第四十八話:愚王子の暴走【終】
「何故、僕が処刑されないといけないんだ!僕はただ成金貴族のはびこるこの国を救いたかっただけなのに!」
それがグドン・ガルグマクの最期の言葉であった。カシューナイツ伯爵夫妻の行った視野の狭い教育によって謀反人グドン・ガルグマクが出来上がった事がガルグマク王国最大の悲劇であり、当時の国王グレゴリー・ガルグマクは涙を呑んで我が子を処刑せざるを得なかった。このような悲劇が二度と起きないように王族・貴族の教育は厳正な審査の下で教育係が選ばれる事となり、更に王族・貴族の子息たちに謀反人グドン・ガルグマクの悪評を教え、このような人物にならないよう教育に務めた。こうして謀反人グドン・ガルグマクはガルグマク王国の歴史において後世までに伝えるのであった
「アルクエイド・ロザリオ侯爵、右の者、国を救った功績により最高位勲章を賜る!」
「ははっ!謹んで承ります!」
アルクエイドはグドン及びカシューナイツ伯爵家の謀反を未然に防いだ功績により最高位勲章を賜る事になった
「(棚から牡丹餅ならぬケーキを貰った感じだけど、まぁいいか。)」
アルクエイドは最高位勲章を賜った後、馬車に乗り意気揚々と屋敷へ戻るとそこにはいつもようにお祝いの品々の列が並んでいた。ジュードたちがアルクエイドの乗った馬車を見かけると整列し主の帰還を出迎えた
「「「「「お帰りなさいませ。」」」」」
「ああ・・・・もう聞きつけたのか。」
「はい、旦那様が謀反を未然に防いだ事で最高位勲章を賜った事、このジュード、生涯の誉れにございます。」
「棚からケーキを落ちて来た心地だけどな。」
「何はともあれ旦那様が国を救った事には変わりありません。」
「・・・・そうか。」
「旦那様、改めておめでとうございます。」
「「「「「おめでとうございます。」」」」」
「・・・・ありがとう。」
アルクエイドは屋敷へ戻ってから次の日にゴルテア侯爵一家が訪れた。訪れた理由は最高位勲章を賜った事へのお祝いである
「ロザリオ侯爵殿、最高位勲章の授与、おめでとうございます。」
「「「おめでとうございます。」」」
「ありがとうございます。」
ゴルテア侯爵一家からお祝いの言葉を述べられた後、此度の謀反を未然に防いだ経緯についてアシュリーが質問した
「閣下、どうやって謀反を未然に防いだのですか?」
「ああ、何と言うか偶然そうなってしまった形になったのです、言うなれば棚からケーキのようなものですね。」
アルクエイドは北の牢獄の設立の経緯を国王から聞き、老朽化等について国王に進言した事で此度の謀反計画が発覚したという。それを聞いたゴルテア侯爵一家は目が点になったが我に返り感想を述べ始めた
「いやあ、事実は小説よりも奇なりと申すが、まさかそんな事が起こるとは・・・・」
「本当ですわね、それにしてもカシューナイツ伯爵家も何故、その事を陛下に進言なされなかったのかしら?」
「母上、元守役、元乳母の立場から裏切れなかったんじゃないですかね。まあ、結果的に一緒に処刑されましたけど。」
「何はともあれ、閣下が謀反を防いだ事には変わりないのですからいいではありませんか。」
「ははは。」
ゴルテア侯爵一家が去ってから次の日に訪れたのはウルスラ&ナビエ・モンテネグロ侯爵夫妻である
「ロザリオ侯爵閣下、最高位勲章の授与、おめでとうございます。」
「おめでとうございます、ロザリオ侯爵閣下。」
2人はお祝いの言葉を述べた後、アルクエイドは「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう」と気軽に話し掛けた
「ははは、アルクエイド殿は相変わらずだな。どんなに功績を上げても驕らないところは変わらない。」
「そこがロザリオ侯爵閣下の良いところではありませんか。」
「それもそうだな。」
「そういうウルスラ殿も侯爵に昇進してもなお、お変わりもなく他のお歴々と接しておられるではありませんか?」
「あ、ははは、いやあ、これは1本取られましたな。」
アルクエイドから図星を突かれたのか、照れ臭そうにかきはじめた。隣で聞いていたナビエも「あらあら」と微笑んだ。アルクエイドにとっては伯爵令息の頃からの付き合いなので変わらずに接してくれる2人には安心したのであった。2人が屋敷へ戻って次に雷峰塔したのはリディガー・ヴィンハルト侯爵である
「最高位勲章授与、おめでとうございます。」
「ありがとうございます(この人、わざわざお祝い述べるって律儀なんだよねえ。顔はポーカーフェイスだけど。)」
「ではこれにて。」
「もうお帰りで(え、早くない!)」
「はい、仕事があるので。」
「そうですか(やっぱりこの人、何考えてんだか分からないわ。)」
疾風の如く去ったリディガーが去った次の日にマルクス・レイナード侯爵&マリック・レイナード侯爵令息が来訪した
「最高位勲章授与、まことにおめで・・・・」
「おめでとうございます!流石は私の師匠!」
「喧しいわ!」
「あべし!!」
マルクスがお祝いの言葉を遮るようにマリックがお祝いと勝手に師匠発言された。遮られたマルクスはマリックに拳骨をお見舞いし気絶させた
「愚息が申し訳ない。」
「あ、いいえ(まだ諦めてなかったのか)」
「連れてくんじゃなかった。」
「・・・・何か問題でも?」
「ああ、マリックが一緒に行くって聞かなかったものだからな。大人しくしていろと命じたにも関わらずこれだ・・・・はあ~。」
気絶しているマリックを苦々しく見るマルクスにアルクエイドは些か同情しつつも「連れてくんじゃないよ」と心の中で突っ込んだ
「それにしても貴殿は相も変わらず鋭いところをついてくるな。まさか北の牢獄の不備に気付くとは。」
「いやあ、ただの偶然なのですけれどね、まさか本当にそうなるとは思いませんでした。」
「確かに北の牢獄に脱獄できるほどの綻びがあるとは予想もしなかった。此度、貴殿が予見した事で謀反は未然に防がれた。結果としては国があのグドンに奪われる事がなかった。」
「そうですね。」
「・・・・さて我等はこれにて失礼する。愚息が本当に申し訳ない事をした。」
「いいえ。」
マルクスは気絶しているマリックの襟首をつかみ、引きずるように去っていった。その哀愁漂う後ろ姿を見たアルクエイドは黙って見送った。レイナード侯爵一行が去った次の日に宰相のレスター・アルグレン侯爵と財務大臣のヘルゼン・ゴルティエ、そして内務大臣を務めるラオン・フレグランス【年齢48歳、身長183㎝、色白の肌、緑色の短髪、碧眼、彫りの深い精悍な顔立ち、フレグレンス侯爵家当主】伯爵が訪れた。ホルス・フォード侯爵はというと他国にいて、挨拶は今度との事である
「御三方揃って御来訪とは畏れ入ります。」
「いや、貴殿はサルマン王国討伐に続き、謀反人か、国を救った英雄だ。挨拶にしないわけにはいかない。」
「畏れ入ります、宰相閣下。」
「おめでとうございます、ロザリオ侯爵殿。」
「ロザリオ侯爵閣下、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、それにしてもゴルティエ侯爵閣下、フレグレンス侯爵閣下同時に揃ってとは・・・・やはり北の牢獄にございますか?」
御祝いの言葉を述べつつも心ここにあらずのヘルゼンとラオンに北の牢獄が原因なのか尋ねると案の定、当たっており、ヘルゼンが説明をした
「その事についてだがやはり破却すべきだと私は思う。北の牢獄はあちらこちら老朽化が進み、とてもじゃないが機能しているとは思えぬ有り様だ。」
「それで陛下は何と?」
「うむ、陛下も此度の事が余程答えたのか、北の牢獄は破却する事に賛成したが・・・・」
「何か問題でも?」
するとラオンが苦々しい表情で口を開いた
「先王陛下にお仕えしたのお歴々が北の牢獄は先人の知恵が結集して作られた遺品であり、簡単に破却すべきではないと抵抗しているのです。」
「あぁ~。」
国王グレゴリーの父である先王陛下に仕え、隠居したお歴々は北の牢獄は国王の高祖父の代から作られた遺品を破却すべきではないと主張しているのだという。御三方はそのような方々をどう説得するか悩んでいるのだという。アルクエイドは前世の記憶を思い出し、ある事を思い付いた
「なれば北の牢獄に関する博物館にすれば宜しいのでは?」
「「「はっ?」」」
「説明致します。」
アルクエイドは北の牢獄を歴史博物館として残し入場料や維持費等で建物を残し、かつ北の牢獄設立の歴史を後世に伝えるという事を説明した
「歴史博物館とは・・・・」
「えぇ、後世に伝える良い機会だと私は思います。」
「うむ。」
「歴史博物館ともなれば説得できますな。」
「博物館ともなれば北の牢獄はそのまま残り、新たに作る必要がありませんからな。」
ヘルゼンとラオンは前向きに検討する形で賛成に回った
「宰相閣下、如何でしょう?」
「うむ、そうすれば陛下も満足されよう。あの御方も内心、破却する事に迷っておられたからな。」
「ではそう致しましょう。」
その後、北の牢獄は歴史博物館として残る事に国王グレゴリーや破却に反対したお歴々も賛成に回った。北の牢獄を歴史博物館にするよう進言したアルクエイドの名声は轟いたのは言うまでもなかった
「旦那様、北の牢獄を博物館にするとは。このジュード、旦那様の御卓見に唯々、感服仕りました。」
「褒めるほどではない(網○刑務所を観光して良かったわ。)」
アルクエイドは前世の記憶に感謝しつつ、名声が高まった事に満足するのであった




