〜復讐の完遂 そしてまた街へ……
屋敷から移動して数時間後。
心音と斉藤と高坂の三人は城島組の近くまで来ていた。
「斉藤さん、高坂さん、私が合図するまで、しばらくの間どこか遠くで待機していて下さい」
斉藤と高坂は、心音から小声で言われたその言葉の通りに、車でその場から離れた。
そしてその車の姿が見えなくなったのを確認した後で心音は一人ギターを持って、城島組に向かって歩き出した。
(龍一さん……見てて下さい……)
心音は、深く深呼吸をした後で、ゆっくりと子守唄を歌い出した。
その歌声を聞いた城島組の屋敷にいた人間は、次々に眠っていった。
そして心音は、その人々の中でギターを弾いて歌いながら、ゆっくりと歩いて行った。
極道達は心音の姿を見ることもなく、一人また一人と眠っていった。
そして、目的の人物が眠っていることを確認した後で、心音は斉藤と高坂に合図を送った。
その合図の後、しばらくして斉藤と高坂が、車に乗って戻って来た。
そして斉藤と高坂は心音の指示の通りに、そこにいた目的の人物を担ぎ出し、更にそこで一仕事をした後で、その人物と心音を乗せて車を走らせた。
「……うーん……ここは……どこじゃ……?」
「……ワシは……確か……組の屋敷にいたはずじゃが……」
一人の人相の悪い老人が、とある暗い部屋で目を覚ました。
そして老人は、自分が縄で縛り付けられていることに気付いた。
「だ……誰じゃコラ!」
「ワシを城島組の組長と知ってのことか!」
その老人は自分の状況を見て、騒ぎ出した。
「……アナタが誰かなんて私には関係ない!」
「アナタのせいで……アナタのせいで龍一さんは死んだんだ!」
そう言って暗がりから一人の少女の声が聞こえたと思うと、銃声と共にその老人の足を銃弾が貫通した。
「ウギャーーーー!!!」
老人は断末魔を上げた。
その老人に向けて、少女は冷たい眼差しを向けて、強い口調で言い放った。
「今頃アンタの組はもう壊滅しているから!」
「もう何もかも燃えて無くなったから!」
その言葉の通りだった。
その老人を担ぎ出した後で、斉藤と高坂はその部屋にガソリンを撒いて、火を点けたのだ。
そして中にいた城島組の極道は、全員眠りながら焼け死んでいったのだった。
そして少女は、更に銃弾を老人の脚にぶっ放した。
「ウギャーーーーーー!!!」
老人はまた断末魔を上げた。
「なんでアンタだけ安らかに殺さなかったと思う?」
「アンタだけは苦しみながら殺したいと思ったからよ!」
「龍一さんの……あんなに優しかった龍一さんの命を奪う指示を出したアンタだけは絶対許さない!」
少女は何発もの銃弾を、その老人の脚に浴びせ続けた。
しばらくすると、その老人は声も発しなくなった。
すると少女は大きな深呼吸を一つした後で、持っていた拳銃を地面に落とした。
そして、後ろでただ黙って見届けていた、斉藤と高坂の方を振り向くと頭を下げた。
「斉藤さん、高坂さん、ありがとう……」
「これで……龍一さんも少しは報われたと思う……」
「そうですね……若も見てくれていたと思いますよ」
「俺も俺もそう思います」
「……二人共本当に協力してくれてありがとう……」
「……でもなんか驚く程あっけなく終わっちゃったね……」
「……うーん……さてこれからどうしよっかなー……」
そう言いながら少女はギターを手に持つと、その場を去ろうとした。
そんな少女を見て、高坂が声を掛けた。
「心音さん……次はどこに行くんですか?」
「んーー……わかんない……」
「ここ最近は龍一さんが私の全てだったからさ……」
「また誰か私を求める人を探す感じかな?」
「でも龍一さんとも約束したし……悪いことはもうしないつもり……」
「でもまた何かあったら頼るかもだからその時はお願いね」
「この斉藤で良ければいつでも連絡して下さい。心音さんは今や俺にとっては若と同等の存在ですので」
「心音さん! 何かあったらいつでも駆けつけます! いつでも頼って下さい!」
斉藤と高坂の言葉を聞いた後で、心音は笑顔で斉藤と高坂に手を振りながら言った。
「じゃー斉藤さん、高坂さん、またね!」
心音は須藤のアジトを後にした。
その数分後、新庄の元に連絡が入った。
「うん……うん……やはりか……わかった……」
新庄は部下からのその報告を聞いた。
そして、聞き込みを終えて一緒にその場にいた立花に、その報告の内容を告げた。
「今、城島組が燃やされたって連絡が来ました……」
「ま、まさか……まだ須藤組が燃やされてからそんなに時間経ってないぞ!」
「そんなバカなことがあるか!」
「城島組の構成員は、少なくとも百人以上はそこにいたはずだぞ!」
「それが全滅……ありえない……絶対にありえない!」
立花は、今聞いたその内容が信じられずに、机を思いっきり叩いた。
「……残念ですが事実です……」
「浅井心音の力を持ってすれば特に造作も無いのかもしれません……でも……」
「問題はそこではありません……」
「浅井心音の目的はこれで達成された……」
「つまり、おそらくもう須藤龍一のアジトにはいないことでしょう……」
「そしてもう今は、どこにいるか全く手掛かりが無くなったということです」
新庄は落胆した表情を浮かべながら、立花にそう伝えた。
立花は余りにも早いその展開に、頭が追いつけなくなっていて、頭を掻きむしった。
「とにかく私はこれを上に報告して今後の対策を練ります」
「……でもこれでもう貴方もわかったと思います」
「浅井心音は怪物だと……」
「もうこの件からは手を引くことをお勧めします……それでは」
新庄は立花に向けてそう言い残すと、その現場を後にした。
一人残された立花は、何も出来ないその自分の不甲斐なさに腹を立てて、壁を強く殴った……。




