第四十七話:愚王子の暴走【3】
ここは王宮のテラス、アルクエイドは国王一家【国王グレゴリー、王妃レティーシア、王太子グラン、王太子の婚約者レミリア】と共に御茶会に参加していた
「陛下、此度は第2王子殿下の事、まことに残念に存じます。」
「よい、あれは自分から撒いた種だ。」
「そうですわね、カシューナイツ伯爵夫妻に任せたのが失敗だったわ。」
「母上、今更悔いても仕方がありませぬよ。」
「私もグラン様と同じ意見にございます。」
「(国王一行もアレに苦労したんだな。)」
「まあ、今のあやつは北の牢獄に幽閉しておる、いずれは辺境の地に送る予定だ。」
国王グレゴリーの決断にアルクエイドは反論はしなかった。成金貴族が大嫌いなグドンを助けたところで得がないどころか大損するのが目に見えていた。まぁ、このままいなくなってくれればこちらとしても大助かりなのが本音である
「(ん、そういえば。)」
ふとアルクエイド頭に過ったのは北の牢獄である。北の牢獄は100年以上前から存在しており、ちゃんと補修されているのか気になったアルクエイドは国王グレゴリーに尋ねる事にした
「畏れながら陛下。」
「ん、如何した?」
「ははっ、北の牢獄はいつ頃、作られた物にございましょうか?」
「ん、北の牢獄は余の高祖父の代から作られた牢獄だと聞いておるが、それがどうした?」
「ははっ、畏れながら申し上げます。北の牢獄はかれこれ100年以上の歳月が経っております。なれば牢獄自体の老朽化し、ところどころ綻びが生じている可能性もございます。」
「先程から何が言いたいのだ、はっきりと申せ。」
アルクエイドの説明に王太子グランが尋ねた。するとアルクエイドは「人1人入れる穴があるはず」と答えた
「何?」
それに真っ先に反応したのは他ならぬ国王グレゴリーである。グレゴリーの表情は誰の目から見ても険しく、物々しい雰囲気に包まれており緊張感が漂っていた
「アルクエイド、つまりグドンが脱獄するといいたいのか?」
「その可能性もなきにしもあらず。」
アルクエイドがそう告げると国王グレゴリーは側近に対してこう命じた
「直ちに北の牢獄全ての箇所を調べろ。勿論、グドンが幽閉されている箇所もだ。騎士隊も共に連れていけ。」
「ははっ!」
側近が去った後、物々しい雰囲気のまま国王は「知らせが来るまで茶会を続けようか」と答えた。アルクエイドは「(御茶会の最中に言わなきゃよかった)」と若干、後悔しつつもアルクエイドの持つ天性の勘は今日も冴えわたるのであった
「殿下、中を改めさせて頂きます。」
「な、何だ!いきなり!」
北の牢獄に幽閉されていたグドンは突然、現れた騎士隊に背筋がぞくっとした。まさか謀反を画策した事が露見したのではと警戒していると騎士隊長が「中を改めさせて頂きます」と通告してきた。グドンは内心、マズイと思った。脱出用の穴はそのままにしていたのでそこを調べられた終わりだと思ったのか抵抗を示した
「わ、私は第2王子だぞ、そのような勝手な事を!」
「陛下の命にございますれば、御免。」
そういうと騎士たちはドドッと中へ入って来た。グドンはすぐに騎士たちに取り押さえられ、中をくまなく調べられた
「おい、穴があったぞ!」
一人の騎士が脱出用の穴を見つけると騎士隊長はグドンを尋ねた
「殿下、この穴は何ですか?」
「し、知らぬ!初めて見たわ!」
グドンは必死で「知らない」の一点張りだったが騎士隊長は「地下の牢獄に身柄を移す」と抵抗するグドンをそのまま移送していった。すぐさま騎士隊長はこの事を国王に報告するよう命じたのである
「報告は以上にございます。」
「そうか。」
「如何致しますか?」
「グドンを取り調べを行う、自白薬の使用も許可する。」
「ははっ!」
騎士たちの報告を聞いた国王一行とアルクエイドは一斉に沈黙した
「ふっ、グドンはとことん愚か者だ。」
「陛下。」
「レティーシア、グラン。」
「「・・・・はい。」」
「グドンという者は最初から存在しなかった。お前たちには息子も弟も存在しなかった、良いな。」
「「はい。」」
「レミリア嬢、ロザリオ侯爵、良いな。」
「「はい(仰せのままに。)」」
一方、地下の牢獄に移送されたグドンはというと拘束具を付けられた
「離せ、これでは罪人ではないか!」
拘束具をつけても喚き散らすグドンを無視して医師が自白薬入りの注射を用意した。それを見たグドンは「それは自白薬か」と問い質した
「これより取り調べを行う。」
取調官がそう宣言すると医師がグドンに近付いていく。グドンは「来るな」と必死で抵抗したが騎士たちによって取り抑えられ、左腕に注射を刺し自白薬を混入を開始した
「あぁ。」
射たれたグドンは徐々に恍惚に浸り、目が虚ろになり意識が朦朧とした状態になった。それから時が経ち、取調官から簡単な受け答えに素直に話せるようになり、取り調べが開始した
「あの穴は?」
「ぼ、僕が、つくっ、た。」
「その穴で使って脱獄したのか?」
「あ、ああ。」
「脱獄後はどこに行っていた?」
「か、しゅ、ナイツ、は、くしゃくけ。」
カシューナイツ伯爵家は守役ビリーと乳母キャリーの家であり、グドンは何度も尋ねていた事を知っていた面々は更に問い詰めた
「何をしに尋ねた?」
「か、かくまっ、て、もらう、ため。」
「カシューナイツ伯爵とどのような話をした?」
「む、ほ、ん。」
グドンの口から謀反という言葉に取調官と医師と騎士たちは驚愕し、取調官はグドンを問い詰めた
「カシューナイツ伯爵と謀反の談合をしていたのか?」
「そ、うだ、ぼく、がもち、かけた。ビターも、さん、どう、した。」
「おい、すぐに陛下にこの事を知らせるのだ。」
「ははっ!」
騎士は直ちに国王の下へ知らせに行った後も取り調べは執り行われたのである
「以上にございます。」
「そうか・・・・謀反か。」
報告を受けた国王一行とアルクエイドは重苦しい雰囲気の中でグドンとカシューナイツ伯爵家の謀反を聞いたのである。国王は「はあ~」と溜め息をついた後、「カシューナイツ伯爵等を捕らえろ」と命じた後、この場にいる者たちに宣言した
「皆の者、グドン・ガルグマク及びカシューナイツ伯爵家を謀反の咎で処刑致す。二心を抱く者たちの戒めとして衆人環視の下で絞首刑だ。」
「「「「はい(ははっ)」」」」
その後、ビター&キャリー・カシューナイツ伯爵夫妻は騎士団によって身柄を抑えられた
「これはなんの真似だ!」
「グドン・ガルグマクと共謀し謀反を画策した罪で捕らえる。」
「そ、そんな、イヤアアアアア!」
ビターとキャリーは騎士団による厳しい取り調べであっさりと謀反の談合を自白したが、あくまでグドンを追い返すための方便だと自供したが、国王の意志は変わらずグドンと共に絞首刑に処される事となったのである
「(何故、僕が処刑されるんだ!)」
謀反を画策したが、両親や兄の命までは取らず穏便に済ませるつもりだったのにまさか騎士隊が駆け込んで来た事で露見してしまうとは思ってもいなかった。ビターやキャリーもこんな事だったらもっと早く伝えるべきだったと後悔したが時既に遅く、衆人環視の中で絞首刑に処されるのである
「早く始めろ!」
「王族の処刑なんて初めてだな!」
「まぁ、何とみっともない。」
「あのバカ王子はいつかやるとは思ってはいたわ。」
「それに乗る伯爵も夫人も愚か者よ。」
「王族、貴族の恥さらしが!」
貴族・平民問わず処刑される3人に対して悪口雑言を浴びせた。3人は今にもこの場から逃げ出したい気分であったが執行官によって首に縄を括り付けられた
「これより死刑を開始する!」
「「「「「オオオオオオオ!」」」」」
3人はどこで間違えたと後悔しつつ形は執行され、そのまま謀反人の烙印を押されながらこの世を去るのであった




