第十二話
教室に戻ろうか。でもとてもそんな気になれない。
拓馬のやつめ。
生気を吸い取られてるって…そんなわけない。
腹立つ!
勝手に死神さんのこと悪く言って。
めんどくさ。
拓馬さえいなければ平和だったのにー!
死神さんの顔をみると、穏やかな気持ちになれた。
「あの…もう歩かなくていいの。もう大丈夫だから」
「そう?ふーん、歩くのも結構楽しかったけどな」
死神さんが微笑みながら言う。その笑顔は反則だって!
てか、楽しかったって…!
あたしと歩いたのが!?
そんなこと言われたらほんとやばいってーー!!!
はっ、拓馬の馬鹿め。
生気吸い取られてるどころかもらってるっての!
仕事を終えて、家の近くで死神さんと別れた。
月が綺麗で、あたしはしばらく外で空を見上げていた。
もう秋の空気だなあ。
そのとき、少し遠くから人の声がした。
「おい、お前。なにしてんだよ」
うわ、ケンカ?
こんな時間にこんな住宅街で?
怖かったけれど、好奇心からついついそのまま聞いてみた。
「あいつに何の用があっていつも連れ回してんだ!」
は!?
この声、拓馬のだ!
もしかして死神さんと…!?
「彼女には手伝ってもらってるだけだよ」
「お前の仕事をか?利用してるだけじゃねえか!」
あたしのこと話してる?
「まあそう、だね…利用してる」
体が大きく脈打った気がした。
今、なんて…?
利用してる……。
ぐらりとふらついた。
放心しながら体を支える。
…かえろう。ここにいちゃだめ…。
何で?
何でそんなこと言うの?
今まで騙されてたの?
いやだ、そんなのやだ。
そんなのってないよーーーー。




