第三十八話
死神さんが、来てくれたーーー。
信じられない。
ていうか、謹慎中じゃなかったっけ?
「困るよ、勝手にこんなことされちゃ」
「いっ…いだだだだだだたーーーぁっ!!離して離して!!離せって~!」
死神さんは片手で涼しげに笑いながらグリムの手をねじ上げる。
いつの間に没収したのか全くわからないが、鎌もちゃっかり取り上げていた。
う、すごい…。
死神さん、強い。まあ、あんなチャラ男に負けたりしないのはわかってたけど。余裕で敵を圧倒する、そんなところもかっこいい。
「怪我してない?真千子!」
「アルマ!?なんでアルマまでここに?」
「あたしが彼を連れて来たのよ、感謝してね」
アルマは指にかけた鍵束をちゃらっとまわして見せた。
「ありがとう…アルマのおかげで助かった」
「いやいや、当たり前よ。どのみち、これは報告書に反省文、謹慎は間違いないわね」
死神の世界って、結構事務的なんだろうか…。書類とか、多そうだ。
グリムのうめき声が止んだ頃、サングラスの死神が現れた。
誰が見てもはっきりわかるような呆れた顔で、グリムの肩をつまむ。
「はあ、おまえにはがっかりだ、グリム…。帰りますよ。報告書や謹慎ではすまないくらいに思っておきなさい」
グリムはうなだれて、だが抵抗もせずに、おとなしく連れて行かれた。
消える間際、サングラスの死神はこちらを振り向いて、思い出したように言った。
「こんなことをしでかしたので、一日早いですが元の契約に戻します。謹慎中の態度も良かったようですし…ただし、今度からは規則を遵守するように」
「はい…」
あたしは返事してみた。死神に注意されるのって新鮮だ。
「真知子ちゃん、久しぶり」
目がばちっと合う。
何でも見通すような目に見とれて、身動きがとれない。
「久しぶり、だね…戻ってきてくれてうれしいよ。ずーっと待ってたから」
うわ、素直に言いすぎたかな?
また後で恥ずかしくなりそう。
「そんなに言ってくれてありがとう」
そんな微笑み反則だって!
どんな表情でも、色気がありすぎるんだ。
本人は気づいてないだろうけど…こっちは困るんだから。
どう返事したらいいのかわからなくて、とりあえず笑った。
すると死神さんも笑ってくれた。
心の底の広い部分が、暖かくなっていくのがわかる。
その暖かさに溶かされたのか、しまっていた気持ちがぽんぽん飛び出してきた。
あたし、結局どんなこと言ったんだろう…。
思い出さないほうがいいのかな。
死神さんといると落ち着くとか、幸せーとか、声が大好きとか色々言った気がする。
でも後悔はない。
ほんとにそう思ってるんだもん、伝えておいて何が悪いの?
それに、言ってしまわないと、苦しい。
想いが大きすぎて、抱えてしまっておけない。
出していかないと、どうにかなりそうだ。




