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第二十二話

朝、拓馬がいないかどうかそろりと教室を覗く。

ほっ。いない。

自分の席につく。

でも、いつ拓馬がくるだろうと思って気が気でなかった。

当たり前だけど、しばらくしてから拓馬が入ってきた。

一瞬で顔を背ける。胸がバクバクいっている。

そのまま目立たないように、近くのおしゃべりの輪に入った。

でも、最大の問題は掃除だな。

やだやだ、考えたくないよ…。



いくら一人の人間が時間よ進むなと思おうが、残酷に時計は4時10分、掃除の時間を指した。

のろのろそろそろと、階段へ向かう。

足が重い。

進みたくない~!

階段につくと拓馬がいた。

とっさに壁に張り付く。

ああ、先に来たらよかった。こっちのほうが気まずいじゃん。

「真千子いるだろ」

「なっ何!?」

あーー!バカだ!

聞こえないふりしろよ!

もう仕方ない。

あたしは腹をくくって拓馬の前に出て行った。

「何か?」

「金曜日…ごめん」

「う、うん」

めちゃくちゃ真面目に謝られて、さっきまでの気持ちの高ぶりはどこかに行ってしまった。

「で、、。実は…見せた方が早いな」

拓馬が左手をあたしの目の高さまで上げた。

「えっ…ってええええええええーーー!??何でーっ!?!?いや、ちょっ、どしたの!?!?」

「うっさ…んな大声出すなよ」

「出すわ!!なんで契約印あんの!?」

これは予想もしてなかった。

拓馬まで助手に?

そんなことって。

「学校から帰ってたら会ったんだよ…死神に」

「で、契約しないかって?」

「うん」

くらくらしてきた。

「いやー…、へぇー、まさかこんなことが起こるとは…。あ、どんな死神だった?」

「女の、赤いくるくる頭のだったよ」

げ。それってもしかして…

「ふぅーん、女の人の死神もいるんだ。なるほどねー。それでなんか眠そうなんだ。大変でしょ?部活あんのに」

「あー、眠い。でも助手めっちゃ楽だな!俺いらねんじゃね?って思う」

「儀式的に必要らしいよ」

言わないほうがいい。

お前と契約した死神に殺されかけたんだよ!なんて。

そんなこといったらどんな大変なことになるか知れない。

拓馬の心配性はじゅうぶんわかったので黙っておく。



帰り道、鼻歌を歌いながら歩いていると、後ろから声をかけられた。

「あの…」

「はい?」

誰だろ?と不審に思いながらも振り向いた。なんとあの女死神だった。

「ぎゃーーーーーーー!!!!!!」

「待って!逃げないで!この間はごめんなさいって言いにきたの!!」

あれ?

なんかこの間と感じが…違う?

考えてみれば、拓馬と契約したんだからもうあたしの命を狙うとかいうことはしないはずだ。

彼女が誰かを犠牲にしてまで助けようとした人はもうなくなってしまったんだから。

「アタシ、もう二度とあんなことしない。許してもらえないでしょうけど…逃げられて当たり前だと思ってるわ。でも、あなたのおかげで取り返しのつかないことをせずに済んだから」

あたしはいつのまにかうなずきながら聞いていた。

まだ少し怖かったけどまっすぐ目を見て。

きれいな瞳。

死神さんと同じように吸い込まれそうな魅力がある。

「おととい他の人間と契約したの。また若い子選んじゃったわ。若い子はまだまだ生きて長い付き合いになるから、死んじゃう時が辛いのに」

「あっ、その子あたしの友達ですよ!拓馬っていうやつでしょ?」

「そうそう!こんなとこで繋がってたのね。なんか感激だわ」

「あいつ真面目でいいやつだから良かったですね」

うっわ、なんで拓馬べた褒めしてんの?

まあ、確かにいいやつなんだけど。

「そうだ、あなたの名前は?アタシはアルマ」

「真千子です」

「真千子ちゃん、アタシ見るたびぎょっとしちゃうと思うけど、よろしくね」

その後手を振って別れた。

「びっくりしたぁ~。まさかあんな親しく話せるようになるとは夢にも…」

独り言がぼろぼろ漏れる。

嬉しいときのクセだ。

アルマさんか。

こないだは必死だったんだよね、きっと。

死神もあんだけ取り乱すんだ。




「死神さん、今日こないだの襲ってきた死神が謝りに来てくれたよ」

死神さんが驚いた顔をした。

「びっくりした?死神さんが驚くとか珍しいね!」

「アルマが?」

「知ってんの?」

「ああ…死神の学校、みたいなところで一緒だったんだ。彼女なら謝りに行くだろうなと思ってたよ。すぐ熱くなるけど我に返ると後悔するたちだから」

「へぇ、死神の学校かぁ!いいなあ面白そう」

「そう?」

死神って謎だ…。どっからきたのかも普段どこで何をしてるのかもわからない。

まだあたしは死神さんの一割も知ってないんだろう。

でも今はこの一割でじゅうぶん。

毎日会えるこれ以上の幸せはないから。


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