気付いた。

(来たか……不知火さんの読み通りだな……)


 斉藤は、人があまり来なそうな山道の方に車を走らせ始めた。

 そしてその車一台だけになったところで、路肩に車を止めた。

 するとその後ろに付いていた車も、斉藤の車の真後ろに止まった。

 斉藤はその様子に確信し、車のドアを開けて外に出た。

 後ろの車も同じタイミングでドアを開けた。

 その車の中からは、数人の筋者と思われる人物が出て来た。


「何のつもりだコラ! 返答次第ではヤっちまうぞ!」

 斉藤はドスの効かせた声でその人物達を脅す様に言った。


 するとその車に乗っていた人物の一人が、斉藤に向かって淡々と話し出した。

「斉藤蒼介だな。素直に仲間の元に戻れば良かったものを……」

「まあいい……お前だけでも連れて行くか……」


「てめえら! どこの組のもんだ! この俺が素直に捕まると思うなよ!」

 斉藤は、更に凄みを増してその男達に向けて言った。


「……我々は極道ではない。全員、元刑事だ」

「我々は、ある方の命令で動いている」

「お前達みたいな者達よりも、遥かに裏の事情に詳しい組織だ。そして……」


 その言葉の直後、その人物は斉藤に向かって銃を発砲した。

「くっ……てめえ……何……しや……がった……」


「我々は殺人や暴力なんかはしない」

「ただ任務を遂行する為には何でもする」

 

 その人物が放った銃は、とても強力な猛獣に使用する催眠銃だった。

 そしてその銃弾を受けて、斉藤はその場に眠ってしまった。


「よしっ! 運ぶぞ!」

 その謎の集団は、斉藤を自分達の車に乗せて走り出した。



 同時刻。高坂は誰かと会っていた。

 いや正確には呼び出されていた。

 事は昨夜に遡る。

 高坂は、皆んなと共に不知火の別荘に着いてのんびり過ごしていた。

 そんな時、高坂の携帯が鳴った。

 それは、高坂がよく利用していたホステスの女性からだった。

『明日明朝、二人っきりで会えないかな? 高坂さんに会いたいな……』

 高坂は、そんな電話を受けて斉藤に途中まで送ってもらい、その女性に会いに行っていた。


 その女性は、高坂に会うとすぐに、連れて行きたいところがあると言い、高坂をとある店に連れて行った。

 そこは、地下深くにひっそりと経営していた会員制のバーだった。

 そしてその女性は、そのバーに高坂を連れて行った。

 そのバーは早朝にも関わらずとても暗かった。

 そしてその店に入った高坂は、その暗がりの中から、声を掛けられた。


「高坂蓮司さんですね。お待ちしておりました」

「なんだ? 誰だお前?」

 

 次の瞬間そのホステスの女性は、高坂にさっきまで組んでいた腕を振り払い、急ぎ店の外に出て外から鍵を掛けた。

 高坂はその一瞬の出来事に呆気に少し取られたが、すぐに正気に戻るとその閉められたドアノブをガチャガチャとしてドアを大きく叩いた。

 そしてその一瞬で起こった出来事で、高坂は自分が騙されてこのバーに連れて来られたことに初めて気付いた。


「クソッ! おい! 俺が誰だかわかってやってんだよな?」

「返答次第じゃただじゃ済まさねぇぞ!」

 高坂はその姿を見せない男に向けて、凄みを利かせた。


 するとその男は淡々と話し出した。

「もちろん知ってますよ」

「元須藤組若頭須藤龍一の舎弟の一人。高坂蓮司さんですよね」

「そして今は浅井心音に従っている。と」

 

 その言葉に高坂は蒼ざめた。

 自分が浅井心音に従っている事は、まだ誰にも知られていないと思っていたからだ。


「お前……何者だ?」

 

 するとその男は、暗がりの中から姿を現した。

 そして高坂はその姿に驚愕した。

 その様子を見ながら、その男は話を続けた。


「私は西条真二と言います。これでも探偵です」

「なので貴方と浅井心音の事はほとんど調べています」

「そして貴方方が、神宮寺悟を殺した犯人であることを確信しています」

「私は別に神宮寺悟殺害に対してとやかくいう気はありません」

「ただどんな理由があっても、犯罪者を容認するつもりもありません」

「なので貴方方には、全員大人しく自首して欲しいと思っています」

「そこでお願いがあるのですが、私を浅井心音がいるところまで案内してくれませんか?」

「私なら彼女を説得出来る」

「だから、私を彼女のところまで連れて行って下さい」

「ちなみに私の仲間によって、既に斉藤蒼介は捕らえていますのでご安心下さい」



 同時刻警視庁。

 神宮寺省吾の携帯が鳴った。


「……何!? 斉藤蒼介と高坂蓮司を付けていた奴らから連絡が途絶えただと?」

「お前達一体何やってんだ!」

「お前達は選りすぐりの、元暴力団達じゃないのか!」


「……も……申し訳ありません……」

「何者かは分かりませんが……我々と同じく斉藤と高坂をマークしていた人物がおり、恐らくその連中にやられてしまったのかと……」


「言い訳はいい! とにかく今すぐ状況を確認して連絡して来い!」

 


 その電話から数分後に、警視庁内に緊急の通報が流れた。

『先程匿名の通報が入りました。元暴力団数名が河川敷で誰かに縛られた条件で発見。何人かが拳銃及び刃物を所持。至急現場に急行せよ!』


 その管内に流れる通報を聞いて、神宮寺省吾は蒼ざめた。

「ま……まさか……」

 

 神宮寺省吾は、その悪い予感を確認する為に、急いでその河川敷に向かった。


 神宮寺省吾の悪い予感は当たっていた。

 その捕まった元暴力団員こそが、神宮寺省吾が斉藤と高坂に差し向けた刺客達だったからだ。


「こ……これは一体……」

 神宮寺省吾はその様子を見て蒼ざめた。

 すると突然、神宮寺省吾の携帯が鳴った。


「親父……やられたね……」

「俺も今さっき仲のいい警視庁の友達から聞いてびっくりしたよ」

「まさか親父の軍団がやられるなんてね」

「しかも恐らくこの手口は元暴力団や浅井心音じゃない」

「この手口は完全に元刑事。それも凄腕の刑事だ」

「噂には聞いていたけど本当に存在していたんだ」

「そしてまさかアイツがその指揮権を持っていたなんてね」

「……親父、もう後は俺達に任せてくれ」

「俺達二人で悟の仇を取るから」


 そう言った後、その電話の相手は電話を切った。

 神宮寺省吾は、その場でただただ呆然としていた。



 その数時間後。官邸。

 防衛副大臣である神宮寺護は、集まった記者達に緊急会見を開いていた。


「皆様。お忙しい中お集まり頂きありがとうございます」

「我が国は現在一人のテロリストによって国家の危機に陥いれられています」

「その人物の名は浅井心音と言います」

「彼女の手によって、既に何人もの尊い命が失われていることが確認されております」

「彼女はこの国の転覆を計っております」

「我々としてはこのテロリストに屈する事なく、国家、そして自衛隊と協力して、このテロリストの確保に立ち向かっていこうと思っています」

「会見は以上となります」


 神宮寺護はそれだけ話した後で、記者の質問には一切答えずに、その会見上を去った。

 そしてどこかに電話を掛け始めた。

「これでお前の行動は国家が保障してくれる……後は任せたぞ徹平!」


「クソ程簡単な仕事だな」

「要はそいつらの住処をぶっ壊して、そいつらを皆殺しにすればいいんだろ?」

「俺の愛機ならそれくらい楽勝だよお兄ちゃん」

「目にもの見せてやるよ!」

「そして神宮寺家に手を出した者がどうなるかを思い知らせてやる!」


 その会見を見ていた立花は驚愕していた。

(遂に……遂に国家が浅井心音の確保に動き出した……)

(いや……神宮寺家が浅井心音を殺しに動いたと言った方が正しいか……)

(俺はどうすればいい……もう本当に何も出来ないのか……)


 同時刻。同じ会見を見ていた新庄も、その会見の内容に驚愕していた。

(神宮寺家が動き出した……)

(こうなるともう手を触れれない……)

(クソッ! こんな事思いたくは無いが……)

(浅井心音……神宮寺家から上手く逃げてくれ)

(そして大人しく投降してくれ)

(そうしないと殺されてしまうぞ!)


 同時刻。藤田もその会見を見ていて呆然としていた。

(そ……そんな……心音がテロリスト……!?)

(何かの……何かの間違いだ!)

(心音は……心音は……そんな事する子なんかじゃない!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ