第三十九話
「真知子ちゃん、渡すものがある」
ある日の帰り道、死神さんは言った。
季節はもう冬。
冷たい風がビュービュー吹いて、電線が唸り声をあげている。
しかし空は澄んでいて、冬特有の宝石のような星がとてもきれいだ。
「渡すもの?」
「そう」
ごそごそとローブの懐をさぐる。
うう、なんかその動作きまりすぎてる。
どの角度から見ても死神さんはかっこいいけど、少し下を向いた斜めの顔は格別だ。思わず顔がにやけてしまう。
「はい、皆勤賞」
「か、皆勤賞??」
なんじゃそりゃ、と思った。
死神の世界って…なんかこう、漠然としたイメージ通りの重々しいものじゃないのかな。
自分の通っている高校にも皆勤賞はある。
二つの世界の妙な共通点に、しばらく想いを馳せていた。
差し出されたのは、記念品と呼ぶにはあまりにふさわしくないものだった。
「なにこれ…置物…?ドクロ!?」
握りこぶし大の、ずっしりと重たい、鈍い銀色の輝きを持つ骸骨の頭だ。
これが、皆勤賞か!
「なぜか、嬉しがる人間はいないんだけどね。こっちが欲しいくらいなのに」
「……う、ううーん」
死神の感覚は、人間のそれとはだいぶずれてるみたいだ。
ドクロを見つめてみる。
言われてみれば…かわいいような…
そうだこれ、死神さんからもらったものだよね!
そのことを思い出して、天にも登るような気持ちになる。
死神さんがあたしにくれたもの…
大事にしよう。
机に飾って、埃かぶらないようにして。
「ありがとう、死神さん!うれしい。骸骨もかわいいよ」
思ったままを伝えた。本当に嬉しかったから。
思わぬ収穫だ。
「気に入ってくれたのは真知子ちゃんがはじめてだよ、なんか見てるとこっちまでうれしくなってくる」
「そ、そう…?」
やばい。
今のはかなりーーきた。
のぼせ上がった頭に冷たい風が吹きつける。ありがたい。このままだとかかし状態だ。
うれしくなるって…それはこっちが言うものだ。
氷のようなにおいのする冬の空気を吸い込む。ゆっくりと夜空を見上げると、満天の星が迎えてくれた。
うわぁ、今すっごいロマンチックだ。
不思議だ。何もかもきらきらして見えてくる。いつもと同じ、ロマンチックとは程遠い住宅街なのに。
オリオン座を見つけた。真上の空を占領して横たわっている。
「あれ、オリオン座」
死神さんの肩を叩いた。
そういえば、肩を叩くのってはじめてだ。ちょっとドキドキした。
死神さんはあたしの指差した方向を見てくれた。
さっき肩を叩いたときの手が、まだそばから下ろせないでいた。
死神さんの腕のあたりで宙に止めていた手をそっと広げて、きづかれないくらい弱くローブをつかんでみた。




