第二十五話
「厄介って・・・・・」
死神さんは少し目を伏せてまたリストを見た。
長いまつげとけだるそうな二重まぶたで何を思ってるんだろう。
「この状態になってるときは」
死神さんが薄くなっている女の子のページを開けてあたしのほうに見せた。
あたしは真剣に聞く。
「体はまだ生きてるのに、魂だけが飛び出してる状態になってるんだよね、さまよっていると言えばいいのか―――まあとにかく、珍しいことだよ。めったにない。でもこのままじゃ、この子の魂は帰ってこれなくなる」
「!?・・・それって、まずいんじゃ・・・」
「だからもしかしたら埋葬前に刈ることになるかもしれない」
どくんと、心臓がはねた。
気持ち悪い感触だった。
埋葬前に刈る―――
もしかして、まだ生きてる人をあの世へ送るってこと?
ありえない。そんなのだめに決まってる。
まだそうだと分かったわけでもないのに、あたしの思考は嫌な方向をぐるぐるぐるぐるさまよいはじめた。
珍しく黙りこくったあたしを心配したのか、死神さんは説明を続けた。
「冗談だって。解決する方法はあるよ、少なくともあと3日は余裕があるし・・・」
え、冗談なの・・・?
希望が見えて、あたしは考えるのをやめてがばっと頭をあげた。
「よかった!!どんな!?」
死神さんはふっと口元をゆるめた。
その笑顔は反則だってーー!!!!
「真千子ちゃんってほんっとわかりやすいよね、見てておもしろいよ」
ちょ・・・。
うーん、死神さんから見たら、あたしなんかガキだろうな。
というか、人間をどう思ってるんだろ?
向こうは一応「神」だし・・・。
だいたいいつから生きてんだろ?
永遠にこの姿なのかな。せいぜい20前半くらいにしか見えない。
あーあ、片思いするのがあほらし。
拓馬とかにしといたほうが無難・・・って。また変な方に考えが走ってるよ!
やめようやめよう。
「死神さん・・・なに?こんな時間に・・・眠いんだけど」
夜中の三時ごろ、死神さんが訪ねてきた。
まだ真っ暗だ。
つい二時間前まで一緒にいたのに。
「眠いんだけど」といったが、本当は死神さんを見たとたん眠気はふっとんでいた。
照れ隠しから出てきた言葉だ。
ああ最悪。
変な寝相じゃなかったかな・・・
うつむいて寝てたのが幸いだった。寝顔とか見られたら生きていけない。
「ごめんごめん。急ごうと思って」
そうだ。幽体離脱した女の子を助けなきゃいけないんだった。
「それで・・・ほんとにこれがそうなの?つけたらその子が見えるってやつ・・・」
「そうそう」
どっからどう見ても、交通当番の保護者が付けるたすきだ。
あたし、何かを試されてるの?
「申請してもらってきたんだ。他の人間には見えないよ」
なんでちょっと得意げなの!?
いや見えないのはありがたいんだけど・・・。
まあいいか、変なゴーグルとかじゃなくって。
死神の世界ってどうなってんの?
あたしはそれを受け取った。
まだ頭がボーっとする。早く寝たい。
「それじゃよろしく」
死神さんは帰って行った。
ああ、やっと眠れる。
死神さんに早く帰ってほしいと思うのは初めてだな・・・。
そんなことを思いながら眠りについた。




