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悲しきセイレーン  作者: 武虎竜
〜エピローグ 怪物から神へ……そして……〜
25/38

〜サイトの異変と悲しい別れ〜

 そんなある日、高橋はそのサイトで一件の謎な書き込みを見つけた。

 内容は自殺願望者のいつも見るそれなのだが、ターゲットがどう見ても悪人ではないのだ。そして事細かに詳細を聞こうとすると、その書き込みをしている人物はサイトを退会していた。

 

 そしてその日以来、何件か同様の書き込みが見つかることが何度も起こっていた。


「……一体……何が起こっているんだ……?」


 高橋は何か妙な感覚を感じていた。

 そして高橋が気付いた時には、サイトの中はそんな書き込みだらけになっていた。

 そこで高橋は、明らかなこのサイトの異変に気づいた。

 そして、他のサイトのスレッドで自分のサイトの現状を確認することにした。


『このサイトで自殺志願者と嘘付けば殺して欲しい奴をタダで殺してくれるってよ』

『自殺志願者のサイトではなく殺人希望者のサイトwww』

『高度な嘘付かないと中々依頼受けてくれないから皆んなシナリオとか作っといた方がいいぞ』

『俺も殺して欲しい奴いるから依頼しようかな』

『この世の社会悪を全員滅亡する為に皆んなで協力してシナリオを書こう!』

『半グレもヤクザもこの世には必要ない!全員殺させようぜ!』

『社会悪滅亡賛成!』

『警察なんかもう必要ない!俺達で裁きを下すぞ!』


 高橋が見たスレッドは、そんな書き込みに溢れていた。

 その事実に高橋は驚愕した。

 

 そして、現状について心音に相談することにした。


「心音様……申し訳ありません」

「最早このサイトは自殺志願者が集うサイトではなく、殺人希望者のサイトに成り下がってしまいました」

 

 高橋は、現在のサイトの書き込みと、自分が見たスレッドの内容を心音に見せた。 

 その内容に心音は絶句して、全身の力が抜けた様にその場に座り込んだ。


「そ……そんな……私……皆んなの為にと思って……頑張って来たのに……」


「……もちろん中には本当の自殺志願者もまだいます……」

「でも……もうそれも今は残りわずかです」

「私は次の依頼を最後に、一度このサイトを閉じようかと考えています……」

「よろしいでしょうか?」


「……うん……その方が……いいのかもね……」

 

 心音は、弱々しい声で高橋の提案を受けた。

 そして最後の仕事に取り掛かる為、心音は部屋を出た。



 それから数分後の出来事だった。

 高橋は心音が出て行った後で、そのサイトを閉じる作業に入っていた。

 その作業に集中していた高橋は、背後から誰かが迫ってくることに気付かなかった。

 そしてその人物は持っていた刃物を高橋の背中に突き刺した。


「ウッ!」その声と共に高橋は、その場に倒れ込んだ。


「まったく! 俺の依頼を受けろよ! このボンクラが!」

「俺がトップに立つ道が無くなっただろうが!」


 高橋を刺した男は、そう言葉を吐き捨てると高橋の腹を思いっ切り蹴った。

 そしてその男は、高橋のいる部屋にガソリンをぶちまけた後で火を付けて、その場を立ち去った。



 心音はいつも通り自分の仕事を終えて、高坂に部屋まで送ってもらおうとしていた。

 そしてその帰り道で消防車の音を聞くと、その消防車が高橋のいるアパートに向かっていることに気付いた。

 心音は妙な胸騒ぎを感じていた。


 心音のその嫌な胸騒ぎは当たっていた。

 遠くに車を止めて心音がその消防車のいる方向を見ると、高橋のアパートは強大な炎を上げながら全てを焼き尽くそうとしていた。


「た……高橋さーーーーん!!!」

 心音は号泣して、アパートの方に向かって、声の限り叫び続けた。


 そして今にもアパートに向かって走り出そうとしていた心音の腕を、斉藤が握った。


「離して斉藤さん! 早く助けに行かなきゃ! 高橋さんが! 高橋さんが!」

「いけません! 貴方は指名手配されています! ここはまず引き上げましょう」


 斉藤は、号泣している心音を無理矢理車の中に押し込み、高坂に車を出す様指示を出した。

 車はアジトに向かって走り出した。


 燃え上がる炎を見ていた時、心音の脳裏には別の映像が断片的に現れていたことに心音は気付いていた。

 ただ、悲しみでそれどころでは無かった為、気にもしなかった。

(……せいで……だから……)

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