第十一話
眠たい…。
拓馬に見つからないよう、歩いて仕事をするようになってから二週間。
今まで30分程度で終わっていた毎日の仕事は、2時間以上かかる。
家に着くと午前2時半ごろ。
両親にばれないよう、11時ごろから部屋の扉を閉めて寝たことにしている。おやすみと言ってしまえばこっちのもの。
実際は宿題などしている。
学校から帰ってから2時間くらい仮眠をとっている。
それでも眠たい。一気に寝ずに分散して寝ているから寝た気がしない。
気が付くと三時間目が終わっていた。
次は体育か…しんどっ。
重いまぶたをなんとか開いてのろのろと着替える。ミサキに心配されたが元気だと答えておいた。
体育はバスケの試合だった。
走る力が出ない。
「名塚っ!」
パスが飛んできた。
あれ、なんかゆっくりなボールだな………
………。
足音が聞こえる。休み時間の廊下の騒々しい何人もの足音。
ん?ここ、、。
白い?天井……
目を開けるとそこは体育館ではなく保健室だった。
がばっと起きる。ベッドの上だった。
パスが飛んできて、それから思いっきり首に当たったのは覚えている。
この状況からしてそのままぶっ倒れたのか?
ベッドを降りて保険の先生のところへ行った。
「あのー」
「あら起きたんだ。どこも変なとこない?まるまる一時間寝てたんですよ」
「ええー、全然記憶がない…」
はあ、やっぱ寝不足かな。
人間寝ないとダメだな~。
保健室を出ると、廊下の壁に拓馬がもたれて立っていた。
一瞬ビクッとなる。
何のつもりだろ…。
嫌な予感しかしない。
拓馬はあたしに気付くと、こっちに向き直って真剣な目で話しはじめた。
五時間目開始のチャイムが鳴る。
あたしたち以外に廊下には誰もいない。
静けさの中に自分の鼓動だけがはっきりと聞こえる。
「お前、毎晩一緒にいるあの男誰なんだよ」
「!」
やばい。歩いて移動してたのに、見られてたのか。
ここまでばれると、しらばっくれるのはもう効かないかもしれない。
「俺、あいつ見覚えがある。あいつ……」
拓馬はそこで言葉を切った。
あたしは混乱した。見覚えがあるって?
拓馬も死神さんにあったことがあるの?
「死神、だろ」
「…っなんで、知ってるのよ!」
馬鹿だ。
認めてしまった。もう開き直ってしまっているのだろう。
「俺のばあちゃんがあいつと会ってたから」
「えっ?ば、ばあちゃん??」
拓馬がこくりとうなずく。
「こないだ死んだんだけど。俺は何回か、ばあちゃんがあいつとといるのを見たことがある」
どういうことだ。
こんなところで、死神さんが繋がっている?
しばらく考えを巡らせた。
拓馬のおばあちゃんが前の死神助手だったり?
あたしが初めて死神さんと会ったとき、あのときから死神さんは鎌を持ってローブをまとっていた。死神の仕事はしていたはずだ。恐らくだいぶ長い間。
その間だって助手はいなくちゃならない。
なら、拓馬のおばあちゃんが死神助手だったこともありえる。
「ばれたかぁ。うん、あの人は死神」
はあ。
まさか拓馬にバレるとは。
「やっぱそうか。まあ、それはもうわかってたんだ。聞きたいのは、あいつに生気吸い取られてるんじゃないかってことだ」
「は?そんなの…ないよ!何言ってんの?」
笑混じりに答えるけど、拓馬は真剣だ。こっちもそれにおされて黙った。
「だってお前何で倒れたんだよ、あんな夜中に出歩いてるからじゃねーの?あいつのせいだろ」
「それは…」
確かにここ最近夜中の仕事でろくに眠れてなかった。
でも、それは。
「…あたしが、自分で選んだの!やらされてるんじゃない。好きでやってるんだから口出さないで!」
思いがけず大きな声が出た。一気に叫んで息切れがする。
そのままの勢いであたしはその場から駆け出した。
拓馬はびっくりして突っ立っている。
走って走って中庭まで来てようやく立ち止まった。
うわ、何やってるんだろ。
気まずい…。
拓馬のおばあちゃんが死神さんと知り合いなんて。
信じられない。
これから波乱の予感…。
もう、疲れるなあ。拓馬のせいだよ…




