第二十三話
とてもいい天気の昼、その少女はいくつものチューブで繋がれた身体をベッドに横たえて、病院の白い天井を見つめていた。
「茉莉…っ、行かないで…嫌よ、うっ、お願いします…お願いだから助かってっ…」
母さん泣かないで。
父さんも、姉ちゃんも。
そう言いたいのに、よくわからない装置がかぶせられた口は動かせない。
心臓が動いている感覚はまだ分かるけど、ひどくゆっくりになってきている。
ゆっくりと小さい頃の出来事が頭の中で再生されていく。
そろそろ死ぬのかな。
だめだ、死ねない…!
あんなに母さん父さん姉ちゃんが泣いてるんだから…
茉莉が死んだらもっともっと悲しむ。
生きないと、生きないと、生きないとーーー
少女はそのとき、ふわっと浮き上がるのを感じた。
「うおおおっ!!自販機のあたりが出たらもう一本!ってやつ当たってんの初めて見たーーー!!すごいよ名塚」
「へへへ、じゃあ名塚様がミサキのためにプレゼントしてやろう」
どうせこんなんいつでも当たるしね。
だってあたし死神の助手ですからー。
そう言いたいけど、心の中でとめておく。
「おい拓馬!また当たりじゃねえかよ!ありえねーって、おごれや!!」
「ウッソ、あっちも当たってんの?どんな確率!?」
あたしと拓馬は気づかれない程度に目を合わせてニヤッとした。
拓馬も助手になってから親近感が増した。
お互いありえない秘密を共有している仲間だから。
そういえば、拓馬はもう地獄に送るの経験したのかな。
拓馬が助手になってから一ヶ月しかたってないから多分まだだろうけど…
「地獄?あー、そんなことも言ってたな」
「やっぱまだなんだ、めっっっちゃ怖いよー…黒い影がのしのしと…」
「マジで?うわー勘弁スわ、、。
てか地獄に送るとか、なんか…アレだな」
「う…ん」
「…まあでも、そんだけ悪いことしたんじゃね?チャイム鳴るぞ」
あら…
もしかして今の、フォローしてくれた?気にすんなよって?
うわぁ、やっぱこいついい奴だよ!
地獄送りとかできんのかな?
アルマがついてるから心配ないか。
なんで?
誰も返事してくれない。
茉莉がこんな近くで呼んでるのに。
見えてないの?
いつも診てくれてる先生が入ってきた。
やっぱり先生も茉莉なんていないみたいに通り過ぎる。
コンスイじょうたい…?
先生が何か言ってる。
茉莉、死んじゃったの?
もしかして茉莉幽霊になってる?
自分の手を見てみる。
透けてる…!
うそだぁ、茉莉は死んじゃだめなのに!
「茉莉、死なないで…」
え、まだ生きてる?
茉莉はこの間読んだ本を思い出した。
その本に出てくる女の子は事故にあって、体から魂が出ていっていろんなとこに行く話。最後には自分の体に戻って生き返るんだけど、、。
今、茉莉はそれといっしょ…。
もどらなきゃ。




